東京六大学唯一の女子硬式野球クラブ
2025年に創設100年の節目を迎える東京六大学野球。NPB(日本プロ野球)よりも古くから日本の野球人気を長くけん引してきた伝統ある東京六大学野球では、過去に女子選手が活躍していたことをご存じだろうか。
今から約30年前の1995年、明治大学のジョディ・ハーラー(Jodi Haller)が東京六大学リーグ初の女性選手として神宮球場のマウンドに上がり話題となった。
1999年には、日本人初の女性選手として東京大学の竹本恵が活躍。さらに、明治大学の小林千紘との女性先発投手同士の投げ合いも演じられ、多くの女性が硬式野球部で活躍する未来を想像したファンも多かったことだろう。
しかしその後、女性選手が活躍したという話題を耳にすることはなく、各大学に登録されている女子部員は現在一人もいない。
女性選手活躍のパイオニアであった東京六大学において「女子硬式野球を広めたい」として創設された“明治大学女子硬式野球クラブ”。その明治大学女子硬式野球クラブが創設4年目を迎えた東京六大学野球創設100年という歴史的な年に、大きな飛躍を遂げている。

富山県OB会の応援を受けた明治大学女子硬式野球クラブ-Journal-ONE撮影
100年目から始まる新たな歴史
明治大学入学と同時にこの明治大学女子硬式野球クラブを立ち上げたのは、現在も当クラブの運営に奔走している藤﨑匠生監督だ。
高知県の高知中央高校で自らも“甲子園”を目指していた藤﨑監督は、卒業後に働きながら母校の女子硬式野球部を指導したことで女子野球に魅了された。「女子硬式野球をもっと多くの人に知ってもらうため、東京六大学で活動の場を作りたい」と、消防士の職を捨て明治大学農学部への入学を果たした。
部員ゼロからスタートした明治大学女子硬式野球クラブ。「部員集めが最も大変だった」と振り返る藤﨑監督の下に選手たちが集まり、創設4年目を迎えた2025年に東京六大学史上初となる“女子野球・早明戦”を開催するまでに成長を遂げた。その歴史的な一戦には、明治大学、早稲田大学両校のOBなどがスタジアムに詰めかけ、東京六大学野球100年目における新たな一ページを目に焼き付けたのだ。

史上初の女子野球早明戦に臨む選手たち‐Journal-ONE撮影
次なる歴史は初の公式戦出場
史上初の“女子野球・早明戦”を実現させた明治大学女子硬式野球クラブは、さらに新たな歩みを進めるべく公式戦への初参戦を決める。第39回全日本大学女子野球選手権大会、大学女子軟式野球の頂点を決める戦いに挑むため、開催地である富山県魚津市にやってきた。
1回戦の会場となったのは“天神山野球”。今夏の第107回全国高等学校野球選手権大会に出場した富山県代表・未来富山高校が普段、練習場として利用しているグラウンドだ。

天神山球場では地域のおもてなしブースも出店-Journal-ONE撮影
全15大学、14チームが集い日本一を決める大学女子野球の歴史ある大会、しかも初めての公式戦とあって明治大学女子硬式野球クラブの選手たちの動きが気になるところ。
「初めての公式戦なので、とても緊張しています」と話しながらメンバー表交換に向かう若杉紗良主将(4年・都立立川)だったが、野球ができる喜びに満ちた普段と変わらぬ素敵な笑顔を見せていた。

初の公式戦で打順を待つ若杉主将-Journal-ONE撮影
「いよいよ、明大女子硬式野球クラブの記念すべき公式戦初試合になりました!」とこちらも変わらぬさわやかな笑顔で挨拶を交わした藤﨑監督。聞けば大会前日、中型バスをリースし自らの運転で都内から選手たちを乗せてやってきたとのこと。
「消防車を運転するには中型免許が必要なので、思わぬところで消防士としての経験が活きましたね(笑)」と笑った藤﨑監督だったが、「初の公式戦に臨むことができて感無量です。強豪校がひしめくブロックではありますが、自分たちの“明るく楽しく野球をする”姿勢を貫き一生懸命戦っていきたい」と表情を引き締め、今大会に掛ける意気込みを教えてくれた。

笑顔で試合前のノックをする藤﨑監督-Journal-ONE撮影
