Wリーグのプレーオフは、しばしばスコア以上に「思想」がぶつかる舞台となる。デンソーアイリスと富士通レッドウェーブのセミファイナルは、まさにその典型だ。速さと判断力で主導権を握ろうとする富士通。我慢と強度で相手の武器を削ぎ落とすデンソー。
両者は真逆のアプローチで、ここまで1勝1敗。Wリーグ セミファイナルの決着は3月30日の第3戦に持ち越された。
富士通が示した「プレーオフの勝ち方」 -第1戦
Wリーグ セミファイナル第1戦(3月28日)は、富士通が56―48で先勝した。この試合は、「うまく勝った」という表現が最もふさわしい。
立ち上がりから10―0と一気に流れを引き寄せた背景には、#10 町田瑠唯の存在がある。派手な得点はなくとも、テンポと間合いを支配し、デンソーが守りたい形を許さなかった。
インサイドでは#22 ジョシュアンフォンス・エブリンが体を張り、外では#52 宮澤夕貴が適切なタイミングで3ポイントを沈める。富士通は「誰かが突出する」のではなく、「全員で正解を選び続ける」バスケットを遂行した。
終盤、デンソーがディフェンス強度を上げて追い上げる場面もあった。しかし、そこで試合を決めたのが#7 林咲希の2本の3ポイントだった。流れが揺れた瞬間に沈め切る勝負強さ。富士通が長年培ってきた経験値が、確かな形でスコアに表れた一戦だった。

粘るデンソーを突き放した林咲希-Journal-ONE撮影
髙田真希という「答え」-第2戦
翌29日、Wリーグ セミファイナル第2戦は、一転してデンソーの物語となった。
56―50。エース#8 髙田真希が24得点を挙げ、シリーズを振り出しに戻した。
第1戦でわずか1得点に終わっていた髙田は、この日、3ポイント4本すべて成功。シュートを打ち続ける覚悟と、エースとしての矜持が、数字以上に強烈な印象を残した。
デンソーは第2クォーターを19―10と圧倒し、試合をスローペースに引き戻すことに成功。#4 川井麻衣の冷静なゲームコントロール、#21 笠置晴菜の献身的なディフェンスも、富士通のリズムを寸断した。
富士通は#8 ジョシュアンフォンス・テミトペがインサイドで奮闘したが、3ポイント成功率15.8%。持ち味である外角の爆発力を封じられたことが、終盤の苦しさにつながった。
エースが応え、チームが耐え切った。デンソーが「らしさ」を取り戻した一戦だった。

第2戦で爆発したエース・髙田真希-Journal-ONE撮影
第3戦の勝敗を分けるのは「勇気ある選択」
Wリーグ セミファイナル最終戦で問われるのは、戦術以上に「選択の質」だ。
富士通は、再びテンポを握れるか。町田瑠唯が主導権を取り戻し、宮澤夕貴、林咲希らが迷いなく打てるかどうか。外角が息を吹き返せば、流れは一気に富士通へ傾く。
一方のデンソーは、髙田真希に誰がどこまで寄るのか。そのとき、他の選手が躊躇なく打ち切れるか。ディフェンス強度を40分間維持できるか。勝ち筋は明確だが、要求される集中力は極めて高い。
ロースコア、接戦、終盤勝負。このシリーズが描いてきた流れは、第3戦ですべてを象徴する形になるだろう。
スカイホール豊田で行われる40分間は、Wリーグ「最高峰の現在地」を映し出す。

ゴール下での激しい攻防-Journal-ONE撮影
「我慢」の質が問われた40分間―紙一重の結末
第1クォーター|デンソーが示した「準備の差」
試合は第1クォーターから、はっきりとした色を帯びていた。
立ち上がり、デンソーはまるで待っていたかのように3ポイントを次々と沈めた。そして、開始早々11―4と主導権を握る。ボールが外に出れば迷いなく打つ。その判断の速さと、ためらいのなさが、チーム全体に共有されていた。
富士通も#52宮澤夕貴がジャンプシュートや外角で応戦するが、シュートが決まっても主導権は奪えない。デンソーはオフェンス以上に、ディフェンスで優位性を示していた。ペイントエリアでは体を張り、簡単に中を割らせない。結果として富士通はリバウンドを奪い切れず、セカンドチャンスを作れない時間が続く。
デンソーにとって象徴的だったのが、このクォーター終了間際の一本だった。#88赤穂ひまわりが、ブザーと同時に放ったショットがリングへ吸い込まれる。スコアは21―14。数字以上に、「この10分間は自分たちのものだ」と示す一撃だった。





















