
決勝のフィジー戦-(C)JRFU提供
後半、猛追も及ばすフィジーに敗戦
前半5分、モールを起点にHO江良颯のトライで先制したが、前半20分以降、キックオフや自分たちのミス、中途半端なキックから4連続トライを喫し、7-26と大きくリードされてしまった。「フィジーの得意な形にやられてしまった……」と思ったファンも多かったはずだ。
ただ、PNCでは後半に強さを発揮している若き日本代表は、決勝もハーフタイムでしっかりと立て直して反撃した。
後半、相手の規律が乱れてイエローカードが2枚出たこともあったが、ジョーンズHCが「容赦ないタックルを見せたい」と意気込んでいた通りの展開となり、ジェネラルプレーでのディフェンスは安定。また、前半と比べてセットプレーも優位に戦い1トライに抑えた。
さらに指揮官が就任時から、「超速ラグビー」を掲げている日本代表は持ち前の攻撃力を見せて、後半はHO江良、FB中楠がトライ、さらにPNCで好調を維持しているSO(スタンドオフ)李承信が、PG(ペナルティゴール)を決めて、26-33と6点差に迫った。

HOの江良も活躍を見せた‐斉藤健仁撮影
しかい、1トライ1ゴールで逆転できる状況まで追い込んだものの、追加点を挙げることができず、そのままノーサイド。惜しくも今年のPNCも準優勝に終わった。
ジョーンズHCは、「フィジー代表の運動能力は桁外れで、世界のラグビー界において、恐らく最も運動能力に優れたチーム。しかし、後半は非常に良く対応でき、戦術的にも的確なプレーができ、懸命に戦った。本日の敗戦は厳しい結果だったが、チームとして大きな進歩を遂げた。良いプレースタンスを確立できたため、10、11月に向けて前進したい」と前を向いた。
経験の浅い若手選手たちがつかんだPNCでの収穫
決勝で勝てなかったことは残念だが、PNCで得た収穫は、まずは10キャップに満たない若手選手たちが多いにも関わらず、ジョーンズHCの目指すラグビーを理解しつつ、テストマッチを経験し、選手層が増したことが挙げられるだろう。
ジョーンズHCは「昨季は日本代表の指揮官に戻ってきて1年目だったが、誰が日本代表としてプレーしたいか、意欲を持っているか、熱意を持っているか探る期間だった。日本ラグビーが成功するには、通常通りのことではなく、ずば抜けたことをやらなければいけない。それを誰がやりたいか見つけている。若い選手がステップアップして成長しているし、スコッドの成長、層の厚みを感じている」と話した。
コンテストキックの争奪戦、ターンオーバー後のディフェンスにはまだまだ課題は見えたが、若いメンバーで臨んだにもかかわらず、ジェナラルプレーのディフェンス、キックを交えた「超速ラグビー」といった戦術理解には一定の手応えを得た大会となった。
「良い判断をしてプレーができるようになってきた、という革新的なことが起きている。毎回、判断が正しいというわけではないが、ほぼ良い判断をしてくれている。それはリーダーたちの成長もあるし、若手の成長もある。ある一定のチームのやり方、枠組みもあるが、自主的に選手たちが判断できているのがチームの成長だと思う」(ジョーンズHC)。
海外遠征を経て一体感が増したラグビー日本代表
また、かつてジョーンズHCは「海外遠征はチームを1つにして成長させる」と話していたが、PNCを通してチームの一体感は増した。HO原田、LOディアンズの2人が共同キャプテンとなり、原田はケガのために途中で離脱したが、23歳と戦後最年少キャプテンとなったLOディアンズが身体を張ってチームを引っ張った。
その他にもSO李がアタックリーダー、チーム最多の33キャップのCTBディラン・ライリーは攻守のリーダー、オフフィールドのまとめ役としてFL下川甲嗣、PR竹内柊平らが脇を固めて、チームを牽引した。

スクラム、キャリーで存在感を魅せたPR竹内‐斉藤健仁撮影
アタックリーダーで司令塔を任されているSO李は「PNCを通して、オンでもオフでもコネクションができている。昨年のチームに比べてチームの雰囲気が良いし、プランが明確になってきている。自分たちの強みが何か、ジャパンラグビーを理解している選手が増えた。ウェールズ代表戦からイメージしてきて、ゲームを重ねて自分たちのものにできているし、去年より自信を持ってプレーできている」と手応えを口にした。

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