女子野球タウン第1号の加須市
「この街は、女子硬式野球のプロ、大学、高校、そして中学生クラブチームが揃う“女子硬式野球の聖地”です」と紹介してくれたのは、平成国際大学女子野球部の濱本光治監督。
埼玉県加須市は、女子野球というコンテンツを町興しに活用してもらおうと一般財団法人全日本女子野球連盟が行っている“女子野球タウン認定事業”に応募。嬉野市(佐賀県)、松山市(愛媛県)と共に第1号の認定を受けた女子硬式野球が盛んな町だ。

加須市で高校、大学と長く女子硬式野球指導をしている濱本監督-Journal-ONE撮影
女子野球タウン第1号となった加須市では、全日本女子野球連盟と情報交換や交流を行いながら、大会の開催や、女子野球教室、地域の観光地や特産物と女子野球のコラボレーションなどを行い、地域発展を図っている。
その取り組みの一つとして、平成国際大学女子硬式野球部員たちが、地元の蔵元と共に “明軽(めいけい)”という名の日本酒を製造している。選手たち自らが田植え、稲刈り、仕込みなどを行い、加須市の農業の活性化と女子野球の認知拡大に繋げていく取り組みは、“Kura Master2024純米大吟醸部門”においてプラチナ賞を受賞するなど早くも話題となっている。

野球部員が作った日本酒”明軽”を手にする(左から)藤﨑監督、松本副主将、濱本監督-Journal-ONE撮影
全国屈指の強豪に胸を借りる
「2年前、私たちも田植えに参加させていただきました」と話すのは、藤﨑匠生監督。創部4年目とまだ新しい明治大学女子硬式野球クラブは、様々な交流を通じて認知拡大とレベルアップに取り組んでいる活発なチーム。
この日は、全国屈指の女子硬式野球界の強豪・平成国際大学との練習試合に臨むため、加須市内にある大利根運動公園野球場にやってきた。

幅広く女子野球界で交流する藤﨑監督-Journal-ONE撮影
全日本女子硬式選手権、全国大学女子硬式選手権という全国タイトルを何度も勝ち取って来た平成国際大学に、今夏ようやく女子軟式野球の全国大会(第39回全日本大学女子野球選手権大会)で公式戦初出場を果たした明治大学女子硬式野球クラブが胸を借りる。

軟式から硬式に切り替え調整してきた明治大学女子硬式野球クラブの選手たち-Journal-ONE撮影
野球初心者が多い明治大学女子硬式野球クラブだが、第39回全日本大学女子野球選手権大会では公式戦初勝利を挙げてのベスト8進出。そこで自信を付けた選手たちは、いよいよ“硬式野球”の活動を本格化すべく、短期間でボールを軟式球から硬式球に持ち替えてこの日のために調整を重ねてきた。
硬式野球の洗礼を浴びる
試合は初回から、平成国際大学の打線が爆発した。高校3年間、男子部員と共に高校野球に青春をかけてきた明治大学女子硬式野球クラブのエース・柴田優衣(1年・本荘高)の速球を、平成国際大学の各選手たちがシュアな打撃で弾き返す。

何度も全国制覇を果たしている平成国際大学女子硬式野球部-Journal-ONE撮影
3番・森陽花(2年・花咲徳栄高)の中前適時打、4番・篠崎芹(1年・駒大苫小牧高)の右前適時打、5番・田村優羽(2年・京都両洋高)の右前安打など、ミートされた痛烈な打球が明治大学女子硬式野球クラブの内外野陣の間をことごとく抜けていった。
「軟式球から硬式球に代えて練習をしてきたが、抜け球が多くなってしまった」と試合後に振り返った柴田を始め、軟式球から硬式球に身体や感覚をスイッチしていくのは本当に難しい。

硬式球の感覚を取り戻すに苦労した柴田-Journal-ONE撮影
「フライ、特にライナーの伸びが軟式とは全く違った。落下点の見極めはもっと練習しないと」と、外野手の森泉杏心(2年・明大付八王子高)もレベルアップに向けての意欲を示していた。
