上野)周囲や上の方から、できて当たり前と思われていても、できない時もありました。もうどうしていいかわからない、打たれるのが本当に怖くなってうまく投げられないといった経験は誰もがあると思います。特に、期待が大きければ大きいほど、上手くいかなかったらどうしようと考えてしまうのが人間ですから。
上野)自分も「今日、調子悪いからみんな頼んだよ」などと口に出して伝えるようにしています。周囲は、いつも通りの上野さんと思っていても、「今日はいつも通りじゃないよ。だから打たれても心配しないで。焦らないで」と言っておくだけで、周りもそのつもりで準備をしてくれます。実際に調子が悪い様子を目の当たりにしても、「じゃあ、しっかり守ってあげよう」とか「今日は5点、6点と援護点を取ってあげよう」と一つになっていくのがチームだと思うので。

チームメイトとの信頼が強さの証ともいえるだろう-Journal-ONE撮影
上野)反対にみんなの調子が悪い時は「自分が頑張ってゼロで抑えるからね」という助け合い。そのやり取りが信頼関係を生んでいくのかなと思います。
言葉で伝えることの大切さ
― 困っていることを整理して、それを口に出して伝える。ソフトボールに限らず、学校生活でも会社でも大事なことですね。
上野)そうですね。みんなそれぞれ思っていることは心の中にあります。決して何も考えていないわけではないのです。心の中で思っていることを、言語化して相手に伝える。みんなが分かるように伝える。「コミュニケーションを取って」と英語で言うと複雑に聞こえますが、もっと単純なことなのです。
上野)自分の弱さに蓋をする、目を逸らして無かったことにしてしまいたくなる場面もあるでしょう。しかし、口に出して周りに伝えることで、自分と向き合える力も身につくのかなと思います。できない自分をしっかりと自分の中で受け入れ、みんなにできないから教えてと伝えられる。簡単そうで結構難しいですけれども、是非取り組んで欲しいですね。
― 最近は、メールやメッセージアプリというツールがよく使われ、面と向かって話す機会も減っています。意識して言葉で伝えるようにしなければなりませんね。
上野)そうですね。今は、連絡事項などもメールで共有することが多くなっています。もちろんそれは便利で良いのですが、気持ちを言葉に出して人に伝えることは大事だなと思います。相手に自分の気持ちが届いているのかな?思いが刺さっているのかな?と確認しながら言葉を選んで伝えて欲しいです。

チームスポーツだからこそ感じる、言葉の大切さ-Journal-ONE撮影
勝利の喜びがプレッシャーを跳ねのける
― 先ほど、プレッシャーのお話ありました。上野選手がトップ選手として華々しい実績を積みあげた、勝ち続けた裏にある重圧を克服してきたマインドは何でしょうか?
上野)日本代表、ビックカメラ高崎と、これまでの場面、場面で違ったプレッシャーがありました。その様々なプレッシャーを克服するに共通していたのは、優勝した瞬間の喜びです。その喜びは一瞬なのですが、勝ったものにしか分からないその興奮というか達成感というか。それをもう一度味わいたいから、優勝したい。勝ち続けたいと思いプレッシャーにも立ち向かっていけるのです。
― その喜びには、優勝するために準備してきた苦労が報われたという思いもあるのでしょうか。
上野)そうですね。世界でもJDリーグでも、高いレベルで1つ勝つことはとても難しいです。簡単に勝てるものではないので、勝てなかったとしてももっと頑張ろうと諦めずに困難やプレッシャーに立ち向かっていけるのは、優勝した喜びを知っているからだと思います。

勝利を求めるソフトボール界のレジェンド・上野投手-Journal-ONE撮影
小さな達成感を積み上げてほしい
― なるほど。優勝という喜びを知る機会が少ない子どもたちに置き換えますと、初めてのソフトボールでバットに当たるようになったっていうことも達成感のひとつですかね。
上野)もちろんそうです。子どもの時はできないことの方がたくさんあります。できないことができたという喜びをひとつひとつ増やしていく。今のポケットがいっぱいになったら、もっと大きいポケットに広げていく様な積み重ねが、いつかJDリーグや日本代表での達成感に繋がります。




















