第4Qも折り返しに近づき、得点は50-52とトヨタ紡織がリードを守り続ける。「上がれ!上がれ!」と、ENEOSベンチから大きな声で指示が飛ぶ。
攻めるENEOS、攻め返すトヨタ紡織と点差は拮抗しながらも、50-56とトヨタ紡織がじりじりと差を広げる。ふと時計を見ると、残り3分。すでに第4Qも終盤を迎えていた。
しかし、ここまでトヨタ紡織の攻守を支え、ゴール下を支配してきた188cmのセンター、#6 ジェシカ・ワリエビモ・エレがオフェンスボー ルを巡って転倒。左ふくらはぎを抑えてうずくまってしまった。
静まり返る横浜武道館のブースターたち。その前を車いすに乗り、涙をユニフォームで隠しながら退場するジェシー。ここから一気に、ENEOSが流れを掴みに掛かった。

痛みに顔を歪めるジェシー(トヨタ紡織)-Journal-ONE撮影
スティール連発から逆転成功、会場が揺れた瞬間
オコエのディフェンスリバウンドから星が持ち込んで52-56、さらに宮崎のスティールか らオコエ がリバウ ンドをリングに入 れて54 -56。残り2分を切って、一気にENEOSがモメンタムを取り戻す。
さらに星のスティールから宮崎がゴールにねじ込んで同点。さらに、エブリンがファウルを誘ってFTを獲得すると、これを2本とも決めて逆転に成功する。ここまでわずか数分の出来事に、ENEOSブースターから大歓声が沸き起った。

スティールからドリブルでゴールに突進する宮崎-Journal-ONE撮影
息をすることさえ忘れた残り1分の攻防
残り58秒で58-56。しかし、ここから壮絶な戦いが待っていた。
残り12秒、トヨタ紡織の#2 長岡萌映子が3Pを打つ祭にファウルを受ける。これにより、3本のFTを獲得した長岡。全て入れれば逆転となるショットは、トヨタ紡織ブースターも声が出ないほどに緊張感があるものだった。
しかし、そこはリオと東京オリンピックを経験し、世界選手権やアジア大会でも活躍したスーパースタ ーには関係なし。視線を下に置いて静かに集中すると、その3本全てがリングを綺麗に通過したのだ。
残り12秒で58-59とまたもや試合をひっくり返したトヨタ紡織。勝負あったかに見えたが、「まだ充分に勝ち目のある時間だった」と試合後に話した、エブリンがゴールに向かって爆走を始めた。
シュートを決めようとするエブリンにトヨタ紡織の必死のディフェンスが迫る。しかし、冷静だったエブリンは一転、走り込んでいたプレッチェルにボールを渡す。そして、シュートを放つプレッチェルが倒されると、ディフェンスファウルの判定。ENEOSは土壇場で逆転を狙うFT2本を獲得した。
FT成功率74.6%を誇るプレッチェルは、緊張感が最高潮に達した横浜武道館の空気を切り裂き2 本共にリ ングを通 す精密な ショット を披露。この結果、残り5秒で劇的な勝ち越しを成し遂げたENEOSがそのまま逃げ切りユナイテッドカップ準々決勝を制した。

プレッチェルの逆転FT-Journal-ONE撮影
宮崎の“ラストダンス”はまだ続く
勝利が決した瞬間、ENEOSの精神的支柱はエブリンに抱きつき、喜びを爆発させた。
劇的な逆転勝利にザワつく会場の空気を一杯に吸い込みながら、宮崎は「私、いつになったら引退でき るの~!」と笑顔でブースターに向けて喜びを語った。
さらに、「(先週から)私の最後の試合と言い聞かせているので。リバウンドが取れず途中厳しい時間があったが、強い気持ちでみんな乗り越えてくれた。」とチームメイトの活躍を賞賛。
最後に、「あと2試合、黄色に染まった武道館で試合がしたい。」と、優勝への意気込みを伝える宮崎。会場に詰めかけたブースターは、この日一番の拍手と歓声で、明日へと続く“ラストダンス”に期 待を寄せていた。

ブースターに勝利を報告する宮崎-Journal-ONE撮影
ENEOSの未来を照らしたラスト30秒
「最後の30秒は、こちらが勝っていたので落ち着いてと言い聞かせた。」と、話したのは馬瓜エブリンだ。長岡のFT3本で逆転されても、あの時間ならば逆転できると思っていたと振り返った。






















