伊予銀行ヴェールズ 球団史上初の挑戦
伊予銀行ヴェールズが球団史上初となるプレーオフ進出へ。4シーズン目のJDリーグに、新たな歴史を刻んだ。
しかし、今シーズンのプレーオフ開催地は愛知県名古屋市のパロマ瑞穂球場。愛媛県松山市から、約500km離れた地での戦いとなった。因みに、パロマ瑞穂球場に隣接する競技場は、来秋に開催されるアジア大会のメイン会場だ。
それでも歴史を塗り替えた選手たちに会社が応える。チャーターバスを仕立て、夜8時に松山を出た大応援団が駆けつけた。試合前から伊予銀行ヴェールズの応援席は、地元・四国での開催かと思うほどの盛り上がり。選手と共に、一戦必勝の戦いに勢いを付けた。

500km離れた松山市から駆け付けた大応援団-Journal-ONE撮影
“唯一の経験者”が語る万全の備え
「この日のために、万全の準備をしてきた」と語るのは、木谷謙吾コーチ。実は昨シーズンまで、東地区のホンダリヴェルタに所属していた。そしてこれまで、そのホンダでプレーオフの舞台を何度も踏んでいる。伊予銀行ヴェールズにとって、唯一の経験者が居ることは心強い。
さらに木谷コーチは、この日の対戦相手・日立サンディーバと何試合もしのぎを削ってきた。そのため、因縁の相手として攻略策を幾重にも施してきたと話す。
「日立の対策は、これでもかというほどやって来た。何とか接戦に持ち込み、うちのソフトボールで勝利に繋げたい」と木谷コーチ。一方で、試合前に準備する選手達も、自信を持って戦う顔になっていた。

万全に日立対策を行った石村監督(左)と木谷コーチ(右)-Journal-ONE撮影
温かい会社の声援に応えたい
石村監督が語る職場との絆
伊予銀行ヴェールズを率いて3年目で、新たな歴史を作った石村寛監督。そして、西地区3位の座をリーグ最終戦で決めてからは、2週間の準備期間があった。この間、周囲の反応はさまざまであり、石村監督はこの日に向けて入念な準備を進めてきた。その内容について話を聞いた。
プレーオフ進出を決めたその翌日、選手たちが所属する様々な職場で反響があった。選手、スタッフたちには、多くの祝福と激励の声が寄せられたという。
「プレーオフが決まり、選手たちの目の色がまた一つ変わった。温かい会社の声援に応え、必ずや結果でお返ししたい」と、決戦に臨む決意を語ってくれた。
勝ちパターンは“先制点”
伊予銀行ヴェールズは今年、ロースコアの展開で粘り強く守り続けた。とはいえ、守るだけでは勝利にはつながらない。そのため、ワンチャンスで得点を奪い、勝利を積み上げてきたのだ。
だからこそ石村監督も木谷コーチも「先制点を取ること」が勝利の鍵だと断言する。一方で、昨年準優勝の日立は経験豊富な強豪だ。それでも、伊予銀行ヴェールズがペースに引き込めるかどうか——試合の焦点は明確だった。

伊予銀行ヴェールズの選手たちの引き締まる表情-Journal-ONE撮影
黒木美紀|大胆かつ慎重な快投
期待を背負ってマウンドへ
球団史上初の舞台に立ったのは、黒木美紀投手。
実は黒木投手、リーグ戦の直接対決で敗戦投手となっていた。それでも石村監督は、火曜日の時点で安川裕美主将とともに先発を打診したという。
リーグ戦では通常、試合前日に伝える先発の打診。それだけに石村監督が黒木投手にかける期待の高さがうかがえる。
日立打線をノーヒットに封じる
日立サンディーバの村山修次監督は、打者に肩幅ラインのボールに手を出さないよう繰り返し指示を出していた。しかし、黒木投手の快投に日立打線は思い通りの攻撃ができない。
日立は徹底した対策を講じていた。しかし、黒木投手は4回途中まで、強打の日立打線をノーヒットに抑え込む。
打者の足元に落ちるドロップボールと、肩幅の高さに浮き上がるライズボールを巧みに使い分け、緩急と高低を駆使する投球術が光った。さらに、その大胆かつ慎重な配球が、日立打線を無失点で封じ込めたのだ。

スイングチェックを要求する黒木‐Journal-ONE撮影
ベテランと若手が繋ぐ先制へのバトン
伊予銀行ヴェールズの執念、吉本の激走
伊予銀行ヴェールズは2回表、ベテランの4番・本間紀帆選手が死球。執念で出塁を果たした。すぐに石村監督はルーキー・吉本琴慈選手を代走に送り、先制点へのバトンを託した。




















