世界のプロ野球リーグ人気は右肩上がり
2024年、世界のプロ野球リーグは軒並みの観客動員数記録を更新した。1試合当たりの平均観客数で見ると、MLB(米大リーグ)が29,114人であるのに対し、NPB(日本プロ野球)が31,097人、KBO(韓国プロ野球)が17,303人、CPBL(台湾プロ野球)が7,684人。しかし、この数字だけで単純に人気の序列を付けてはならない。

JDリーグ・伊予銀行ヴェールズの石村監督らも韓国プロ野球を視察₋Journal-ONE撮影
各国の人口を観客動員数で割れば、アメリカでは4.77人、日本では4.67人、韓国では4.75人、台湾では8.47人に一人がプロ野球観戦をした計算となる。この数値から、米日韓におけるプロ野球に対する国民の熱量は“ほぼ同じ”であると言っても良いのではないだろうか。
来たる2026年秋、愛知県名古屋市を中心に開催されるアジアの大スポーツイベント“第20回アジア競技大会(以下、2026/愛知・名古屋)”を盛り上げるべく、“女子ソフトボール韓国代表チームと“JD.LEAGUE(以下、JDリーグ)“伊予銀行ヴェールズ”の強化試合を取材するため訪韓していたJournal-ONE。

鎭川NTCでの韓国代表と伊予銀行ヴェールズの強化合宿-Journal-ONE撮影
「この機会に、韓国のソフトボールはもちろん韓国の野球事情についても広く知って欲しい」と、日本に最も近いプロ野球リーグであるKBOを観戦取材。韓国の野球ファンがどのようにしてプロ野球観戦を楽しんでいるかを体感してみることにした。
ソウル市内の人気球場・蚕室野球場へ
韓国のトップアスリート養成所“鎮川ナショナルトレーニングセンター”での取材を終えたJournal-ONE編集部は、ソウル市内に戻り、唯一開催されていたKBO公式戦のチケットを何とか手に入れ、ソウル中心地にある蚕室野球場(チャムシルヤグジャン[잠실야구장]、Jamsil Baseball Stadium)へと向かった。

ソウル中心地になる蚕室野球場-Journal-ONE撮影
地下鉄2号線と9号線が交わる総合運動場駅(チョンハブンドンジャン[종합운동장]、Sports Complex)の5番出口から地上に出ると、目の前に野球場が姿を現わす。タクシーで行く場合は、1988年にソウルで開催されたオリンピックを記念してつくられた巨大な公園、オリンピックパークからオリンピック路を西へ。ロッテタワーを越え、オリンピック路を進むと右側にバックスクリーンと照明塔が見えてくる。
1982年に開場した蚕室野球場の外観は、40年以上の時を経た歴史を感じる趣だ。1988年のソウルオリンピックでは、後にMLB・ロサンゼルスドジャースで一世を風靡した野茂英雄さん(当時、新日本製鐵堺)や、NPB・東京ヤクルトスワローズで選手兼監督を務めた古田敦也さん(当時、トヨタ自動車)など、後にNPBで活躍することになる有望な大学生・社会人で編成された野球日本代表がプレーした。決勝でMLB予備軍のアメリカ代表に敗れたものの、銀メダルに輝いた日本野球界にとっても馴染み深い野球場として記憶している野球ファンも多いだろう。
蚕室野球場の座席数は23,750席と日本の野球場と比べるとコンパクトな印象だが、KBO(韓国プロ野球)のスタジアムとしては、大邱サムスンライオンズパーク(最大29,000席)に次ぐ座席数を誇る。コンパクトな座席数とは異なり、フィールドは両翼100m、中堅125mとなかなかの広さ。内野に目を向けると、ダイヤモンドの内側には芝生が敷かれたMLB(米大リーグ)スタイルを採用している。

MLBのように内野に芝生がある蚕室野球場-Journal-ONE撮影
斗山ベアーズのメモリアルゲームを観戦
この蚕室野球場を本拠地にしているのが、韓国プロ野球発足時の1982年から存在する名門チーム“斗山ベアーズ(Doosan Bears)”と、“LGツインズ(LG Twins)”だ。オールスターゲームを7月11日、12日に控えた前半戦終盤の7月6日、その時点で2位(10チーム中)につけるLGツインズに対し、斗山ベアーズは9位と厳しい2025シーズンとなっている。
