
蚕室野球場を本拠地とするLGツインズは強豪チームだ‐Journal-ONE撮影
リーグ下位の斗山ベアーズが、同じく決して好調とは言えない6位の“KT ウィズ(kt wiz)”を迎えたこの試合のチケットは早々に売り切れ。チーム成績にかかわらず超満員の23,750人を集める、首都・ソウルを本拠地にするチームの人気ぶりに感心するとともに、偶然にも重なったメモリアルゲームの演出にも舌を巻いた。

斗山ベアーズの天才遊撃手キム・ジェホ選手の引退ゲーム-Journal-ONE撮影
メモリアルゲームの主人公は、昨シーズン限りでユニフォームを脱いだ斗山ベアーズの天才遊撃手キム・ジェホ(Kim Jae-ho #52)選手。シーズン途中にもかかわらず引退試合に臨んだキム・ジェホ選手を、この日のために特別に選手登録して6番ショートでスタメン出場。初回の守備で2死まで1軍の公式戦に出場したキム・ジェホ選手は、万雷の拍手を浴びでベンチに下がると、5回終了時には試合を中断した盛大なセレモニーで再びグラウンドに姿を現して多くの歓声を浴びていた。
2004年の入団から斗山ベアーズ一筋でチームに貢献し続けた名選手に対し、最大の敬意を表する試合を企画したKOBと斗山ベアーズ、敵味方関係なくキム・ジェホ選手の功績を称える韓国の野球ファンの姿から、日米とは異なる「野球熱」が伝わってくる。
韓国独特の応援風景に目を見張る
引退試合の演出に加え、Journal-ONE編集部が目を見張ったのは観客の応援風景だ。NPBの応援も、“鳴り物”といわれるトランペットの応援歌演奏に合わせて一糸乱れぬ声援を送る光景が海外から注目されているが、韓国の応援風景も勝るとも劣らない盛り上がりを見せていた。

応援団のマイクパフォーマンスに合わせ声援を送る韓国プロ野球ファン-Journal-ONE撮影
観客席の一角に設置されたステージの上に立つのが、マイクパフォーマンスを行う応援団のリーダーと、掛け声に合わせて様々なパフォーマンスで観客をあおる10人ほどのチアリーダーたちだ。鳴り物を使わず、掛け声と歌で繰り広げられる応援はNPBでも“千葉ロッテマリーンズ”がその先駆けとして知られている。その千葉ロッテマリーンズを越えるパフォーマンスを見せる観客たちは、初回から試合終了まで総立ちで絶え間なく続いていく。応援団のいる様子は、日本でいえば都市対抗野球大会などで盛り上がる社会人野球に似ているが、パフォーマンスの種類や観客の盛り上がり方は、野外ライブやフェスに似ている。
両チームの絶え間ない応援の声でかき消されてしまうからなのか、MLBやNPBのように観客にクラップを促す映像や、登場曲など音楽のパフォーマンスが一切ない。さらには、打席に向かう選手や交代した選手を紹介する場内アナウンスもないため、試合進行は逐一スコアボードで確認する必要がある。ただし、スコアボードの文字は全てハングルなので、日本語の選手名鑑を持ち込むかスマートフォンですぐに表示できるようにしておくと良いだろう。

スコアボードにはハングル文字が並ぶ-Journal-ONE撮影
満員の蚕室野球場に響き渡る斗山ベアーズを応援する掛け声や歌を聞く限り、ベアーズファンはおおよそ9割に及ぶと思われた。しかし、KT ウィズ攻撃時であっても応援する声は収まらない。なぜならば、ベアーズユニフォームに身をまとったファンでさえも相手応援に合わせて声を上げ続けているからだった。
韓国の野球観戦は、ひいきのチームはあっても「ボールゲームというパフォーマンスを単純に楽しむ」ことに重きを置いているのかもしれない。勝敗とは別の野球を楽しんでいる韓国の野球ファンに、スポーツを見る新たな楽しみを教わったと言えよう。

蚕室野球場全体から常に応援歌を歌う声が湧く-Journal-ONE撮影
野球場グルメを味わおう
野球観戦に欠かせないのは、何といっても“野球場グルメ”。その国、その土地ならではの食文化が、野球観戦の楽しみの一つだ。
