神戸の観光地、そして海に囲まれた新アリーナ
何の自慢にもならないが、私は他人から1度も「オシャレ」と言われたことがない。人生で3度引っ越しをしているが、敢えて「下町っぽい」「気取らない」街を選んできた。オシャレが嫌いなわけでもないが、独身スポーツライターが「よそ行き」「フォーマル」な世界に接することは全くというほどない。
しかし、自分はこの仕事をしていて初めて「そういう世界」に足を踏み入れた。それが兵庫県神戸市、三宮の第2突堤に完成したばかりの”GLION ARENA KOBE”(ジーライオンアリーナ神戸)だ。突堤とは船舶が発着する「突き出した堤」のことで、海に270度囲まれたロケーション。プロバスケットボール”B2リーグ”に所属する”神戸ストークス”のホームアリーナで、さらにコンサートなど「エンターテインメント」の場としても想定されている。

海に面した『ジーライオンアリーナ』-大島和人撮影
4月21日(月)、神戸ストークスの2024-25シーズン最終戦が、”ジーライオンアリーナ”で組まれていた。本当は神戸の「劇的なB2プレーオフ進出決定現場」を取材する目論見だったのだが、前日にその可能性は消えていた。ただ相手の”鹿児島レブナイズ”もグッドチームだし、何より新アリーナをこの目で見たい。そんな理由で予定通り、ジーライオンアリーナに足を運んだ。
新アリーナはJR三ノ宮駅から徒歩20分ほどのベイエリアにあり、路線バスもある。ただ試合日はシャトルバスが運行されていて、「神戸阪急」の前からかなり高頻度で発車していた。今回はそれを使ってアリーナに向かう。
実はジーライオンの建設現場は見に来ていたのだが、完成したアリーナは想像以上に大きい。さらにバームクーヘンでおなじみのユーハイム、タコ飯や穴子飯央の淡路屋といった「ご当地」の魅力的なテナントが入っていて、試合がない日も営業している。そもそもこの周辺は”メリケン波止場”、”ハーバーランド”、”神戸ポートタワー”と観光スポットが目白押しで、回遊の場所として普通に定着しそうだ。

三宮駅のシャトルバス乗り場-大島和人撮影
アリーナの映像設備と来場者に驚かされる
アリーナの内部も好印象だった。個人的にいいと思ったのは映像周りだ。コート上に設定された「4面ビジョン」と別に、ベンチ向かって右側に大型ビジョンが用意されている。バスケットボールは「数字」のスポーツだし、選手交代が頻繁にある。だからそのときコートでプレーしている選手が誰で、それぞれの得点やファウルの数がどれくらいか、よほどのマニアかメモ魔・計算魔でないと追い切れない。
ビジョンが2系統あることで、大型ビジョンで得点やファウルの数を確認しつつ、4面ビジョンでプレーのリプレイを見る・・・というような使い分けができた。
Bリーグにも「ビジョンがない会場」はなくなってきたが、プロ野球は2面、3面と複数のビジョンを使った演出が当たり前になっている。新アリーナはそういう部分で時代の流れに追いついていた。当然ながら「バスケ以外」でもこれは活用されるだろう。

ジーライオンアリーナの大型ビジョン-大島和人撮影
何より印象深かったのは「お客さん」だ。きっと神戸という土地柄があるし、平日夜で会社帰りの方も多かったのだろう。ただそれにしてもフォーマルで、それでいてオシャレな方が男女とも多かった。もちろん家族連れもいたが、自分の知るBリーグではほとんど見たことのないタイプの方が目についた。
4月1日に取締役副社長に着任したばかりの西村大介さんを見かけて、挨拶がてら軽く感想のコメントをお願いした。彼は今まで滋賀レイクスターズ、茨城ロボッツなどの社長を務めた経験があるのだが、神戸の環境については率直な驚きを口にしていた。
「本当にそのままですけど『すごいな』という感じですね。滋賀や茨城でやっていた感覚とはまったく違います。だから自分の今までの考え方を変えないといけません。Bリーグのターゲットは基本的にファミリー層でした。でも、ここはVIPの方にはVIPの演出を考えないといけないし、そういうしつらえも用意しなければいけませんね。器が違うと、やること、頭の使い方が変わります」

神戸ストークスの西村大介副社長-大島和人撮影

主な取材対象はバスケットボール、サッカーだが、野球やラグビーも守備範囲。取材の疲れをスポーツ観戦でいやす重度の観戦中毒でもある。
軽度の「乗り物好き」でもあり、お気に入りの路線バスは奈良交通「八木新宮線」、沖縄バス「名護東線」と今はなき宗谷バス「天北宗谷岬線」など。