緊張と希望が交錯する舞台
いよいよ始まったのは、『エイブル トライアウト2025〜挑め、その先へ〜』。
2025年11月12日、舞台はMAZDA Zoom-Zoom スタジアム広島。プロ野球を彩った選手たちが再び光を求めて挑む場だった。そして、参加者は38名。各球団スカウトの視線が鋭く注がれた。

マツダスタジアムには多くのプロ野球ファンが詰めかけた-Journal-ONE撮影
いよいよ、シートノックの後、カウント0-0からのシート打撃で、トライアウトに参加した投手と野手が対決する形式で行われた。
加えて、今年のトライアウトは投手が27名と圧倒的に多い構成。それゆえ、投手1人につき打者3人が対戦し、次々に投手が入れ替わる目まぐるしい展開で進んでいった。
こうして、緊張感は公式戦さながら。球場にはファンの熱い視線も注がれ、選手たちは一球一打に魂を込めていた。
注目は一軍を沸かせた”あの選手たち”
今回のトライアウトで特に注目を集めたのは、ドラフト1位として期待された選手たち。そして、かつて一軍の舞台でファンを熱狂させた選手たちだ。
そのため、Journal-ONEは渡部健人から井口和朋まで、一軍経験を持つ選手を中心にその活躍を追った。

地元・広島のカープからも多くの選手が参加した-Journal-ONE撮影
まず、西武で「おかわり3世」と期待された”ドラ1”の渡部健人。次に、広島の象徴として高い打撃技術で勝利に貢献した松山竜平に注目した。
さらに、ソフトバンクと巨人で芸術的なサブマリン投法を披露した高橋礼。加えて、ヤクルト魂を背負ったセットアッパーの久保拓眞、中日からFAでソフトバンクに移籍した中継ぎの要・又吉克樹、そして日ハムとオリックスで安定感を示した井口和朋だ。
こうして、プロ野球ファンを沸かせた選手たちは単なる再起ではなく、再び一軍の舞台に立つための本気の戦いに臨んだ。
渡部健人、西武の大砲が放った衝撃弾
まず、最も注目を集めたのは西武を退団した渡部健人だ。特に、左翼スタンドへ推定120メートルの特大ホームランを放った瞬間、スタンドからどよめきが起きた。その結果、スカウト陣の評価は一気に高まった。「一発で印象を残したかった」という本人の言葉が、その覚悟を物語っていた。

第1打席に特大本塁打を放つ渡部健人(西武)-Journal-ONE撮影
さらに、渡部はサードの守備でもたびたび出場。守備機会こそなかったものの、シートノックでは無駄の無い守備を披露した。
このトライアウトで唯一の打点、得点を挙げて示した長打力は魅力的だ。「もう一度一軍で戦いたい」という強い決意に、右の長距離砲が欲しい球団が応えてくれることを期待したい。

サードの守備も無難にこなした渡部(西武)-Journal-ONE撮影
松山竜平、地元広島で魅せた職人技
さらに、広島カープの象徴だった松山竜平も存在感を示した。とりわけ、広角に打ち分けた3安打で、バットコントロールの巧みさを改めて証明した。
だからこそ、地元ファンの声援は一段と熱を帯びた。「ここで結果を出せてホッとした」というコメントには、広島ファンの熱い声援への感謝がにじみ出ていた。

地元広島で3安打放った松山(広島)-Journal-ONE撮影
また、松山は一塁守備でもベテランの存在感を見せた。若手選手への声掛けも積極的に行う姿勢は、左の代打要員だけでなく、若手へのお手本を必要とする球団が放ってはおかないだろう。

カープファンの歓声に応える松山(広島)-Journal-ONE撮影
高橋礼、芸術的サブマリンで魅了
加えて、ソフトバンクと巨人で活躍した高橋礼。低いフォームから繰り出す美しいサブマリン投法は、詰めかけたファンを魅了した。
確かに、地を這う速球と鋭い変化球は健在で、複数の球団関係者が「即戦力」と評価しただろう。
さらに、高橋は試合後に「コントロールを磨いて初球からストライクを取れたら」と課題も口に。NPB続行へ高い向上心も覗かせた。
2019年の新人王・高橋。巨人では果たせなかった一軍定着へは、先発投手不足に悩む球団からのオファーが待たれる。

高橋礼(巨人)のサブマリンは健在-Journal-ONE撮影
久保拓眞、ヤクルト魂を背負った力投
一方で、元ヤクルトの久保拓眞は古巣のユニフォームを着用し、気迫のこもった投球を披露した。
昨年、オリックスで打撃投手を務めた久保は、今季独立リーグの関西・堺で現役復帰。9勝を挙げてMVPなどに輝いてのトライアウト再挑戦だ。
138km/hの速球と変化球で打者を翻弄。内角を突く強気の投球に、スタンドから拍手が送られた。
ヤクルト時代に60試合登板を果たした、貴重な中継ぎ左腕の久保。コントロール難を克服した今、ブルペン強化を課題とする球団からの吉報も充分にありうるだろう。

堺ではなくヤクルトのユニフォームで力投した久保-Journal-ONE撮影
又吉克樹、復活の兆しを見せる投球
さらに、ソフトバンクを退団した又吉克樹は、参加投手の中で最年長だった。
2021年オフに国内FA権を行使して中日からソフトバンクに移籍し、中継ぎの柱と期待された又吉。再起を図るトライアウトのマウンドで、その実績と経験を存分に発揮した。
多彩な変化球を高い制球力を駆使して投げ込む姿は、即戦力の評価に値する内容。特に、右打者の内角を突くシュート回転のボールは、中日時代のマウンドを彷彿させた。
死球をひとつ与えたものの、その安定感は各球団のスカウトに響くものがあったはず。復活への道筋を示した納得の内容となった又吉だった。

多彩な変化球で経験値の高さを見せた又吉-Journal-ONE撮影
井口和朋、オリックスの元右腕が再挑戦
最後に、オリックスを離れた井口和朋も強気の投球を披露した。
2023年にもトライアウトに参加した井口は、結果を残してオリックスとの育成契約を勝ち取った。その後、開幕前に支配下登録を勝ち取り32試合に登板した数少ないトライアウト成功者の一人だ。
しかし、そのオリックスからも戦力外となり再びのトライアウトでの登板となった。
日ハム時代に中継ぎ陣を支えた躍動感あるフォームは健在。最速146km/hも計測した速球を連発し、まだまだ一軍のマウンドでできると、外角いっぱいの見逃し三振も奪った。

得意の速球で見逃し三振を奪った井口(オリックス)-Journal-ONE撮影
試合後のファン交流と選手の感謝
そして、試合後にはファンとの交流が待っていた。とりわけ、地元・広島の選手たちへの声援は大きく、サインや写真撮影に応じる光景も見られた。
トライアウトに参加した元広島の赤塚健利投手も、「応援ありがとうございました」と応える。笑顔で声を掛けながら、ファンとの絆を深めた。

地元のファンに囲まれた赤塚(広島)-Journal-ONE撮影
歴史的背景と今後の展望
さらに、このトライアウトは過去のトライアウトと比較しても注目度が高かった。なぜなら、近年は戦力外通告を受けた選手の再起が難しくなっている一方で、その壁を打ち破る可能性が高いからだ。
加えて、球団側も即戦力を求める傾向が強まっている。ベテラン選手の経験値が再評価されるケースも増えている。
こうして、トライアウトは単なるイベントではなく、プロ野球界の構造変化を助力する価値あるものとなった。
総括:トライアウトが示した未来
エイブルトライアウト2025は単なるイベントではない。むしろ、渡部の一撃、松山の安打、高橋の技巧、久保の魂、そして又吉と井口の執念。プロ野球の扉を再び開く瞬間を目撃したファンは、さらにプロ野球に熱狂するだろう。

エイブルトライアウト2025の会場はマツダスタジアム-Journal-ONE撮影
さらに、この挑戦は若手選手にも刺激を与え、次世代へのバトンをつなぐ役割も果たす。だからこそ、このトライアウトはプロ野球界にとって重要な意味を持つ取り組みなのだ。
加えて、ファンにとっても忘れられない一日となった。選手たちの努力と情熱が未来への希望を照らすことを願ってやまない。




















