「成功」と言える結果が出せなかった今シーズン
試合は神戸が最大12点ビハインドから追いつき、オーバータイムまでもつれ込む熱戦だった。ただ、最終的には神戸が89-95で敗れ、2024−25シーズンの最終戦を飾れなかった。
神戸にとって、2024−25シーズンは決して「成功」と言える結果ではなかった。アリーナや観客数、売上といった条件を満たしたこのクラブは、既に2026年秋にスタートする日本バスケの最上位カテゴリー「B.LEAGUE PREMIER」への参入が認められている。

神戸ストークスの道原紀晃-(C)KOBE STORKS提供
しかし、25勝35敗は西地区の8チーム中7位(全体16チーム中10)で、2月にはプレドラッグ・クルニッチヘッドコーチ(HC)が退任。東頭俊典氏がアシスタントコーチから昇格し、立て直しを図った。彼の指揮下に限れば13勝6敗と巻き返しは見せた。
彼はこう口にする。
「僕は2カ月しか教えていないですけど、毎週めちゃめちゃ(プレーのパターン、決めごとを)変えているんです。選手は戦術の理解度がすごく高かったし、本当にやろうとして、ついてきてくれました。今日も後半に変えて、流れは良くなったんですけど、そこをやらせ切れなかったのは、自分のミスです」。
「若い選手が多い中で、そういうことを平気でやってきたっていうのが、自分の今回の勝因であり、敗因です。こういう競った局面の軸になるところを、僕は19試合で作りきれなかった。いろいろ変えていたので。ちょっと混乱も出てしまった。選手は本当に悪くないし、自分の力不足だと思っています」

神戸ストークスの東頭俊典HC-(C)KOBE STORKS提供
東頭HCに新アリーナについて尋ねると、言いたいことが沢山ありそうな様子だった。
「ここは指定管理とかなく、ウチ(神戸ストークス)の関係会社が持っています。しかも三宮で、メリケンパークの目の前みたいなロケーションは他のアリーナにはないですよね。経営権、ロケーション、周辺人口とすべて考えたとき、リアルに、ここが日本で一番のバスケットのアリーナになると思っています」。
プレミア感の漂う舞台に相応しいチームを目指す
一方でコート内がまだ「箱」に追いついていないことも間違いない。さらに彼らは日本一を目標に掲げている。
「ここのところ、右肩下がりで成績が下がっています。”道原紀晃”とか、”谷直樹”も年齢がかなりかさんできている。若手は入れているものの、真ん中が薄い状況です。これから『本当にこのチームを日本一にしていくか』という部分は編成、チームスタッフ、残っている選手たちで、本当に本気で向かっていかなきゃいけません」

神戸ストークスの道原紀晃-(C)KOBE STORKS提供
チーム作りについては、確かに未知数な部分がある。来季の体制、HCがどうなるかも、まだ発表されていない。それでも、このアリーナはお客を呼べる。20日・21日の連戦も合計で1万8千人を超す観客が集まっていた。
何より雰囲気が素晴らしい。ワールドカップで経験した”沖縄アリーナ”の熱気は唯一無二だったし、船橋の”LaLa arena TOKYO-BAY”や、長崎の”HAPPINESS ARENA”も間違いなくいい。しかし、ジーライオンアリーナは箱の「サイズ」が沖縄や船橋、長崎より大きく、他のどこにもない「大人の色気」みたいなものを感じた。
紳士淑女の社交場として、エンターテインメントをゆったり楽しむ場として、本当の意味で「プレミア」と言い得る空気感がある。それは今までプロ野球、Jリーグも含めて味わったことのないものだった。

観客で沸くジーライオンアリーナ-(C)KOBE STORKS提供

主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。