寒川の社が視界から遠ざかると、それまで住宅地ばかりが目についた車窓には、次第にのどかな田園風景が混じり始める。近くを流れる相模川の川辺の景色ものどかそのもの。
丹沢の山々を左手に見ながら電車はずんずん北上する。途中まで見えていた富士山も丹沢の山々の影にすっぽりと隠れてしまう。この辺では、富士よりも丹沢の山塊の方が大きく見えるのだ。普段と90度ほど異なる角度で見る大山の姿も、また美しい。

JR相模線でのどかな車窓を楽しむ‐平床大輔撮影
その大山が視界の左手後方へと流れていったところで、最寄りの”原当麻駅”に到着。原当麻と書いて、「はらたいま」と読む。思わず『さん付け』で『3,000点』ほど賭けたくなるような、親父ギャグを誘発する地名だ。まあ、分からない人はスルーしてください(ヒント:篠沢教授に全部)。
『ダイボ君』のステッカーをもらうために歩く
駅を出て、まず目についたのは緑の出立のおじさん2人。明らかにダイナボアーズに関係していそうなので、近寄って話を聞くと、ボランティアさんで、スタジアムまでの道案内をしていた。
なんでも、駅から徒歩でスタジアムへ行くと、スタジアムのある公園の入口で、ダイナボアーズのチームマスコット”ダイボ君”のステッカーがもらえるのだとか。こうした徒歩促進に、流行りのSDGsを掲げていないところに好感が持てる。いいじゃないですか、ダイボ君シール、もらいましょう。緑のおじさんたちに「いってらっしゃい」と送り出され、スタジアムを目指す。

もらったダイボ君シールと相模原ギオンスタジアム‐平床大輔撮影
途中、ワークマンで道草を食いつつ、スタジアムを目指す。原大麻駅からギオンスタジアムへは、1.5キロほどの道のり(途中、コンビニ1軒あり)。1キロほど行った所から上り坂になっており、少し坂を上ると、スタジアムのある相模原公園のクヌギゲートが見えてくる。
駅にいた緑のおじさんと同じ服装のおじさんがここにも。どうやら、ここから公園内へ入るらしい。駅から徒歩でやって来た旨を伝え、ダイボ君シールをゲットし、ここから木々の間に伸びる登り坂を進む。少しひんやりとした日陰と、木漏れ日の温もりが作り出すコントラストが心地良い。スタジアムはこの緑道を上り切った先にあった。

スタジアムへ続く緑道∸平床大輔撮影
察するに、ここは相模川の作った河岸段丘の上なのだろう。ギオンスタジアムはその丘の上に鎮座している。ところで、隣町の町田にも”ギオンスタジアム“があって、あちらはサッカーJ1のFC町田ゼルビアが本拠地としている。
こちらの正式名称は「相模原ギオンスタジアム」で、あちらは「町田GIONスタジアム」。字面は異なるが、読みは同じギオンスタジアムなので、ちと紛らわしい気はする。出掛け際に慌ただしく「ギオンスタジアム」で経路検索し、結果的に違う方のギオンスタジアムに着いてしまった、なんていうことは過去になかったのだろうか。
青海に行こうと思って青梅に着いちゃった。という話をどこかで耳にしたことがあるが、あれと少し似ている。ただ、こちらはそこまで距離的に離れていないので(多分、車で30分ほど)、「青海を目指したのに青梅」級の絶望感はなさそうだ。

早めに到着したスタジアムの外観‐平床大輔撮影
さて、そんなギオンスタジアムだが、ギオンと言っても、あくまで相模原にあるので、特にはんなりしているわけではない。もちろん、舞妓はんもいはりません。有り体に言って、パッと見はどこにでもある地方の陸上競技場である。ただし、スタジアムを取り巻くお祭りの雰囲気には、50歳間近のおっさんの心すら踊らす何かがある。
バックスタンド側のゲートに到着すると、スタジアムはまだ開門前だったが、すでに数百人が列を作っている。熱い人たちだが、変にギラギラしたところはなく、和気藹々としている。この辺りはキッチンカーエリアになっており、出動してきたキッチンカーが所狭しと並んでおり、どれも美味しそうで目移りする。
ゴール裏スタンドの後方にもキッチンカーエリアがあるようなので、途中にあったショップや、フリーマケットのテントを冷やかしつつ、週末のスタジアムまで出動してきたゆるキャラたち(相模原市緑区のイメージキャラクター”ミウル”と、ラグビー応援マスコットの”ラガマルくん”)を一瞥しながら、そちらのキッチンカーたちも物色。
