たしかに、大会前の発表で午前の部は午後1時45分以降、午後の部は同10時以降には原則的に新たなイニングに入らず継続試合として翌日以降に行うとされていた。宮崎商・驚異の粘りが、もうひとつの“史上初・朝夕2部制での継続試合”を実現させるところだったのだ。
9回裏、開星は走者を出したものの勝ち越し点を奪えず延長タイブレークに突入。この10回表裏で決着がつかなければ継続試合になることは間違いない。

10回の宮崎商は無得点に終わる-Journal-ONE撮影
無死一、二塁から始まる10回表、宮崎商は永友が走者を送ることができず三振に倒れると、続く吉田圭吾(3年)の強いゴロはショート正面を突いた。これを6-4-3の併殺に仕留めた開星内野陣、全力疾走でベンチに戻ると雄叫びを上げてハイタッチ。
勢い付く開星は、9番・小畑が三塁前に絶妙の犠打を転がすと、この打球を素早くさばき三塁へ送球。対タイミング的にはアウトだったが、この送球が悪送球となり無死満塁。打席には担架で運ばれた小村に代わり守備から出場していた前田翔太(3年)が入った。

開星・小畑が絶妙な犠打を三塁前へ転がした-Journal-ONE撮影
サインを覗きこみ、渾身のボールを投げ込む宮崎商の日高有。追い込まれた前田だったが、バットを寝かせてミートに徹した打球はセンターへの大きなフライとなった。センター・日高佳、懸命のバックホームもわずかに及ばず開星が規定時間ギリギリでサヨナラ勝ちをもぎ取った。

決勝の犠飛を放つ開星・前田-Journal-ONE撮影
解決に道半ばも着実に進む熱中症対策
今夏初の朝夕2部制を取材し、気づかされたことが多くあった。
先ず、午前中とはいえ夏の甲子園を油断してはいけないということだ。朝8時からの試合、しかも甲子園慣れしているはずの名門校の選手が倒れて退場したことを考えると、観客も応援団も万全に万全を重ねた熱中症対策をして阪神甲子園球場に足を運んで欲しい。

白熱した試合の観戦は万全な熱中症対策が必須-Journal-ONE撮影
次に、すでに新チームとなり翌年の甲子園を目指して練習を重ねている全国の高校球児の皆さんも、甲子園常連校でも熱中症になるという事実を承知して欲しい。各県の高校野球連盟で効果的な対策事例を共有する、勉強会を開催するなど地域一体となって来夏に備えることも一案だ。
最後に、今年の夏の甲子園はまだ始まったばかり。これから甲子園で戦う選手の皆さん、応援団の皆さんには一世一代の“晴れの舞台”で悔いなくパフォーマンスが出せるよう、今からでもこまめに水分を摂るなど確実にできることを遂行して欲しい。

熱中症を克服してこそ爽やかな笑顔が生まれる-Journal-ONE撮影
朝夕2部制により、乱打戦や度重なるタイブレークで継続試合になる可能性は高いかもしれない。「白熱した試合が途切れることで、全く違う試合内容や結果になれば球児が気の毒」という意見も的を得ている。
しかし、先ずは命を落とす危険もある熱中症をどう克服するかが最優先。まだまだ議論や工夫が必要な熱中症対策だが、日本最大級のスポーツの祭典・高校野球の甲子園大会をきっかけに、様々なスポーツに熱中対策のメソッドが広がり、定着することを期待したい。
