“世界の上野”が大記録達成
世界最高峰の女子ソフトボールリーグ“JD.LEAGUE(以下、JDリーグ)”。秋風を感じ始めた10月、いよいよプレーオフに向けた順位争いが激しくなってきた。
そのJDリーグで10月10日現在、東地区2位とプレーオフ進出圏内を死守している“ビックカメラ高崎ビークイーン”の大エース・上野由岐子投手。去る4月27日に史上初の通算250勝を達成した。
2001年、福岡県の九州女子高校(現、福岡大学附属若葉高校)からJDリーグの前身であるルネサスエレクトロニクス高崎に入団した上野投手。それから25シーズン目を迎えた2025シーズン、対ホンダリヴェルタ戦で勝ち星を挙げてこの大記録を打ち立てた。

250勝達成記念のステッカーを高崎ラウンドで配布!-Journal-ONE撮影
NPB大記録と比肩する偉業
JDリーグにおける歴代の通算勝利数は、記録を積み上げ続ける上野由岐子投手(255勝)に次ぐのは、ミッシェル・スミス投手(豊田自動織機)の172勝。2位に圧倒的な差を付け、いまだ現役トップ選手として活躍する最多勝利投手の上野投手。この大記録は、NPB(日本プロ野球)の400勝投手・金田正一投手(国鉄-巨人)にも引けを取らない偉業なのだ。
NPBダントツの最多勝利記録を持つ金田投手は、実働20年の間に行われた2,750試合のうち、3試合に1度となる944試合に登板している。登板した試合で金田投手は、「2.36試合に1勝」している計算だ。6~7日に1度登板する現代野球の先発投手からは考えられない登板回数であり、2.36試合に1勝の高確率で勝ち星を挙げていた金田投手。それを20年続けて400勝に到達するとは、改めて前人未踏のこの記録に驚愕する。
しかし、上野投手はこの金田投手をさらに上回るスピードで勝ち星を挙げているのだ。入団から250勝達成までに行われた544試合のうち、実に7割近い372試合に登板。その登板した試合では「1.49試合に1勝」というとてつもないペースで勝ち続けているのだ。

女子ソフトボール界のエースとして今も活躍し続ける上野投手-Journal-ONE撮影
ソフトボールは、野球の投手と比べて肩の消耗が少ないと言われる。しかし、連投する体力と連勝できる安定感を併せ持つ上野投手でなければ、通算250勝など達成できるはずがない。NPBの400勝とJDリーグの250勝、単純な数字だけでは比較できない大記録であるとお分かりいただけるだろう。
和やかに250勝達成の瞬間を振り返る
上野)もちろん、めっちゃ嬉しいですよ(笑)。
― 冒頭から素敵な笑顔で250勝達成の瞬間を振り返ってくれた上野由岐子投手。250勝達成を確実視されていた今シーズンを迎えるにあたり、何か意識していたことはありましたか?
上野)実は全く意識していませんでした。普段から本当に数字に疎いというか、全く気にしてないというか。250勝達成も、試合後にスタンドのファンの皆さんから「250勝おめでとう」とお祝いされて「そうだったんだ」と気付きました(笑)。

和やかな雰囲気で始まったインタビュー-Journal-ONE撮影
― これだけ大きな記録なのに、意識も無かったのですね。
上野)言い換えれば、当事者からすれば「これだけ長くやっていれば、数字的なものは自然と付いてくるだろう」みたいな感覚が強いですね。数字が目標でプレーしているわけではないですし、数字の中でも勝ち星は、自分の力だけで積み上げられるものではないですから。
― チームがあっての250勝だと。
上野)そうですね。強いチームに巡り会えた縁もありますし、そのチームのおかげで勝ち星を重ねることができたと思っています。これだけ自分のピッチングがチームに貢献できていたのかと、どこか俯瞰して見ている感覚ですね。
新しい出会いを与えてくれるソフトボール
― これだけの実績をソフトボール競技で積み上げてこられました。ソフトボールを続けてきて良かったな、面白いなと思うことを教えてください。
上野)新しいシーズンを迎えるたび、新しい感覚や、モチベーション、考え方など、色々なものに出会えていることがとても面白いですね。自分の身体も含めてまだまだ知らないことがあるので、不思議な感覚になります。そして、その感覚に慣れていくと徐々にそれが楽しくなってきて、プレーするやりがいになっています。この出会いが、ソフトボールを長く続けられているひとつの要因かなと思います。

