
先発として投げるその姿は圧巻-Journal-ONE撮影
― その新しい出会いは、楽しいものばかりではなかったと想像します。
上野)もちろん、中にはモチベーションが下がることや、くじけてしまうような感情にも出会ってきました。とは言え、年数を重ねるたびに自分の心も動いています。結果的に、今はすごくソフトボールが楽しいと思ってプレーできている自分がいるのです。正直、この年齢になって楽しいという感情でソフトボールができるとは想像もつきませんでした。
上野)良いことも悪いことも、出会えたことが嬉しいというか、その出会いに感謝したいです。良くも悪くも色々なものを持ち続けたいですし、この出会いを楽しいと思えることが今1番の原動力となっています。
日本のソフトボール界を背負う気持ちの変化
― 日本ソフトボール界が世界トップレベルであり続けるため、上野投手が背負った期待や責任なども多かったのではないでしょうか?
上野)そうですね。チームにおける役割もありましたが、日本ソフト界のためにという期待や責任は大きいなと感じています。これまでは、オリンピックでメダルを獲得しなければとか、自分自身がもっとうまくなりたいとか、プレッシャーとして背負うものが大きくて、必死にソフトボールやっていました。
上野)しかし、今はそういったプレッシャーも全て含めて受け入れられています。歳を重ねることで自分の中で、しっかりと懐に納められるだけの器ができたのも、時間を重ねてきたからこそ。また、周りがどう思うかとかではなく、こうやって歳を重ねても元気にプレーできるよっていうのを見せられている。年齢を重ねることがマイナスではなく、少しでもプラスのベクトルに持っていけるように気持ちが変化しています。

何年もJAPANを背負う上野投手-Journal-ONE撮影
前人未踏の大記録のその先へ
― 通算250勝を達成し、上野投手の中で次に目指すべき姿、理想としている選手像は何でしょうか?
上野)若い頃の目標は、ミッシェル・スミスさんだったのです。去年、大エースだったミッシェル・スミスさんが引退した年齢になりました。実際、自分がその歳になってはじめて、こういう気持ちや身体の感覚でプレーしていたのだろうなと、当時の大エースと今の自分を重ね合わせながらシーズンを過ごしました。
上野)そして今年はそのミッシェルを超える年齢でプレーしています。これからは、自分が何もないところから新しい道を切り拓いていくことになります。自分の可能性をどんどん広げて、自分が進んだ後に道ができていくことで、後輩たちの道標みたいなものになる。そういうプレーができればいいなと思っている現状です。
勇気を持って相談しよう
― 世界のエース・上野投手成功の影には、克服した困難や苦労もたくさんあったと思います。現在、ソフトボールをしている子どもたちも、少なからずこういった苦しいことにも遭遇します。上野投手から困難克服のアドバイスをするとしたら、何が一番の解決策と言えますか?
上野)一番の解決策は”誰かに相談する”ことです。自分の弱みはなかなか人に打ち明けられないですよね?分からないこと、できないこと、人それぞれの弱みを自分で何とか解決しようとしてしまいます。

子供たちに教えたい、大人も共感できる大切なこと-Journal-ONE撮影
上野)自分ができないことを「できない」と言える勇気、わからないことを「わからないから教えて」と言える勇気は、大人になってもなかなか出せるものではありません。子どもたちは尚更ですよね。ですが、その勇気を持ち、一歩踏み出すことをして下さい。
― 確かに、私たちでも日常そういった場面に出くわしますが、なかなか勇気が持てませんね。
上野)その勇気を持つことで、本当に困った時には助けてもらえます。すると、次に困っている子どもがいれば、自分が助けてあげることができるのです。それがチームだと思いますし、仲間だと思います。
上野)それができないと、本当の意味で仲間になれないのではないかと思います。困ったときに「困っているから誰が助けて」と手を挙げること、それを助けてくれる仲間が周りにいてくれること。本当に調子が悪い、悩んでいる場面を克服するのは、自分の経験から相談することが最も良い解決策だと感じています。
― 上野投手もそうして困難を乗り越えてきたと。

