鑑賞者は作品の外側に立つのではなく、境界なく内部に入り込み、変化を生み出す主体になる。僕たちにとってデジタルは目的ではありません。
鑑賞者と作品の境界を消し、身体ごと没入させるための現代の“新しい筆”なのです。

デジタルは現代の“新しい筆”と話す工藤さん‐Journal-ONE撮影
「光の点」が三次元で浮遊する仕組み
—— 「The Infinite Crystal Universe|無限は、目ではなく認識で起こる」では、“光の点”が三次元で浮遊しているように見えました。表現の発想を教えてください。
工藤氏:発想の根はスーラの点描にあります。二次元の点描をデジタルで三次元化し、さらに人の動きを加える。そうすることで、鑑賞者は作品の外側の観察者ではなく、内部の一部として働くようになります。
無数の光の点は、空間の量感を視覚の手前で立ち上げます。認識が空間を先導するかのような体験が生まれ、他者の存在や身体の移動がその場の様相をリアルタイムに書き換えていくのです。
物質の制約を一度ほどき、光、時間、身体を組成要素として再配列している、と言える作品です。

チームラボ《The Infinite Crystal Universe》©チームラボ
【結論:Journal-ONE整理】“デジタルの本質”は技術ではなく「境界を消す筆」
デジタルの本質は技術の新奇性ではない。鑑賞者と作品の境界を消すための筆として機能する点にある。光と空間は固定された対象ではなく、身体と他者が流入することで絶えず再編される“場”へ移行する。
チームラボプラネッツは、アートを「眺めるもの」から「関与し、変化させるもの」へと再定義している。
人間がいることで世界はより美しくなる―他者の肯定と四十六億年の連続性
人間は自然を損なう存在ではなく、美を増幅させる存在
—— チームラボプラネッツでは、鑑賞者が作品に介在することが前提になっています。なぜ人間を作品の内部へ招き入れるのでしょうか。
工藤氏:自然は美しい。そして、その自然を脅かすものとして人間が存在しているという考えもあります。しかし僕は、人間と自然を対立項として捉えてはいません。
例えば、人間が自然の循環の中で育ててきた棚田の風景。それは、人工物でありながら自然と共生し、もともとの美しさをより豊かに引き上げています。
チームラボプラネッツも同じで、アートに人間が入り込む。これにより、世界はより美しくなると考えています。
他者が作品を変化させる―複雑さと美しさを生む“触媒”
—— 自分以外の他者がいることで、作品がより魅力的に変化していると感じました。
工藤氏:その通りです。他者の存在が加わることで、作品は一人では生み出せない複雑で新しい美を立ち上げます。
他者を「邪魔」とみなす代わりに、「他者がいることで世界はより美しく変わる」と肯定できたとき、世界の見え方は劇的に更新されるのです。
僕はこの「他者の肯定」こそが、これからの社会を少しだけ前向きにする力だと信じています。

「他者の肯定」こそが、これからの社会を少しだけ前向きにする力と話す-Journal-ONE撮影
絶滅した生物の世界に入る体験―時間を超えて連続性を取り戻す
—— 「つかまえて集める絶滅の森(Catching and Collecting Extinct Forest)」では、絶滅した生き物が棲む世界に入り込みます。時空を超える体験ができるのもデジタルならではですね。
工藤氏:僕たちの命は四十六億年前から一度も途切れずに続く連続性の中にあります。
しかし日常の忙しさの中で、その感覚はたやすく失われてしまいます。
絶滅した生き物と同じ空間に入り込む体験。このことで、四十六億年続く命の連続性の中に自分が居る。そういった感覚を身体で取り戻す契機になればうれしいです。
世界の美しさと地続きであるという実感を持ち帰る
—— チームラボプラネッツで唯一無二の体験を終えた皆さんに、日常へ持ち帰ってほしいものは何でしょうか。
工藤氏:この世界は思った以上に絶望に満ちています。しかし、それと同じくらい、圧倒的に美しいものも確かに存在します。
チームラボプラネッツで感じた水の感触や光の広がり。それを、日常のふとした瞬間に思い出してほしいです。
「自分はこの美しい世界と地続きなのだ」と気づいてほしい。その気づきが、絶望の中でも前向きに生きるための糧になるではないでしょうか。

















