セミファイナルを劇的勝利、B2昇格を決める
“Bリーグ”は2026-27シーズンに再編され、最高位の“Bプレミア”に振り分けられるクラブも既に発表されている。それに伴い、2024-25シーズンはB2・B3リーグの各クラブが戦績によって上位カテゴリーに昇格できる最後のチャンスだった。
“B3”では“横浜エクセレンス(以下、横浜EX)”がレギュラーシーズン1位となり、全て2戦先勝方式のプレーオフに進出。クォーターファイナルは苦しみながらも“山口パッツファイブ”を破り、B2昇格がかかったセミファイナルは“岩手ビッグブルズ”に対して第1戦を落としたものの、第2戦を取り返してタイに持ち込み、第3戦は残り0.1秒のトレイ・ボイドIIIの逆転3ポイントで劇的勝利を収め、見事に昇格を果たした。

逆転3ポイントを決めたトレイ・ボイドIII-吉川哲彦撮影
アリーナ問題で2度のB3降格
そもそも横浜EXは、2016年のBリーグ誕生時は東京エクセレンスの名称でB2に所属していた。当時、ホームアリーナとしていた東京・板橋区の小豆沢体育館は3,000人というB2基準の収容人員を満たしておらず、板橋区内に新アリーナ建設の構想があったことからB2参戦を認められていた。
しかし、構想が白紙に戻ったことでB2ライセンスが交付されず、1シーズンでB3降格の憂き目に遭ってしまったのだ。その後、B3での2シーズン目にリーグ1位となり、東京23区内の新アリーナ計画も持ち上がったため、そのアリーナを使用するという条件でライセンスを再取得してB2復帰を果たしたが、この計画も見直しとなり、ライセンス失効で再度B3に降格していた。
2度もB3降格の無念を味わったことを受け、クラブは神奈川・横浜市への移転を決断。“横浜BUNTAI(旧・横浜文化体育館)”に隣接する形で一足早く建設された“横浜武道館”をホームアリーナとし、新たなスタートを切ったのが2021-22シーズンのことだった。
アリーナ問題を解消したことで、その後はB2ライセンスの交付を受け続けてきたが、今度は肝心の戦績が伴わず、B2再復帰はお預けとなっていた。今回の昇格は、横浜移転4シーズン目でたどり着いた悲願だったのである。

横浜移転4年目での悲願達成-吉川哲彦撮影
谷口淳、B3優勝を決めた現役ラストゲームでMVP
5月17日からはもう1つの目標をかけた戦いに挑んだ。B2昇格の切符が2クラブに与えられるのに対し、B3王者の称号はもちろん1クラブにしか与えられない。
ファイナルで相まみえる“アースフレンズ東京Z”は、B2ライセンスを交付されず、B2に昇格できないことは開幕前に決まっていたが、それでも力強く戦い続け、レギュラーシーズン7位から勢いに乗って勝ち上がってきた侮れない相手。事実、第1戦は前半の23点リードを追いつかれ、オーバータイムの末に86-83の3点差で辛勝と苦戦を強いられた。
迎えた第2戦、チームに火をつけたのは“谷口淳”だった。前日からの流れを受け、第2クォーター中盤までは拮抗していたが、谷口は残り5分を切ったところで3ポイントを決めると、その直後に相手のオフェンスファウルを誘発する好ディフェンスを披露。
ここから横浜EXは徐々に点差をつけていき、前半終了時点で10点リード。後半も終始優位を保ち、最終スコア72-58で横浜EXはB3優勝を果たしてみせた。

チームカラーのエクセレンスグリーンに染まった横浜BUNTAI-吉川哲彦撮影
谷口はシーズン開幕前に、今季限りでの現役引退を表明していた。大学卒業後、一度は社会人チームに進みながら、その後プロに転向。キャリア1年目には西宮(現・神戸)ストークスでB2優勝・B1昇格を経験し、2シーズン前はセミファイナルで横浜EXを破って、B2に昇格した岩手の一員だった。
今回、B3に戻ってきた古巣・岩手を下して、B2昇格を決めたことには複雑な想いも抱えながら、「僕の中では最善を尽くした。チームが勝って何よりでした」と安堵。
ファイナルでは現役生活の最後をゲームMVPに選ばれる活躍で飾り、これまでのキャリアを振り返った際には、「9年間で3回も優勝・昇格できたので、もうおなかいっぱいです(笑)」と笑顔を見せた。今後はかねてから希望の職業だった教員となり、大阪府内の高校でバスケット部を指導することが決まっている。

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