大谷翔平がバンテリンドーム ナゴヤで圧倒的な存在感を示した。それは、「試合に出られなくとも主役になれる」というスーパースターの矜持だった。
大谷は、MLBの規定により中日ドラゴンズとの壮行試合には出場できない。しかし、その一挙手一投足が3万6千人余りのファンを魅了した。スタジアムを熱狂の渦に巻き込んだのだ。

大谷翔平がフリー打撃で圧巻の11発を披露-Journal-ONE撮影
名古屋に集った熱――“本番モード”を告げる壮行試合
2月27日、名古屋で行われた侍ジャパンの壮行試合。
この一戦は、単なる強化試合ではなく、2026年ワールド・ベースボール・クラシックへ向けた“本番モード突入”を告げる舞台だった。
試合開始の3時間以上前から、バンテリンドーム ナゴヤ周辺には多くのファンが集結。代表ユニフォームに身を包んだ家族連れや、仕事帰りのスーツ姿のファン、遠方から駆けつけた人々が、開門を待ちわびる光景が広がっていた。

開場前から賑わうバンテリンドームナゴヤ‐Journal-ONE撮影
宮崎キャンプで積み上げた確かな準備
その熱気の背景には、宮崎キャンプで積み上げられた確かな準備がある。
国内組を中心に行われた合宿は、基礎と実戦を高い強度で反復する濃密な時間となった。キャンプ終盤にはMLB組の菅野智之(コロラド・ロッキーズ)と菊池雄星(ロサンゼルス・エンゼルス)が合流。
さらに、アドバイザーとしてフル帯同したダルビッシュ有(サンディエゴ・パドレス)が、若手投手陣に世界基準のエッセンスを惜しみなく注ぎ込んだ。

大勢にアドバイスするダルビッシュ-Journal-ONE撮影
MLB組続々合流、大谷翔平も名古屋へ
名古屋入りを前に、侍ジャパンは一段階ギアを上げる。
吉田正尚(ボストン・レッドソックス)、鈴木誠也(シカゴ・カブス)がチャーター機で合流し、打線の厚みとベンチの空気は一変した。
そして、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)も別便で帰国。すると休む間もなく、前日の練習に参加した。長距離移動と時差ボケが残る中でも、終始笑顔でチームメイトと交流を重ねていた。
もっとも、MLBの規定により、大谷を含むメジャーリーガーたちは中日との連戦に出場することができない。せっかく名古屋まで足を運び、世界のトップ選手のプレーを試合で見たいと願っていたファンにとっては、残念な事実だったに違いない。

ベンチに現れただけで歓声――主役はそこにいた
それでも、この日のバンテリンドームを包んだ空気は、失望とは無縁だった。
まず、ベンチから姿を現した瞬間。何気ない動作でグラウンドに出てきただけの大谷に、スタンドからは割れんばかりの歓声が上がる。プレーをするわけでもない“登場”だけで、場の空気を支配する存在。それが大谷翔平だった。
外野へと移動した大谷は、フォームを確認するように、極めて丁寧なキャッチボールを開始する。ボールの回転、腕の振り、体重移動。
その一つひとつを確かめるような所作に注目が集まる。そして、スタンドは次第にざわめきからどよめきへと変わっていった。世界の最前線で戦う選手の「準備」を目の前で見られる。それだけで、ファンは十分すぎるほど満たされていた。
世界の大谷からの贈り物――粋なボール投げ入れ
キャッチボールを終えた直後、思いがけない光景が生まれる。
大谷は突然、外野スタンドに向き直ると、手にしていたボールをそのまま観客席へ投げ入れた。予期せぬ“世界の大谷からのギフト”に、ボールが飛び込んだスタンドの一角は歓声に包まれ、ファンは我を忘れてボールを追いかける。その様子を見守っていた周囲の観客からは、大谷の粋な計らいに惜しみない拍手が送られた。
28スイング11発――打撃練習で別次元を証明
だが、大谷が名古屋のファンを魅了したのは、ここで終わらない。
打撃練習終盤、バットを手にケージへと向かうと、スタンドはもちろん、グラウンドにいる侍ジャパン、さらには対戦相手の中日ドラゴンズの選手たちまでもがざわつき始める。
すでに吉田正尚、鈴木誠也が、MLB選手らしい鋭い打球を次々と放っていた直後。その流れの中で、大谷が打席に入った。
結果は、圧巻だった。
28スイング中、11本のアーチ。
打球音、初速、そして飛距離。そのすべてが、それまでの空気を塗り替える。スタジアムには大きなどよめきと歓声が交錯し、思わず声を失うファンの姿も見られた。




















