異例の長期遠征で青森入り
「かれこれ2週間、遠征を続けています」と開口一番話すのは、日本最高峰の女子ソフトボールリーグ“JD.LEAGUE(JDリーグ)”西地区に所属する“伊予銀行ヴェールズ”の石村寛監督。
去る7月、韓国の鎮川ナショナルトレーニングセンターで行った強化合宿取材でお世話になってから約2ヶ月ぶり。皇后盃全日本総合女子ソフトボール選手権大会(以下、全日本総合選手権)に臨む伊予銀行を取材するため、青森県弘前市の“はるか夢球場”にやってきたJournal-ONE編集部との会話の冒頭だった。
石村監督を始めとする伊予銀行は、9月12日に北海道札幌市で行われたJDリーグ第11節に参戦。その後、北海道から青森県に移動し、全日本総合選手権に出場するという異例の長期遠征となっているとのことだ。
それでも、リーグ戦中盤から徐々に調子を上げてきた伊予銀行は、札幌ラウンドでも髙田明日花の人生初となるサヨナラ本塁打が飛び出すなど打線が奮起して勝ち越した。好調を維持しての青森入りが、選手たちに疲れを感じさせないのだろうか。しかし、そんな元気な伊予銀行を率いる石村監督は、「雨でサスペンデッドとなり、連戦となるのは厳しいですね」と、大会3日目でようやく快晴となった空を見上げて話してくれた。

全日本総合3日目で開星となったはるか夢球場から臨む岩木山-Journal-ONE撮影
降雨再試合のJDリーグ対決
降雨再試合となったのは、西地区4位(11勝12敗)の伊予銀行と東地区5位(11勝11敗)の“デンソーブライトペガサス”という、JDリーグで互いに浮上のきっかけが欲しいチーム同士の対決。ベスト8の椅子をかけた仕切り直しは、4回表の伊予銀行の攻撃から始まった。
サスペンデッドゲームに臨む試合前に石村監督は、「とにかく最初、自分たちの攻撃で流れを掴みたい」と話していた。デンソー先発のアラナ・バウターをどう攻略するか注目だ。
その伊予銀行は、2死から4番・本間紀帆が中前安打で出塁するも無得点。0-0の均衡を破らせまいと、伊予銀行も先発・庄司奈々が昨年まで同僚だった川口茉奈に中前安打を許すも、テンポの良い投球で本塁を踏ませない。

伊予銀行の先発・庄司はテンポ良い投球でデンソー打線を抑えた-Journal-ONE撮影
勝利に執念を燃やす伊予銀行は、得意の堅実な守備力で庄司を援護。5回裏無死2塁と先制のピンチで、二遊間に高いバウンドが転がる。一塁送球が間に合わないと判断したショート・辻井美波が本塁を狙った三塁走者を見て本塁に好返球。結果。このプレーで挟殺に仕留めた伊予銀行がピンチを回避した。
すると6回表、ようやく1番・瀧川愛海が先頭打者として四球を選ぶと、岩村監督は迷わず代走に俊足・芦田歩実を送り出す。一塁走者としてデンソー野手陣にプレッシャーを与えた芦田は、捕手からの牽制がライトファールゾーンに転がると、快足を飛ばして一気に三塁へ。今度は伊予銀行が先制のチャンスを作る。

石村監督の指示を聞く好走塁の芦田-Journal-ONE撮影
無死3塁、仕掛けたい1-1からのカウントで石村監督の指示は強打。この期待に応えた2番・庄村瑠衣が「甘い球を逃さず打とうと狙っていた」と、一、二塁間を鋭く破る適時打を放ちついに伊予銀行が先制した。

値千金の適時打を放つ伊予銀行の庄村-Journal-ONE撮影
7回裏、庄司は四球と安打で無死一、二塁とピンチを背負うも。後続を打たせて取る投球で無失点。伊予銀行がベスト8に進出した。
ベスト4をかけて好調チームが激突
1試合を挟んでのダブルヘッダーとなった準々決勝の相手は、東地区6位(9勝14敗)の“NECプラットフォームズレッドファルコンズ”。先ほど勝利したデンソーの下位に位置するNECだが、上位チーム相手に金星を挙げるなど好調をキープしているチームだ。
NECの先発・山本すみれの立ち上がりを攻めたい伊予銀行は、初回2死から一、二塁と得点圏に走者を送るもあと一本が出ず無得点。
するとその裏、伊予銀行の先発・黒木美紀が、2死三塁から4番の長井美侑にセンター頭上を破る二塁打を打たれて先制点を献上してしまう。続く2回も先頭打者に四球を与えた黒木は、7番・原日菜海にセンターオーバーの2点本塁打を浴びる。