ゴジラより大きなタワーマンションがひしめく武蔵小杉へ
もう随分と前のことだが、「シン・ゴジラ」なる映画が流行り、私の周りでも絶賛する声が後を絶たなかったので、それならばと、映画館まで足を運んだことがあった。残念ながら、映画自体、私にはあまりピンとこなかったので、その内容はほとんど忘れてしまったが、あるシーンだけは今でも鮮明に覚えている。
映画が佳境を迎えようかという場面だったか、神奈川方面から東京を目指すゴジラが武蔵小杉の辺りを通過するのだが、無敵を誇るゴジラより武蔵小杉のタワマン群の方がデカいのである。
ゴジラ、多摩川沿いのタワマンに負ける。そんなまさかの映像に、当時の私はささやかな衝撃を受けたのであったが、とある10月下旬の金曜日、私はサイズでゴジラに勝利したタワマン群のある武蔵小杉を目指すべく、車上の人となっていた。
目指す武蔵小杉駅から徒歩15分ほどの場所にある『東急ドレッセとどろきアリーナ』では、この夜、『大同生命SVリーグ 2025-26 女子』のビッグマッチが組まれていたのである。
実は、前々からバレーボールの、SVリーグが気になっていた。2024年に誕生して間もないこのリーグが、何やら楽しげなのである。私の知らないところで、ご機嫌なパーティが催されているような気分がして、どうもそわそわと心が落ち着かなかったのだが、SVリーグの試合は大体、週末の午後早い時間帯に開催されるため、週末に行なっている漁やなんかのスケジュールとバッテイングすることが多く、これまで上手い具合に都合がつかなかったのである。
しかし、この週は私にとって都合のつき易い金曜の夜に、NECレッドロケッツ川崎vs.大阪マーヴェラスという、昨季の優勝決定シリーズのリターンマッチとなる大一番が組まれており、開催地はNEC川崎の本拠地である等々力だった。
西湘の二宮に住む私にとって、県境の東端へ神奈川を横断する形になるとはいえ、一応は県内である。それに、神奈川県民の誼みでNEC川崎に肩入れして観戦すれば、生観戦の楽しさも一入である。私はSVリーグ公式サイトから、一も二もなくチケットを購入した(2Fスタンド前指定席3,500円)。ちなみに、バレーボール生観戦は、人生初の経験である。
もう1つの旅の目的は古い記憶をたどる散策
拙宅の最寄りであるJR二宮駅からJR武蔵小杉駅へは、湘南新宿ラインであれば乗り換えなしで行ける。ただし、平日の日中は湘南新宿ラインの本数が少ないため、東海道線で戸塚まで出て、そこで逗子方面からやって来る湘南新宿ラインか、総武快速線に乗り換えるのが常套手段となる。私にとって武蔵小杉といえば、JR南武線、あるいは私鉄の駅のイメージが強く、湘南新宿ラインのホームで下車するのは今回が初めてのことだった。
個人的な話で恐縮なのだが、等々力から多摩川沿いを2キロほど上流へ行ったところは、亡き父の故郷であり、私が中学に上がる頃に私の実家に父方の祖父母が同居するようになるまで、その祖父母の住まう家は河川敷から歩いて数分の場所にあった。
幼い頃の私は、敷地の入口にメタセコイアの木が立っていた、その古い木造建築の平屋がとても好きだった。今回は古い記憶を頼りに、その辺も散策するべく、試合開始時間は18:35だったのだが、少し早めの昼過ぎに家を出た。
この日の天気予報は曇りで傘マークなど一切ついていなかったが、鈍色の空はいかにも危なげだった。私は調子のいいラテン系の男と天気予報はあてにしないことにしているので、ラップトップなどの仕事道具を入れたリュックには、わりかし丈夫な折り畳み傘を忍ばせた。
今回初めて利用して分かったのだが、武蔵小杉駅で湘南新宿ラインや、横須賀・総武快速線の停車するホームは、ほとんど離れ小島である。イメージとしては、京葉線の東京駅に近い。
長い通路、数本の動く歩道(うち幾つかはスロープ付き)、さらに南武線のホームを経由した先に、いわゆる従来の駅出口がある。私は時間に余裕があったし、歩くことを苦としないので、なんということはなかったが、待ち合わせや乗り換えでこの駅を利用する場合、この点は留意しておいた方が良さそうである。
近代的なタワマンの景色から昭和レトロな街並みへ
かつてよく利用した武蔵小杉駅の出口(北口)を出てみると、ゴジラの通過したタワマンの街は、雨に煙っていた。だから、ラテン男と天気予報は油断がならないのである。私は用意した傘を広げ、とりあえず、この日の目的地のある等々力緑地へと足を向けた。
ちなみに、この傘はイベントの景品で貰ったものなのだが、プラスチック製の鞘に収められるタイプで、使用後、折り畳んで鞘に収めれば、濡れることを気にせず、すぐに鞄に入れることができるので、重宝している。
駅のすぐ目の前を通る南武沿線道路という、便宜的につけた名称がそのまま残ってしまったような名前の道に出て駅の方を振り返ってみると、駅の向こうに数棟のタワマンが見えたが、イメージよりもその数は少ない。



















