– なぜノーサイン野球を取り入れた?
そうですね。大学職員ではなく、一般企業に勤めるボランティア監督の私は、当時「野球出身の新入社員は指示待ち受け身型がほとんど。ラグビー、サッカー出身の新入社員は自立・開拓能動型」という言葉をよく耳にしていました。
確かに監督が選手と同じユニフォームを着て、一球一球サインを出す野球と、他の競技スポーツの違いに改めて考えさせられました。野球も、その特徴と競技特性、サインで動く功罪を考えていけば、ノーサインでやれないことはないなと気づきました。

和歌山大学グラウンドでの練習風景-JournalーONE撮影
その後、東亜大学、高川学園の中野先生の野球を基盤に、私立大学ではない国立大学の(スポーツ推薦や特待生制度のない)制限も加味しながら、課外(部)活動の中で強化していく和大スタイルで現在に至っています。
その中で原理原則、科学、人間学、心理学、リーダーシップ論、アンガーマネジメントなど、ビジネス業界の組織づくりの応用は野球界でも珍しい形かも知れません。イメージ化(鮮明化・明確化)を促進するために、様々なことを言語化していることも特徴です。
野球を通じて社会に役立つ人財を輩出していく。そのためにも、ノーサイン野球を進めてきてよかったと思っています。
限られた環境で強豪校を倒すコツ
– 国立大学が強豪・私立大学に勝つには何が必要か?
まずは日々の練習内容の見直しですね。これはノーサイン野球にシフトチェンジする前から感じていたことです。
野球というスポーツの練習スタイル(メニューと内容)には、無駄なことや無駄な時間が多すぎます。それをもっと理に適った、目標直結型のメニュー、行動スタイルに変えたいという思いがありました。
そこで前述の4名とともに練習内容を目標直結型の実戦スタイル中心に変えました。複数箇所の打撃練習や個人のノックなどは自主練習として扱い、全員が揃う練習の殆どを試合形式としました。それと同時に和大ドリルに象徴される部員全員での基礎練習の反復、徹底で取り組む量を増やし、個々の能力アップを目指しました。

昨年7月の練習試合でのベンチの様子-Journal-ONE撮影
– 技術習得の他に工夫したポイントは?
あとはオープン戦の組み方ですね。2017年春、2018年秋と2年続けてリーグ優勝することができました。これにより、これまで対戦していただけないかった大学さんや、Bチームであれば受けていただけた大学さんが、主戦メンバーで試合を組んでいただけるようになりました。
加えて、その対戦で勝利、あるいは競った戦いができると、翌年はもちろん、同じ年にも春、夏、秋と3度も組んでもらえるようになりました。その結果、高いレベルで目標が設定でき、普段の練習も考え方も格段に飛躍しました。
その積み重ねが、自分たちもやればできるという「自己効力感」の高いチームに変わっていきました。今では全国に広がっていますが、とくに関西の他連盟の強豪私立大学の方々には大変お世話になりました。本当に、感謝しかありません。
和大野球に欠かせない“自律型選手”の育成
– 監督が求める“自律型選手”とは?
自律とは、「他者からの支配や制約を受けず、自分自身で立てた規範や価値観に従って判断し行動をすること」と辞書には書かれています。しかし、この言葉の表面だけを自己都合で解釈し組織の中で行動されてしまうと、まとまるものもまとまらなくなります。

選手には求める自立型選手を目指してほしいとのこと-Journal-ONE撮影
そうなると、自分勝手なエゴ人間の集まりになってしまいます。共に立てた目標、目的を理解し、行動指針(ルール)のもとで、根拠ある行動をとることが大前提です。
それを基に“自律型選手”を定義すると、プレーの中での三断力(判断力・決断力・断行力)が高い選手ということになります。
– “三断力”を養うためにすべきことは?
ノーサイン野球では、特にこの能力が求められます。三断力は日々の練習の中で、高い集中力のもと、広い視野を持って取り組むことで養成されます。その上で、「センス(Sense)」のある学生が集まっているチームにしたいと思っています。
「センス(Sense)」とは、生まれつき備わっている感覚という意味ではありません。それは、「知識の蓄積」×「ジャッジメントの繰り返し」で身につくものだと学生たちには伝えています。野球というスポーツがもつ特性、そこで起こるプレーの知識と背景、過去の関連プレーの実例などの知識が基となる。それに対して判断し、決断して、実際にアクションを起こす。そして生まれたその結果にフォーカスして検証する。




















