第107回・夏の甲子園が開幕
「今年も夏がやって来た!」。第107回全国高等学校野球選手権大会(以下、夏の甲子園)は8月5日、高校球児の聖地“阪神甲子園球場”で開幕した。
既に4月から、最高気温30℃以上を観測する“真夏日”が日本各地で続いている中での8月。「今さら“夏が来た”などと…」と突っ込まれそうだが、やはり夏の甲子園が開幕すると「夏が来たなぁ」という気分になるのが野球好きの性ではないだろうか。

創成館(長崎)と小松大谷(石川)の開幕試合-Journal-ONE撮影
史上初の夕方開催となった今夏の開会式。選手宣誓の冒頭で「自然環境や社会の環境が変化していく中で、高校野球の在り方も問われています」と、智弁和歌山の山田希翔主将(3年)が発した言葉の通り、全ての球児共通の強敵である『熱中症』にどう立ち向かっていくかに注目が集まった。
Journal-ONE編集部は、今夏の甲子園も『熱中症対策』にスポットを当てながら球児、応援団、観客の様子をレポート。夏の屋外スポーツ全てに共通する課題解決のアイデアを紹介していく。

史上初午後4時開始となった夏の甲子園開会式-Journal-ONE撮影
開会式は史上初の夕方開催
夕方の4時から行われた開会式は史上初。その入場行進を盛り上げる関西吹奏楽連盟大阪府高等学校選抜吹奏楽団112名の高校生が控える一塁側ベンチ前、そこは既に銀傘が大きく日陰を作っていた。
実は、昨年の開会式までは三塁側ベンチ前が定位置であった吹奏楽団が、日影ができる一塁側に移動した理由も熱中症対策のひとつだそうだ。

吹奏楽団の皆さんも日陰で力強い音色を披露した-Journal-ONE撮影
いよいよ開会が宣言されると、吹奏楽団の素晴らしい演奏に乗って各地区を勝ち抜いた49代表校の選手たちが胸を張って見事な行進を見せてくれた。昨夏、初優勝を飾った京都国際の倉橋翔主将(3年)が持つ深紅の大優勝旗を先頭に、北北海道代表の旭川志峯から順に、沖縄代表の沖縄尚学へと続く代表校の行進。
どの高校にも惜しみない拍手が送られるが、甲子園優勝校や出場常連校の校名がアナウンスされると、さらに大きな拍手が沸き起こっているように感じた。また初出場校を歓迎するかのような大きな拍手は、心なしか選手たちの腕の振りをより元気にしているように感じられた。

夏優勝2回の名門・横浜にはひときわ大きな拍手が送られた-Journal-ONE撮影
入場する高校が増えるにつれて、西日の差していた三塁側バックネット裏も銀傘の恩恵を受け日陰となる。実はこの銀傘、少しずつその面積を広げていることをご存じだろうか。2024年11月から2028年3月にかけ、阪神甲子園球場を運営する阪神電気鉄道株式会社が計画している“銀傘拡張構想”だ。
「グラウンドでプレーする選手と一体となってアルプススタンドで熱戦を繰り広げる学校応援団の観戦環境を改善することにより、友情、連帯そしてフェアプレーの精神を旨とする高校野球の聖地として、阪神甲子園球場が進化を続けることで、高校野球文化の継承を図る」という、阪神甲子園球場が掲げる“歴史と伝統の継承”。3年後の第110回大会では、応援団の応援環境も良い意味で変わっていく夏の甲子園の風景になるだろう。

段階的に拡張される予定の銀傘-Journal-ONE撮影
開幕戦に臨む両校にも配慮された行進
最南端の沖縄尚学の行進が終わっても、まだ代表校の行進が続く。残る2校は、開会式に続き開幕戦を戦う石川県代表の小松大谷、長崎県代表の創成館だ。大事な一戦を前に、できる限りの負担を減らそうとする配慮が見て取れる。
また、関係者の挨拶もかなり短く終わらせているように感じた。進行の途中で取られた給水タイムでは、「観客の皆さまも給水を」と観る人への心遣いも見られた様変わりの開会式。閉会後は4チームが一斉に退場するなどの時間短縮を図り。小松大谷と創成館はそのままそれぞれのベンチへと下がるなど、効率的な運営が“変わった夏の甲子園”を印象付ける史上初の開会式となった。