
大学選手権でも力投を見せた安並(至学館大)-Journal-ONE撮影
その後も低めに丁寧な投球を続ける渡辺投手と、ストライク先行で攻める投球を続ける安並投手。両投手が持ち味を活かした投球を披露して、両チーム共に得点チャンスを作れないまま試合は進んでいった。
安並投手が6回を被安打4、初回の2失点のみで試合を作った至学館大学。何とかチャンスを作ろうと積極的に打って出るも、ダラーズ投手陣がそれを許さない。

詰まりながらも外野に運ぶダラーズの力強い打線-Journal-ONE撮影
至学館大の猛追を迎え撃つベテラン
中学2年生の渡辺投手を5回からリリーフしたのは、チーム最年長46歳のベテラン・坂下翠投手。坂下投手は光る制球力はもちろん、微妙にバットの芯を外すボールを操り2回を零封。流れを掴んだままで最終回に坂原朱音投手に優勝マウンドを託した。

最終回、服部の左前安打で至学館大が反撃開始-Journal-ONE撮影
しかし、このまま終われない志学館大学は、1番・服部優良選手(2年・南陽)が左前に安打を放って出塁を果たすと四球で走者を貯めて頼れる4番・小倉麻綾選手(4年・半田東)に打順を回した。

打席前に笑顔で小倉にアドバイスを送る服部監督(至学館大)-Journal-ONE撮影
全日本大学女子野球選手権大会で本塁打も放っている強打の小倉選手。一打同点のピンチに坂原投手が投じた内角の速球は、小倉選手の身体に当たって死球となり、逆転の走者までを塁上に送った至学館大学。ここまで好投を見せた5番・安並選手のバットに全てを託す。

二度目の緊急登板で見事な火消しを演じた46歳のベテラン坂下(ダラーズ)-Journal-ONE撮影
絶体絶命のピンチとなったダラーズは、ここで一塁守備についていた坂下投手を再びマウンドへ。仲間の猛追にネクストバッターズサークルで感極まっていた安並選手だったが、その感情をボールに乗せることができずに一邪飛。最後の打者も一邪飛に打ち取った坂下投手が胴上げ投手となると、マウンドに選手たちが集まり歓喜の声を上げた。

優勝した瞬間マウンドで歓喜するダラーズナイン-Journal-ONE撮影
成長する女子軟式野球
3投手の継投で至学館大学を零封したダラーズは、2年連続6回目の栄冠を手にした。惜しくも栄冠に届かなかった至学館大学だが、部員11人で全日本大学女子野球選手権大会を初制覇した勢いをこの試合でも存分に発揮してくれた。
「社会人クラブチームと大学生の差は、少しずつ縮まってきていると思います。女子野球人気の高まりとともに、活動できるフィールド、活躍できる練習環境がもっと広がっていけば」と、エキシビションで大学生選抜を率いた早稲田大学の小花利文監督が本大会を振り返る。

大学選抜を率いた小花監督(早稲田大)-Journal-ONE撮影
多様化する野球競技のファン創り
硬式野球、軟式野球、ソフトボールに加え、アーバンスポーツのBaseball5にも注目が集まっている“野球競技”。少子化、子供たちのスポーツ離れで競技者が減っていくスポーツもあれば、斬新な話題作りやファン創りに注力して競技者を増やしているスポーツもある中で、その立ち位置はどう変化していくのか。
近年、する人、みる人、支える人、全ての人が笑顔になるグランドラインが描けているスポーツに多くの注目が集まってきている。硬式、軟式、ソフトボールなど群雄が割拠する女子野球が、選手、チームはもちろん、競技団体や統括団体が一体となり、今後どういった航路を描いていくのか楽しみだ。
