試合後、「ベンチは皆、あきらめていなかった。そういう雰囲気づくりができたのは良かった」と三垣監督が選手たちを称えれば、「全員が追いつけると思っていた」と主将の中澤も振り返る。

声を掛け合い一体感を醸成する三垣監督の野球-Journal-ONE撮影
「変化球が思うところに決まらず、カウントを悪くしたところを捕らえられてしまった」と、自らの投球を振り返った渡辺も、KO直後から「自分にできることは、後輩たちを励ますことだけ。とにかくベンチで声を出し続けた」とモメンタムを失わないベンチワークが、徐々に試合の流れを変えていった。
憧れのユニフォームで力投するご当地選手
ベンチからの声援を受け、試合の流れを引き戻したのは、東京農業大学北海道オホーツクのユニフォームに憧れ、神宮でのマウンドで力投を見せた3番手の佐々木聖和(3年・旭川実業)だった。
東京農業大学北海道オホーツク野球部は、毎年地域との絆を育むために地元の子どもたちを対象にした野球教室を開催している。小学生時代にこの催しに参加した佐々木少年は「凄く大きくて優しい農大の選手に野球を教えてもらい、自分も農大野球部の一員になりたいと思った」と、入学を決めた選手。
憧れのユニフォームを身に纏い、憧れの聖地・神宮球場のマウンドに上がった佐々木は、5回から見事なピッチングを披露。MAX144km/hの速球を中心に、散発4安打、5つの三振を奪う力投で佛教大学打線に得点を与えず9回まで投げきった。

憧れのオホーツク戦士として堂々とした投球を見せた佐々木聖和-Journal-ONE撮影
じりじりと迫る打線もあと一歩
佐々木の好投に流れを掴んだ東京農業大学北海道オホーツクは6回裏、1死から4番・渡邊晃希(2年=東京農大第三)が右中間を破る二塁打で出塁すると、6番・川口友翠(4年・札幌第一)の二塁打、7番・千葉大輝(4年=盛岡大学附属)の安打などで2点を返すと、東京農業大学北海道オホーツク応援団の“大根踊り”のメロディーが神宮の杜に響き渡る。

千葉大輝(東農大北海道オホーツク)が適時打を放つ-Journal-ONE撮影
さらに8回裏にも2死満塁から押し出しで1点を返すと、9回裏にも1死から友寄が右中間を破る三塁打で出塁。この場面で、ここまで4打席無安打に抑えられていた3番・中澤が右翼線に適時二塁打を放ち遂に3点差まで迫った東京農業大学北海道オホーツク。

中澤空芽の右越二塁打で3点差に詰め寄る東京農業大学北海道オホーツク-Journal-ONE撮影
応援団からの声援がこの日最大のボルテージで、続く中軸に同点、逆転の期待が掛かったが、序盤の6失点は重く、最北の戦士たちの挑戦は今年も1回戦で終わりを告げた。
秋の明治神宮大会にリベンジを
試合後、三垣監督は「(敗戦は)一生懸命やった結果。ビッグゲームで粘ってやれたのは収穫」と前向きに試合を振り返り、自身が目指す野球を最後まで貫いた選手たちを賞賛した。

芽依神宮大会にリベンジを誓う三垣勝巳監督-Journal-ONE撮影
主将の中澤も、「この2年、コールド負けで悔しい思いをしてきたので、何とかこの代でやり返そうと皆で練習を積んできた」とあと一歩まで追いかけた試合展開を冷静に振り返った。
東京農業大学北海道オホーツクは、この全日本大学野球選手権が終わると大学生活で野球を終える4年生は引退し、卒業論文の制作や授業に専念する。しかし、「今年の4年生は、上を目指す選手が多い。彼らが活躍するためにも、秋の神宮を目指して頑張る」と三垣監督は明治神宮野球大会でのリベンジを誓い、球場を後にした。

大声援の応援団に挨拶する東京農業大学北海道オホーツクナイン-





















