バスケットボール日本代表、台湾戦で連勝し不安を払拭
バスケットボール男子日本代表が好発進。
頭上に覆い始めたどんよりとした灰色の雲の色は、とりあえずそれ以上に濃くはならずに済んだ。
バスケットボールの男子日本代表チームが11月下旬より、2027年にカタールで開催されるFIBAワールドカップへ向けてのアジア予選の最初の2試合を戦った。

2戦目の会場 台湾の新北市新荘体育館-永塚和志撮影
台湾との連勝で自信を回復
相手はいずれも台湾。日本はホームとアウェイでそれぞれ1試合ずつ彼らと対峙し、連勝。8月のアジアカップではベスト8にすら到達できなかった。
これにより、世界の上位を追いかけるどころかワールドカップへの出場すら危ういという声も聞こえて来ていた。そのような中で、そうした憂慮をひとまずは抑えた形となった。
「失っていたわけではないんですけど、自分たちのあるべき形がオフェンス、ディフェンス、ともに、見えたと思います」。2戦目が終わって、日本代表で長年、中心的役割を果たしてきたポイントガードの富樫勇樹(千葉ジェッツ)はこのように話した。
「失っていたわけではない」というのは、アジアカップで日本が望むような結果を得られずに減退してしまった自信を取り戻せたのかという問に対しての反応だった。

日本代表のメンバーたち‐@FIBA
バスケットボール日本代表、シンプルな戦術で勝利
日本らしいバスケットボールが戻ってきた。アジアカップではチームの進歩を求めて様々な試みを試したとトム・ホーバスヘッドコーチは話したが、今回は準備期間を多く割くことのできないシーズン中の試合だということもあり、プレーの仕方をより簡素にして臨んだ。これが奏功したことで、ジーライオンアリーナ神戸での初戦は90-64と快勝し、台湾へ舞台を移しての2戦目は80-73で勝利に成功した。
ホーバスHCが掲げた『ノーラグ』の意味
停滞を防ぐプレーとペイントタッチ
直前の合宿から神戸と台湾での試合の際にホーバスHCが幾度も用いた言葉が「ノーラグ(No lag)」だった。Lagとは「遅延」などと意味する英単語だ。
アジアカップではホーバス氏が2021年の就任以来強調してきたリングへ向かって侵入しながら得点や相手ディフェンスを収縮させてからのパスを目的とした「ペイントタッチ」が少なく、選手もボールも停滞してしまうことが多くなってしまったことが、思うような結果を出すことができなかった要因の一つとなった。
攻守の切り替えとスピード強化
今回の試合ではその反省を鑑み、停滞をすることなく次のアクションへとプレーをつなげていくことを主題として掲げていた。2試合は異なる内容とはなったが、総じて日本の選手たちの中へ切れ込む意識や勇気はアジアカップに比べると高かった。
また、こちらもアジアカップでは欠如していた攻守の切り替えとオフェンスの速度を速くしようとする意識も如実だった。ディフェンスの圧も高く、初戦では20得点、2戦目では22得点を相手のターンオーバーの直後に記録した。

躍動するバスケットボール男子日本代表-@FIBA
バスケットボール日本代表に復帰した渡邊らが躍動
渡邊雄太(千葉J)のパリオリンピック以来の代表復帰も大きかった。206cmの長身ながらドリブルや3P、またすべてのポジションを守れるディフェンスのある元NBA選手は、別格のプレーぶりでチームの先頭を走った。
その他では、西田優大(シーホース三河)や齋藤拓実(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)らが光を放ったことも収穫となった。西田はこれまでも継続的に代表入りしてきたが、ドリブルの技量を高めたことで中へ切れ込むことができていた。齋藤はスピードで相手をかき乱すことで度々、味方のシュート機会を生み出した。馬場雄大(長崎ヴェルカ)や原修太(千葉J)が国際レベルにおいても信頼のおけるディフェンダーであることも、再確認された。
富樫勇樹が語る復調の手応え
富樫が今回の日本代表の出来について「初期のトムさんがやっていた形に戻っていて、やりやすさを感じた」と話せば、渡邊も「昔やっていたようなシンプルなバスケットに戻せたのが一番、大きい。みんな気持ちよくプレーができている」と話した。
ホーバスHCはパリオリンピック以降、日本らしいゲームができていなかったと話していた。今回はスピードと激しいディフェンスを重視したシンプルな形にした。これにより、選手たち迷いの少ない、流れるようプレーができている時間帯がより長くなった。まさに、富樫や渡邊の言葉の裏づけとなった。

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