四国を元気に!高知編 物部川エリアに行こう!

四国を元気に!高知編 物部川エリアに行こう!

ガッツポーズを見せる平野美宇-(C)T.LEAGUE
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn

暑かった2025年、そんな時のスポーツ観戦は屋内に限る

茹だるような暑さの続いた2025年、私の「スポーツ観戦行きたいメーター」の針は、マイナス方向へ振り切れていた。だって、暑いんだもん。行きたくないよ。エアコンの効いた室内でビールを飲んでいる方が、良いに決まっている。

この仕事、もう少し涼しくなってから、集中して観戦すれば良いのではないか?そんな疑問符に脳内の怠惰な私の分身たちが激しく首肯し始めた矢先、また別の疑問符が沸き起こってきた。屋内スポーツ、観に行けばいいんじゃない?

実に名案である。

個人的に、スポーツ観戦といえばほぼ自動的に屋外と決まっていたので、そこに考えが至らなかった。実際、屋内のプロスポーツ観戦となると、1980年代から90年代にかけて、アメリカでNBAとNHLの試合を何度か観に行ったことはあったが(まだ髪がある頃のマイケル・ジョーダンを古いシカゴ・スタジアムで観たというのが、私のささやかな自慢である)、それ以降はほぼ皆無である。

なんだか嫌味な奴という感じがするが、事実なのだから仕方がない。薄靄に包まれた微かな記憶を辿ると、確か、日本では随分前に、まだリーグの名称が違っていた頃、バスケットボールの試合を1、2度観たきりのはずである。

思い立ったが吉日とばかり、スケジュールを確認すると、平塚で卓球のTリーグが開催されるではないか。ナイスタイミングである。卓球って、オリンピックになると、結構真剣にテレビ観戦するのだが、他の多くの五輪競技同様、私にとっては4年に1度の関係なのである。

ここはひとつ、卓球との仲を深めるのも良いのではないと思い、Tリーグの公式サイトを訪れてみると、チケットがリーズナブルであることも判明。ただ、問題は場所である。平塚、近いんですよ、拙宅から。

何しろ、我が最寄りの二宮駅からJR東海道線で平塚まで2駅。時間にして8分ほど。ビートルズの「ヘイ・ジュード」を鼻歌で全編口ずさんでいれば着いてしまうほどの距離なのである(電車内で曲後半部のリフレインをずっと口ずさむのは、ちょっとどうかとは思うが)。

このコラムのモットーが「ふらっと遠出してスポーツ観戦を楽しむ」である以上、「ヘイ・ジュード」1曲で到着してしまう距離感はまずいのではないか。そこで、そんな矛盾を解決するべく、唐突にこんな疑問符が灯る。歩いて行けば遠出になるんじゃない?

実に名案である。

二宮と平塚は国道1号線、いわゆる東海道で結ばれており、その道すがら、所々に脇道にそれる形で江戸時代の旧東海道の道筋が現存している。江戸の旅情と卓球観戦。なんとなく乙な響きのような気がする。

まあ、何にでも「江戸」という単語をつけると、例えば「江戸の遊郭と代打満塁ホームラン」、あるいは「江戸の老舗とオフサイドトラップ」のように、なんとなく乙な感じになるという噂はあるが、それはそれとして、東海道を下って卓球のプロリーグを観戦しに行くのは、なかなかの妙案なのではないか(注:電車の東海道線は東京方面が上りだが、江戸時代の東海道は京方面が上りで、江戸方面は下り)。

そうと決まれば善は急げと、ポチッとチケットを購入し(1階Aエリア自由席・大人3,000円也)、夕飯の買い物がてらスーパーの途中にあるコンビニで発券するべく戸外に一歩踏み出したところで、ふと我に返る。

暑いよ、外。

大体、酷暑を忌避するための屋内スポーツ観戦なのに、そこまで歩いて行って暑気中りにでもなったら、本末転倒である(旧東海道ルートで片道12キロほど)。江戸の旅情はまた今度だ。

東海道の宿場町、平塚を散策する

というわけで、連日のように熱中症警戒アラートが発令された昼下がり、私は車上の人となった。東海道線で少し遠出をする場合、私は最後尾かその前の車両に好んで乗るのだが、この日は行き先が2駅となりの平塚とあり、改札からホームへ降りる階段の近くの車両に乗車。

車内で「ヘイ・ジュード」は口ずさまなかったが、少し考え事をしていると、あっという間に平塚駅に到着。会場の平塚総合体育館は平塚総合公園の一角にあり、北口を出て最短距離で行くと2.3キロほどの道のりとなる。ただ、今回は折角なので、東海道五十三次で第七の宿場にあたる平塚宿の名残を辿り、少し遠回りして歩くことにした。

降り立った平塚駅前-平床大輔撮影

降り立った平塚駅前-平床大輔撮影

平塚界隈では、現在の国道1号線とJR東海道線の間に旧東海道の道筋があり、川の字を横倒しにすると、上から国道1号、旧東海道、JRという位置関係になっている。平塚のアーケード街を抜けると、じきに旧東海道に出るので、これを大磯方面へ左折する。

今では何の変哲もない通りなのだが、しばらく歩くと、道の北側に見附跡、高札場跡、そして本陣跡の石碑が点在している。あるのは石碑のみで、昔の街道の手掛かりとなりそうな建物などは存在していないのだが、そこから望む大磯の高麗山を眺めていると、江戸時代の旅人も、これと同じ景色を見たのだなという感興に浸ることはできる(歌川広重作「東海道五拾三次之内」の「平塚宿」を参照されたし)。

■記者プロフィール
平床 大輔
雑文家。1976年、東京都生まれ。コロンビア・カレッジ・シカゴ卒。神奈川県西湘在住。主にスポーツ系の記事執筆や翻訳を手掛けつつ、週2で魚を漁るパートタイム漁師。
アクセス
平塚総合体育館https://www.journal-one.net/jp/wp/wp-admin/profile.php
  • 東海道新幹線 新横浜駅 - 横浜線(9分)- 東神奈川駅 - 京浜東北線(3分)- 横浜駅 - 東海道本線(32分)∸ 東戸塚駅 - 神奈川中央交通バス(5分)- 追分バス停 - 徒歩11分
取材・文:
平床 大輔( 日本 )
この記事の関連記事
TwitterFacebookLinePinterestLinkedIn