昨夏導入の朝夕2部制が拡大
8月6日、第107回全国高等学校野球選手権大会(以下、夏の甲子園)は“阪神甲子園球場”で大会2日目が行われた。昨年の大会で試験的に実施された朝夕2部制が、今大会はこの日から4日間導入されることに。
毎年激しさを増す暑さは、もはや対戦相手や組み合わせよりも勝つために克服しなければならない全国球児共通の“難敵”になっている。今年初めてとなった“午前の部”第1試合で対決するのは、鳥取城北(鳥取)と3年前の王者・仙台育英(宮城)の好カードとなった。

午前の部、午後の部の2部制を告げる大会2日目のボード-Journal-ONE撮影
8時試合開始に先立ち、阪神甲子園球場の目の前にある阪神電鉄・甲子園駅に降り立ったのが朝の7時。既に球場周りには多くのファンが詰めかけ、本日の対戦ボードの前などで記念撮影を行っているが、既に暑さで額ににじむ汗を拭きながら調べると、この時点での気温は31℃に達していた、
昨年、初めての開催となった午前の部(花咲徳栄-新潟産業大付属)を取材したJournal-ONE編集部。その観戦記でも紹介したが、やはりこの時期の朝は暑く日射しも強い。スタジアムに入ると、一塁側の銀傘のおかげでかろうじて内野の半分が日陰になっていた。

朝7時過ぎの甲子園は内野半分が日陰だった-Journal-ONE撮影
仙台育英のシートノックが始まると、優勝監督インタビューの「青春って、すごく密なので」が流行語大賞特別賞にもなった須江航監督が大粒の汗をかきながらノックをするホームベース付近に向かって徐々に日が差してくるのが分かる。

日陰が残るホーム付近からノックを打つ須江航監督(仙台育英)
涼しげな風を受けての投手戦
朝の甲子園は、バックスクリーンからホームに緩やかに風が吹く。昨日の史上初ナイターとなった開幕戦では、ライト方向からレフトへいわゆる”浜風”が強く吹き付けていたが、朝の甲子園は観戦する私たちに心地よい。
まだ日陰の恩恵を受けるバックネットの観客席とは異なり、すでに太陽が照りつけるグラウンドでは、好投手同士の熱投が繰り広げられた。
先ず守りについた鳥取城北のマウンドには、スラリとした体躯のエース・田中勇飛(3年)が立つ。スリークォーターから投じられる速球は、常時140㌔を越える。

常時140㌔台半ばの速球を投げ込んだ田中(鳥取城北)-Journal-ONE撮影
その好投手・田中を初回、いきなり仙台育英の1番・田山纏(2年)がレフトボール際に大きな飛球を流し打った。まだ応援のエンジンが掛かっていないスタンドの観客は、声を失い打球の行方を見守ると、フェンスに直撃して跳ね返る白球を見て一気に歓声をあげる。この二塁打を放った田山を犠打で三塁に進めると、U-15侍ジャパンにも選ばれた土屋璃空(3年)が打席に入った。
しかし、このピンチにギアを入れた田中は土屋を外角一杯の145㌔の速球で見逃し三振に切って取ると、この日18歳の誕生日を迎えた4番・川尻結大(3年)も落ちるボールで三振を奪い無失点で切り抜ける。
対する仙台育英のエース・吉川陽大(3年)も140㌔前半の速球に鋭く落ちるようなスライダー、縦に大きく割れるドロップと緩急自在の投球を見せる。初回、2番・赤松響(3年)に安打を許したが、後続をこのコンビネーションで抑えて無失点で立ち上がった。
その後、やや球速を落として変化球主体で無失点に抑える鳥取城北・田中、多彩な変化球で鳥取城北打線の芯を外す投球を見せる仙台育英・吉川の投げ合いでゼロ行進が続く展開に。

速球と変化球のコンビネーションが抜群の吉川(仙台育英)-Journal-ONE撮影
観客席にも差し込む夏の日射し
序盤の投手戦を40分で終えたこの試合。いよいよバックネット席前列まで日が差し込むと、尋常でない暑さであることに気付く。既にこの環境に選手たち、アルプススタンドの応援団の皆さんがさらされているのかと思うと、朝の甲子園もしっかりとした暑さ対策が必要だと痛感する。
