ベストゲームとキーマンたち―勝利の裏にあった個々の成長
2025年のベストゲームを尋ねると、福田監督は迷わず第1節の対ビックカメラ高崎戦を挙げた。
「いきなり後藤が3点取られた展開でしたね。あれは、チームや私自身も含めてみんなが”え?”と動揺みたいなのがありました」。
「前シーズン未勝利、得点も1点、2点取るのも難しい上野や濱村(ゆかり)を相手に、いきなり3点を先制されました。しかし、その裏に3点取り、さらに終盤で一気に突き放した。あれがベストゲームですね。」と、劇的な試合展開を振り返った。
地区優勝を果たした戸田中央。昨年全敗のライバルに打ち勝ち、開幕スタートダッシュに成功したこの一戦は、大きな意味を持っていた。
強力打線のキーマンについて
このように逆境から打撃でチームに勢いを付けた戸田中央。その象徴となったキーマンは中川彩音と坂本結愛だ。
それに加え、打線に“厚み”をつくったのは今田まなと三輪玲奈だったと福田監督は話す。
「2024シーズンから、今田と三輪がもっと機能すれば、攻撃にリズムが生まれると思っていました」と福田監督。その期待に応えた主将・今田に「チーム一練習するキャプテンがよくチームを背負ってくれた」と敬意を表した。
今田のキャプテンシーについても、「ベテランが多い中、割り切って伝える場面ではハッキリ言ってくれた」と福田監督。称賛したそのキャプテンシーは現場の意思決定速度を上げ、迷いによる失点を防いだ。その結果、役割の明確化が勝ち方の再現性を高めたと言ってよい。

今田主将は攻守でもチームを牽引した-Journal-ONE撮影
左右のエース、後藤希友と増田侑希
戸田中央の圧倒的な地区優勝を語るとき、後藤希友と増田侑希の左右のエースの名は外せない。左と右、タイプの異なる二人がチームの屋台骨を支える。
「苦労はしていると思いますけど、焦らずにマイペースでやってるって感じかな」。福田監督は増田をそう評する。勝負どころでの落ち着き、試合全体を俯瞰する視野――それは“マイペース”で生み出された強みだ。
そんな増田選手は、日本代表に選ばれた年でもあった。

右のエースとして大きく成長した増田投手-Journal-ONE撮影
「やはり選手の評価は、自分のチーム内だけでは見えないところがあります。代表チームで中で評価されることはすごく有り難いし大事です」。福田監督は続ける。
U18やU15の舞台で輝ける選手は、必ず上に行く。チーム内での評価と、代表という異なる環境での評価。そのレベル差は大きく、選手のモチベーションアップにも大きく寄与する。だからこそ、増田の代表選出は、彼女の実力を証明する確かな指標となった。
ベンチワークの進化
「お喋りが好きな明るいチーム。」と、チームカラーを表現する福田監督。
「このチームの良さを全面に出したいとはずっと思っていました。ですから、我慢するところは我慢しました。トヨタでやっていたことを言ってもうまくいかないだろうなと」。
一方、流れが停滞した時に福田監督は良く動いた。打順の入れ替え、代走カード、守備固めで微細に調整し“もう一押し”を作る。試合の流れと勢いの見極めは、監督の重要な技能である。

打線が繋がるとチームの盛り上がりも増していく‐Journal-ONE撮影
福田監督の指導論―観察力、スペシャリスト、若い頃の理論
福田監督の指導論は一貫している。「選手の“良い状態”を覚える。そうすれば小さな変化に気づける」と話す観察力だ。
観察は外形だけでなく“内的指標”の把握まで含む。スイングの軌道、踏み込みの角度、投球の指先の感覚、呼吸の浅さ。良い状態を監督が記憶し、選手に言語で返すことで、選手は自己修正のルートを得る。コーチングは「気づきを設計する技術」である。
スペシャリスト運用と評価
加えて、勝ち切るにはスペシャリストの存在が不可欠とも話す。
「1点差ゲームを勝ち切るには代走、守備固め、強打者のようなスペシャリストが必要です」とチーム編成の肝に触れる福田監督。しかし、全ての選手は先発メンバーで試合に出たい。その思いの中でスペシャリストの役割に固定することは難しい。
今後は、選手の評価としてスペシャリストの評価・価値をもっと上げていきたい。代走専門、守備固め専門、代打専門が誇れる役割になれば、1点差ゲームの勝率は上がる。一方で「レギュラーを取りたい気持ち」を尊重することも必要である。評価制度と運用の二重の設計が求められる。























