被災地に明るい話題を、能登半島地震がチーム設立の決定打
2018年に9チームでスタートした”3x3.EXE PREMIER”の女子カテゴリー。その後は他国の同リーグにも女子カテゴリーが誕生した一方で、日本は一時期6チームまで参加チームが減っていたが、今年は3チームが新規参入し、再び9チームで争われることとなった。
その新規参入チームのうちの1つが、”ECHAKE-NA NOTO.EXE”。チーム名に採用された“えちゃけーな”とは、「かわいらしい」を意味する石川県能登地方の方言だそうだ。

能登のため奮闘する池田智美-吉川哲彦撮影
能登といえば、昨年元日の大地震による甚大な被害を受けた地域だが、その震災がチーム設立の決定打となった。谷遼典オーナーは、生まれ育った能登で鍼灸整骨院を経営。一昨年12月に、チーム設立に向けて動きだそうとしていたところだった。
「もともと、町おこしという意味でやろうと思ってはいたんです。今GMをやっている平内(織衣)に声をかけて話を進めてたところで、1月1日に地震が起きた。それで避難所に行ってマッサージのボランティアをしていたんですが、どうしても皆さん暗いことしか話さないんですよ。何か僕が明るい話題を作りたいと思って、改めて平内さんに連絡したのが1月12日のことです」
谷オーナー自身、中学・高校とバスケット部で青春を過ごし、社会人となってからもバスケットは続けていた。「せっかくやるならシンボルになるくらい、しっかりしたものを作りたいと思いましたし、能登の人間、輪島の人間がいないと地元が応援しにくいだろうなというのもあった」という谷オーナーが真っ先に声をかけたのは、中学時代の同級生であり、その後、”Wリーグ”トヨタ紡織でプレーした”池田智美”だ。
中学の同級生とはいっても、谷オーナーによれば「格別仲が良かったわけではなくて、たくさんいる同級生の中の1人。たぶん池田もそう思ってたと思います」ということだが、社会人となってから同級生数名で集まる時には池田の姿があり、顔を合わせる機会が増えていったそうだ。
本業の傍らで、スポンサー営業やチーム編成など、多岐にわたる仕事をこなさなければならず、谷オーナー曰く「ほとんどのことは僕と平内さんでやりました」とのことだが、池田も事務局の一員として事業面を手伝うことが少なからずあるという。

谷遼典オーナー(左)と池田智美-吉川哲彦撮影
能登出身の元・Wリーガー、愛知から石川へ通い練習に参加
2018年にWリーグでの選手生活を終えた後も、トヨタ紡織の拠点がある愛知県に住み続けている池田は、週1回のチーム練習のために石川県に帰省するという生活サイクル。負担も大きい中で運営のサポートもしているのは、やはり地元のためにプレーできるという喜びが原動力となっている。輪島市にあった実家は地震を受けて取り壊され、今は更地になってしまった。復興への想いも谷オーナーと同等か、それ以上に強い。
「オーナーの谷から声をかけられて、”こういうチームを作りたい”という想いをもらった時から、チームに必要なことであれば空いてる時間で自分にできることをしていきたいと思ってきた。選手としてパフォーマンスを上げていくということは、もちろんですけど、チームがどういう方向に向かっていくかというところのお手伝いも、本当に私はちょっとだけなんですけど(笑)、頑張っていきたいです」
直近の2年は3x3日本選手権に他チームから出場していたとはいえ、Wリーグ引退からは時間が経ち、年齢も30代後半に突入した。そんな今も、バスケットと真摯に向き合えることに日々充実感を得られ、そのチャンスを与えてくれた谷オーナーに感謝している。
「1回引退した身ですけど、やっぱりバスケットって楽しいなって思うし、年を重ねるごとに好きな気持ちがどんどん大きくなってます。プレーヤーとしてできる期間は限られると思うんですけど、大好きなバスケットをやれる場所があることは非常にありがたいですし、地元への恩返しという形でできるのがすごく幸せです」。
「輪島でバスケットを始めて、他県の高校に進んでずっとバスケットに携わってきたんですけど、震災が起きた時に”何かできないか”という気持ちがすごく強かったです。輪島に残ってたオーナーが旗を振って立ち上げてくれたことは、すごく大変なことだったと思うんですけど、パワーを持って行動してくれたことをありがたく思ってます。オーナーは、能登に対する愛が本当に深いなと思いますね」

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