マンハッタン同様とまでは行かないまでも、もう少し林立しているかと思ったが、現地(タワマン群の麓)に来てみると、意外と高層建築物の密度は高くない。ただ、私が親に連れられて、毎週のように祖父母の家へ遊びに来ていた昭和50年代のこの辺りは、工場地帯だったはずで、それと比べれば、隔世の感はある。
駅の北側にもタワマンはあり、その2棟を横目に見ながら南武沿線道路を進むと、すぐに府中街道と交差するので、これを右折する。この辺りから、景色はタワマンの街から一昔前の住宅街へと変貌を遂げ、視界のそこかしこに懐かしい昭和の香りが漂い始める。
まずもって、この府中街道が前時代的で、それなりに交通量のある幹線道路であるらしく、ところどころセットバックが行われ、道幅が拡張されている箇所はあるのだが、まだ車道と歩道の分離の進んでいない箇所が多く見受けられる。そうした場所では、ほとんど車道の脇を歩くことになり、体の近くを大型車両が通り抜けると良い気持ちはしないのだが、その昭和っぽい風景には懐かしさを感じる。
大きく変化した等々力に驚き、懐かしい場所を訪れる
そんな昭和の街道をしばらく歩き、右へ逸れる脇道のどん突きにある神社を越えると、そこはもう等々力緑地である。最初に目に入ってくるのが、川崎フロンターレの本拠地である『等々力スタジアム』なのだが、そのメインスタンドが大幅に改修され、近代的なスタジアムと化していることに驚かされた。
ここへは、もう15年以上前にJリーグの試合を観に来たことがあり、その際はまだ昔ながらの、と言うか、有り体に言って味気ない陸上競技場だったのだが、変われば変わるものである。なんでも、スタジアムのそばにある看板によると、ゆくゆくはサッカー専用スタジアムに改修する予定なのだとか。サッカーはサッカー専用スタジアムで観戦するに越したことはない。川崎市民の皆さんには明るい未来が待っているようだ。
緑地内には、スタジアムと向かい合うようにして野球場があり、この日はそぼ降る雨のなか大学野球が開催されていた。スタジアムと野球場の間には、これまた昭和の名残を感じさせる食堂があり、細々と(かどうかは定かではなく、あるいは大繁盛しているのかもしれないが、雨降りの情景もあり、私にはそう見えた)営業している。
そして、野球場の隣には大きな芝生の広場があり、その向こうには、最終目的地である等々力アリーナが見える。開場まで時間があるし、私には自分のルーツを辿るちょっとした散策が待っているので、ここは素通りし、多摩川の河川敷方面へ進む。
途中、道の右手には大きな溜池があり、向こう岸に何人かの釣り人が糸を垂らしているのが見えた。池を覗いてみると、水は入浴剤の匂いがしてきそうな緑色をしている。この環境に配慮していないかのような水質も、何やら昭和っぽい。
その後、多摩川の土手に出た私は、そのまま堤に沿って川上へ進み、かつて父の実家のあった場所を訪れ、また等々力の緑地へと戻ってきた。河川敷の風景は、当時とあまり変わっていないように見えたが、まあ河原の景色なんて、いつの時代もこんなものかと思わなくもなかった。
もちろん、戦後間もなく建てられた木造平屋の市営住宅だった祖父母の家はなくなっていたし、敷地内にあったメタセコイアの木もなかったけれど、辺りの区画は記憶のままで、その場所には市営の集会所があった。
NECレッドロケッツ川崎のホームアリーナに『搭乗』する
さて、ここからは本題のバレーボール観戦である。
開場時間の少し前にアリーナの入口に到着すると、すでに多くの人が列を作っていた。依然として雨は降り続いていたが、煉瓦造りのエントランス付近は雨模様に映えていた。キッチンカーも9台ほど出動。
ざっと偵察したところ、ザンギ、ケバブ、牛タンといったガッツィーなものから、チャーハンやタコライスといったご飯系、そしてスイーツまで一通り揃っている。また、この日はここで購入した飲食物は場内持ち込みOKとのことで、その辺もナイスである(この辺のポリシーは、開催日によって違いがあるのかもしれない)。
なお、チーム名のレッドロケッツにちなみ、会場では入口ではなく『搭乗口』、開場時間ではなく『搭乗時間』、そして来場者ではなくクルーといった用語が使われている。ロケットの打ち上げを見にきた傍観者ではなく、ロケットに乗り込む側として、しっかり応援にコミットすべし、ということなのだろう。
完全に前者の心持ちで来場していた私は、心を入れ替え、とりあえず目についたキッチンカーで生の角ハイボール(700円)を購入し、にわかクルーとして入場ならぬ、搭乗を果たした。
ハイボール片手にスタンドへ足を踏み入れると、コートの周りではすでに両チームの選手たちがアップ、というか、大きな棒の上でゴロゴロしていた。レイドバックした牧歌的な雰囲気ではあるが、ゴロゴロとストレッチをしているのは、山田二千華や佐藤淑乃といった日本代表の面々であり、相手コートには林琴音やリセ・ファンヘッケの姿もある。さすがSVリーグ頂上決戦。顔ぶれが豪華である。




















