世界4位、テイラー・フリッツ登場
スタンドに入ると既に第2セットに入っており、フリッツがゲームカウント4-6で第1セットを落としていた。第2セットも互角の展開となっており、日本贔屓と思われるフリッツ(アニメ好きのこの人は毎年この大会に出るため来日している)のファンの方々は、気が気ではないだろう。
なお、私の座ったA席はスタンド最後方なので、コート面からは結構離れているが、コート上にいるフリッツ(196cm)も、対戦相手のガブリエル・ジャロ(203cm)も、かなり大柄なので、それなりに迫力は感じられる。
それにしても、この両者のサーブの速いこと。どちらも時速220キロ越えのサーブを連発しており、ここまで強烈だと逆に興醒めしてしまいそうなものだが、世界トップクラスの豪打には見応えがあり、乾いた打球音は爽快である。ラリーにしても、力強いフラットなストロークを打ち合う展開となることが多く、やや単調とも言えるが、小細工を弄さないシンプルな力勝負なので、観ていて愉快な気分になる。
結局、試合は劣勢を盛り返したフリッツが2セットを連取して勝利。ただ、フリッツは大会序盤だからか、まだ本調子ではなさそうだ。好物は”一蘭”のラーメンとのことだが、今夜は和牛でも食べて滋養をチャージしておくれ。
世界トップのプレーとテニスのワンダーランドで充実した1日
ここで、昼の部は終了。お目当てのアルカラスの試合開始までしばらく時間が空いたので、腹ごしらえを兼ね、近隣のショッピングモール”有明ガーデン”へ。キッチンカーも捨て難いチョイスではあったが、『とあるテニス選手推し』から、こちらのモールには大手タコス店が出店しているとの情報を得ていたので、タコスとブリトーをあてにビールで喉を潤すことにした。
このショッピングモールは、有り体に言って、どこにでもありそうな今様の施設ながら、フードコートには屋上テラスがあり、そこにある大型モニターでセンターコートの試合を流しているので、忙しなくスマホで試合の途中経過をチェックせずとも、悠々とワインの入ったグラスなんぞを傾けながら、センターコートへ帰るタイミングを図ることができる。ここもワンダーランドの飛び地と認定してよろしかろう。

肉肉しいキッチンカーが並ぶ‐平床大輔撮影
夜の部のチケットは完売
テックスメックスとビールとワインで、ささやかな遅めの午餐を楽しんだ私は、18時頃、世界ナンバーワンを拝見するべく、再びセンターコートへ赴いた。
スタンドに入ると、丁度前の試合が終わったところで、コート上ではMCのおじさんが何やらしきりに会場を盛り上げようと頑張っている。ん?この声、聞き覚えあるぞ。この人、ひょっとするとこの間、平塚で見た卓球の人じゃないか?ラケット競技専門MCなんていう職業があったりするのだろうか(後日調べたところ、同一人物でした)。
MCの人によると、夜の部のチケットはソールドアウトとのことだが、試合開始時点では8割から9割ほどの入り。いくらするのか見当もつかない前方の高額チケットのエリアは、まだ埋まっていない席が散見される。ちなみに、私のS席は、A席よりは若干前方ながら、中間よりは後方の列だった。
すぐ前の列では、欧州系と思われる外国からの男女8人が一角を占めており、よく海外でスポーツ観戦をする際に漂う、香水と体臭の入り混じった香りが、私には懐かしく感じられた。こうしたエッセンスも視覚と嗅覚によりATPツアーの臨場感を演出しており、往復3000円ほどの旅費で海外へ行ってテニス観戦した気分が味わえるのだから安上がりと言えよう。

夜の部は満席-平床大輔撮影
圧巻のアルカラスのプレーで沸く
試合では、アルカラスが圧巻のプレーを披露。第1セット第5ゲームでアルカラスが足首を負傷し、長いメディカルタイムに入った時は、流石に会場に悲壮感が漂ったが、治療後、無事コートに復帰すると、足元を気にしながらも、しなやかなプレーで観客を沸かせた。
特に、スライスを交えながら戦略的に組み立てるラリーは優美かつパワフルで、実にエレガント。終わってみれば、対戦相手のセバスティアン・バエスを寄せ付けることなくストレートで勝利を飾った。
この夜、有明の観客は世界ナンバーワンの繰り出す数々のスーパープレーに、どよめき、感嘆し、魅了された。斯くいう私もその一人だが、同時に、前列の白人女性がグビグビと缶ビールを煽る気っ風の良い呑みっぷりにも魅了されたのであった。



















