さらに、2026年の箱根駅伝では、大学OBの農場に栽培を依頼。元日に学生が収穫して本番に臨んだことが大学の公式発信で明かされている。
演舞に使う大根を自ら収穫する。これは、応援を単なるパフォーマンスではなく“収穫の喜びの共有”にまで拡張する取り組みだ。東京農業大学ならではのフードロス対策と食育の実践と言える。

練習は水の入ったペットボトルを用いる‐Journal-ONE撮影
応援団の現在地―三部一体で創る“総合芸術”
全学応援団は、リーダー部、吹奏楽部、チアリーダー部の三部体制。過去の密着取材でも、選手に最大限の力を届けるべく、立ち位置、腕の角度、指先の所作まで妥協なく磨き上げる練習の様子を紹介した。
演舞は単なる“盛り上げ”ではい。緻密なフォームとリズム設計、隊列運用の上に成立する総合芸術だ。この「総合芸術性」は、箱根駅伝のような大舞台でこそ威力を発揮する。
箱根は、テレビ中継や現地観戦で“年の初めの祈り”を共有する文化行事でもある。そこで”大根踊り”が鳴り響くことは、農の心と都市の祝祭空間を橋渡しし、人々の笑顔と拍手を呼び込む“社会的パフォーマンス”なのである。

三部一体で応援を披露する東京農業大学全学応援団-Journal-ONE撮影
「撮影・投稿」問題が投げかけた課題―伝統と権利保護の両立へ
今回、東京農業大学は無断撮影・無断投稿の削除を要請。「ローアングルからの撮影」など悪質な行為の禁止を強く打ち出した。
背景には、SNS上の反応によって学生が精神的苦痛を受け、活動から離脱せざるを得なかった事例があったという。
大学は関東陸連の定める応援実施要領を順守し、定められた場所で応援していた。学生保護の観点から必要な範囲での規制は正当だと説明している。
各メディアもこの声明を相次いで報じている。スポーツ会場における“撮影マナー”や肖像権、プライバシーに関する社会的議論が広がった。
多くの投稿が好意からのものである一方、わずかな悪質行為が伝統継承を危うくする現実。応援文化の持続可能性は、観る側のリテラシーと節度に支えられている。
応援を「守り、育てる」ために—観客に求められる心遣い
まずは、無断撮影、無断投稿をしないことが原則だ。 現地の掲示やアナウンスに従い、大学の方針に沿って大根踊りを脳裏に焼き付けて欲しい。
加えて、安全導線を守り演舞を遮らない観覧にも心掛けたい。 演舞を遮らないよう演舞中での場所移動や体のはみ出しは避けたいところだ。
“記録より記憶”を楽しむ。 目の前の空間芸術として大根踊りを、拍手と掛け声で支えて欲しい。使い終えた大根は、観覧者に配布される。 配布の際は感謝して受け取り、食卓で“応援の続き”をするのも伝統応援を後押しする一案だ。

大根踊りの伝統を守るため観覧マナーは順守して欲しい‐Journal-ONE撮影
「箱根」の現場で改めて見えた、“大根踊り”の本質
学生が体と声を張り上げ、農の誇りと食の循環を歌い上げる。大根踊りは“生きた教育”である。
大根を自ら育て、年初に収穫し、演舞のあとに人へ返す。——この循環に、東京農業大学のアイデンティティが凝縮されている。
2026年の箱根駅伝で再び脚光を浴びた伝統は、同時に新たな課題を照らし出した。担い手の安全と尊厳を守りながら、誰もが笑顔で共有できる祝祭をどう設計するか。
伝統応援の継承に大学側は不断の工夫を怠らない。私たち観客ひとりひとりも成熟した振る舞いで、後押していきたい。Journal-ONEはこれからも、全学応援団の現場に寄り添っていく。大根踊りはもちろん、東京農業大学の「今」を記録して伝統の明日を問い続けたい。





















