午前中の注目組が、数々のバーディで大勢のギャラリーを沸かせた煌びやかな光景も、ギャラリーのほとんどいない午後遅い時間の予選ラウンドでベテラン選手が苦闘する光景も、共にプロゴルフの真実であり、どちらも見応えのある価値の高い体験だったが、特に私は後者を目撃できたことに、清々しい感動を覚えた。プロフェッショナルの神髄を垣間見た気がした。
ラウンドを終え、9番ホールを後にする木戸選手に向かって、「グッド・ラウンド」と心から思っていた言葉をかけると、彼女はにこやかに「ありがとうございます」と応え、颯爽とした足取りでクラブハウスへと吸い込まれて行った。

最終組がホールアウトした戸塚カントリー倶楽部のコース-平床大輔撮影
後日談:木戸愛選手の結果
その後、木戸愛選手は第3ラウンドを終え、通算7アンダーまでスコアを伸ばして首位タイに浮上すると、最終ラウンドでは、1打を追う最終18番ホールで起死回生の長いバーディパットを決め、通算9アンダーとして首位に並び、勝負を永峰咲希選手とのプレーオフに持ち込んだ。しかし、プレーオフでは3ホール目で惜しくも敗れ、2位で大会を後に。
振り返ってみると、結果的に私が観戦した第2ラウンドの後半は、この大会期間中、彼女がバーディを奪えなかった唯一の9ホールだった。あくまで結果論ではあるけれど、優勝争いへ繋がる「グラインド」を見られたのは、貴重な体験であった。
ただ、それだけに、もし今後、どこかの大会で彼女がバーディを奪う瞬間を目撃できたなら、私は誰よりも大きな声で「ナイス・バーディ!」とシャウトすることだろう。
