馬瓜エブリンの異変。静かに走った緊張と、宮崎・オコエの台頭
宮崎早織の引退まであと2試合。そのENEOSサンフラワーズは立ち上がりからテンポよく試合に入った。
八木悠香の先制点に続き、宮崎が鋭いドライブで富士通レッドウェーブの守備を切り裂く。星杏璃の3Pも決まり、開始3分で 9-5。
梅沢カディシャ樹奈はリバウンドで存在感を示し、富士通のセカンドチャンスを許さない。
しかし、試合の流れを変える出来事が訪れる。

攻守の基点、馬瓜エブリンが序盤で負傷退場-Journal-ONE撮影
序盤でエースの痛い欠場
残り5分、馬瓜エブリンが左足を庇うようにしながら自らベンチへ下がった。倒れ込むような劇的な場面ではなかった。だが、歩き方は明らかに普段とは違い、ベンチに腰を下ろすと、スタッフによる応急処置の最中に顔を歪めた。
その後、ベンチ裏へと姿を消し、しばらくして戻ってきたものの、表情は険しいまま。結局この日、彼女が再びコートに立つことはなかった。
アリーナ全体が凍りつくような空気ではない。だが、ENEOSベンチに走った緊張は確かだった。
オコエが躍動し、勢い付くENEOS
その空気を切り裂くように、代わって入ったオコエ桃仁花が躍動する。オフェンスリバウンドに飛び込み、ブロックに跳び、ゴール下で身体をぶつけ、速攻にも走る。チームの勝利へ献身的にプレーするその姿が、エブリンの不在を埋めようとする気迫に満ちていた。
終盤には宮崎がスティールから速攻を決め、ENEOSは 23-16 とリードして最初の10分を終えた。静かな緊張の中で、チームは確かに前へ進んでいた。

宮崎がスティールからシュートを決める-Journal-ONE撮影
富士通の反撃。梅沢・オコエ・アシュテンが支えたENEOSの耐久戦
2Q開始直後、宮崎のアシストから梅沢が連続得点を挙げる。梅沢はこのクォーターだけで複数のディフェンスリバウンドを奪い、富士通の外角攻勢を一度は押し返した。
しかし、富士通も林咲希の3P、赤木里帆の外角、アカトー・オーサリテンのインサイドで反撃。
ENEOSはアシュテン・プレッチェルがフリースローで得点を重ね、オコエがゴール下で奮闘するが、富士通の外角が止まらない。
中盤には富士通のプレッシャーが強まり、宮崎のターンオーバーが続く場面もあった。それでもENEOSは、オコエがオフェンスリバウンドから得点をねじ込み、アシュテンがペイントで強さを見せ、なんとか主導権を手放さない。
しかし終盤、富士通が一気にギアを上げる。
残り41秒、町田瑠唯の3Pで35-35。さらに残り3秒、町田が再び切り込み、37-37。
ここから試合は、まるで心臓の鼓動のようにスコアが揺れ動く“デッドヒート”へと突入していった。

エブリン負傷をカバーしたオコエ-Journal-ONE撮影
プレッチェル覚醒。ペイントを支配した圧巻の27得点
後半、ENEOSの主役は明確だった。
プレッチェル・アシュテン。富士通のインサイドに立ちはだかり、リバウンドをもぎ取り、ゴール下でねじ込み、ミドルも沈める。
圧倒したペイント内では、富士通のビッグマンが身体を寄せても、プレッチェルは一歩も引かなかった。
この10分間だけで二桁得点を積み上げ、最終的には 27得点11リバウンド。富士通の守備を真正面から押し返し、ENEOSの攻撃の軸となった。
しかし、富士通も赤木、宮澤夕貴、アカトーが応戦し、このQだけで3度の同点、4度の逆転。互いの意地がぶつかり合う、張り詰めた10分間だった。
ENEOSは宮崎がゲームを整え、オコエがリバウンドで身体を張り、プレッチェルがペイントで暴れ続ける。3Q終了時点でも勝負は完全に拮抗していた。

チーム最多27得点と活躍したプレッチェル-Journal-ONE撮影
宮崎早織、引退前の魂のプレー
最終Q、ENEOSの背中を押したのは、やはりこの人だった。宮崎早織。
引退を表明して臨んだ今シーズン。彼女のプレーには“解き放たれた美しさ”がある。迷いのないドライブ、鋭い読みのスティール、味方を生かすパス。そして、ここぞという場面での得点。
富士通が追いすがるたびに、宮崎が流れを引き戻す。オコエは最後までリバウンドで身体を張り続け、プレッチェルはペイントで支配力を失わない。



















