
リングへアタックする名古屋D、小澤飛悠-永塚和志撮影
上から勝つことを求められている。それを聞くと、デニスHCをはじめとした現場、つまりチームの面々はさぞ両肩に重圧という重しを感じているのではないかと推察する。もっとも、実際に心の内でどのように感じているかは別として、デニスHCにその点について問うと「そのようなことはありません」と即座に首を横に振り、言葉を続けた。
「これは勝つことがすべてのプロフェッショナルスポーツです。勝てばいいですが、負ければ仕事を失うということに関して変わることはありませんし、私としてはできることに集中しながら、自分の制御の及ぶ範囲のことに注力するだけです」(デニスHC)
IGアリーナでの集客と地域密着の課題
名古屋ダイヤモンドドルフィンズの上層部が「勝つこと」を強調している背景には、チームが今季からあらたにIGアリーナを本拠としていることもあるだろう。名古屋市の名城公園内に作られた同アリーナの収容規模は約1万5千人と、昨季まで使っていたドルフィンズアリーナの約3倍。現状、Bリーグのチームがホームとしているものとしては最大のものだ。世界でNBAに次ぐリーグを目指す同リーグの中でも、最もNBAの試合に近い世界観を作り出せる箱の1つと言えるかもしれない。

満員となったIGアリーナでのホーム開幕戦-Journal-ONE撮影
いや、NBAのような世界観という場合、切っても切れないのは観客の多さだ。どれだけ大きく、立派なアリーナだとしても、ファンで埋め尽くされていないのであれば、「NBAのような」世界が広がっているとはいいがたい。
名古屋ダイヤモンドドルフィンズは今季の開幕節をIGアリーナで迎えた。初戦の観衆は1万375人、2戦目は1万2,965人と満員の入りとなった。ところがこの翌週の大阪エヴェッサ戦との2試合での観衆はそれぞれ、7021人、7717人と数字が大きく落ち込んだ。ドルフィンズアリーナであれば超満員となるこの数字も、IGアリーナでは約半数の入りということになってしまう。となれば、空いている多くの客席がどうしても際立ってしまう。
シーズン幕開けの開幕節は当然ながら、注目度は高い。また今回の名古屋ダイヤモンドドルフィンズの相手が昨季までアメリカでプレーをし、かつ愛知県が出身の富永啓生の所属するレバンガ北海道だったこともファンを呼び込みやすい環境を提供したものと想像できる。

今村佳太はIGアリーナの集客が大事と話す‐永瀬和志撮影
「普段のホームゲームでどれだけお客さんを集められるかは、すごく大事だと思っています」
今村はこのように話している。今村個人はリーグきっての人気球団である琉球ゴールデンキングスに、一昨シーズンまで在籍していた。地域に根ざし、いかにファンの支持を集めるかということに関して意識の向いている選手だと言える。7千人台の観衆を記録した試合についても当然、それでいいとは思っている様子ではなかった。
選手としては一義的に全力でプレーする上で勝つことこそが、できることの最大のものだ。だが今村は、それだけでは1万5千人のアリーナを埋めるのには十全ではないと述べている。
「あれだけ箱が大きい分、自分たちのプレーでお客さんを呼ぶことにプラスして、フロントスタッフの方々と連携して、どれだけ名古屋ダイヤモンドドルフィンズというチームの価値を上げられるか、見たいと思ってくれるお客さんを増やせるかを増やせるかというのが、すごく大事だと思っています」(今村)
単にプレーをするだけでなく「人の心を動かすようなプレーをもっと自分たちはしていかなきゃいけない」とも今村は語り、それは現場のチームの「責任」だともした。
スポーツではスーパースターである選手を抱えることが、集客の特効薬の1つとなる。しかし、それ以外に「これ」という明白な妙薬があるわけではない。現状ある人気球団も、その昔は多くの空席を抱える中で試合を行っていた。しかし地道な活動を重ねつつ、バスケットボールでの実力を蓄えてきたことで徐々に、年月をかけて地元に根ざし、ファンを獲得してきている。

昨年のオールスターに選ばれた齋藤拓実‐永瀬和志撮影

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