二刀流・藤田が大記録達成
世界最高峰の女子ソフトボールリーグ「JD.LEAGUE」(以下、JDリーグ)。秋風が吹き始めた10月、激戦の東地区でプレーオフ進出を決めた。
JDリーグで10月15日現在、東地区2位とプレーオフ進出圏内を守る「ビックカメラ高崎ビークイーン」の藤田倭選手。6月15日に歴代2人目となる通算200打点を達成した。
2009年、佐賀県の佐賀女子短期大付属佐賀女子高校から群馬県高崎市を拠点に置く太陽誘電ソルフィーユに入団した藤田選手。2020年までの12年間、太陽誘電で活躍した後、2021年からビックカメラ高崎ビークイーンに移籍。17シーズン目を迎えた2025シーズン、対日立サンディーバ戦で勝利を挙げ、この大記録を打ち立てた。

高崎ラウンドでは記録達成記念ステッカーの配布イベントを実施-Journal-ONE撮影
NPB大記録と比肩する偉業
JDリーグにおける歴代の通算打点数は、「女・イチロー」と呼ばれた山田恵里選手(デンソー)の219打点。それに次ぐのが、200打点を越えて現在も打点を積み上げ続けている藤田倭選手(203打点)。
歴代最高打点の更新が見えてきた藤田選手だが、通算200打点を達成するまでの歩みがどれほど困難な道のりだったのか。同じダイヤモンドゲームであるNPB(日本プロ野球)の記録と比較してみると、その凄さがわかる。
NPBの最多打点記録を持つのは、世界の本塁打王・王貞治選手(巨人)。実働22年という現役生活で積み上げた打点は2,170打点。数字だけ比べれば、藤田選手の10倍にも達する。
しかし、実働年間で行われた総試合数が2,890試合である王選手。試合数を打点数で割ると「1.33試合に1打点」を挙げていることになる。対する藤田選手は200打点達成試合までに行われた総試合数は380試合となり、「1.9試合に1打点」を挙げている換算だ。王選手の打点を挙げるペースに類似している藤田選手は、JDリーグ屈指のクラッチヒッターと称されるゆ所以でもあるのだ。
さらに、1試合当たりのイニング数が少ないソフトボール。当然、1試合で回ってくる打席数が少ないため、規定打席数で比較してみると、王選手は8,959打席(規定打席数3.1)で2,170打点、「4.13打席に1打点」を挙げるペースとなる。対する藤田選手は798打席(規定打席数2.1)で200打点となるため「3.99打席に1打点」を挙げているペースだ。

JDリーグ屈指のクラッチヒッター・藤田選手-Journal-ONE撮影
両選手とも高卒で入団。王選手は投手から野手にコンバートされ、藤田選手は「二刀流」選手と、細かい条件は異なる。しかし、年間公式試合戦の少なさ、1試合当たりの打席機会の少なさを鑑みると、女子ソフトボールにおける200打点達成が如何に困難な記録であるかが分かるだろう。
節目の大記録を振り返る
― 200打点を達成した心境はどうでしたか?
藤田)正直に言うと、達成したことを知りませんでした。会場練習の時に私の200打点達成プラカードが見えて、上野さんと岩渕監督が「(200打点まで)あとちょっとじゃん」と話していたので、そこで知りました。数字はあまり意識していなかったですね。
― 今シーズンのうちに「女イチロー」と呼ばれる山田恵里さんの持つ通算219打点という記録を超えるのではないですか?
藤田)いやいや、無理ですよ(笑)。そんな簡単に打点を挙げていたら、ピッチャーがかわいそうですし、そんな簡単にはいきませんよ。
― 200打点は歴代でもまだ二人しか到達していませんが、そこまでやり続けてきて良かったと思うことはありますか?
藤田)長くやってきたからこそ達成できるので、そういう記録に携われて良かったなと思います。でもJDリーグになって試合数も増えたので、今の若い選手たちはすぐこういう記録を乗り越えていくんだろうなと思いますね。

藤田選手は今シーズンさらに打点を挙げ続けている-Journal-ONE撮影
二刀流に挑戦での苦労
― 長く選手をやる中で苦労されたことや、上手くいかなかったことはよくあると思います。特に藤田選手は二刀流にも挑戦されて、難しい部分もあったと思いますが、そういう壁をどうやって克服していきましたか?
藤田)二刀流を始めたころは打撃も調子が良くて、投げる方も良かったので最初はあまり苦労してなかったですね。しかし、自分の感情をコントロールするのがすごく難しかった。投げて打たれても、自分の打席でリベンジすることが多かったのですが、打てなかった時にそのままマウンドでも引きずってしまい、打たれる場面が多かったです。気持ちの切り替えが一番難しかったですね。打たれたらイライラしたりとか、感情の起伏を切り替えるのが技術よりも大変でした。

