
上野は完封で後藤との投げ合いを制した‐Journal-ONE撮影
JDリーグ準決勝②|夕刻の空気の変化
トヨタ vs 豊田織機|島仲湊愛の一発とファライモ完封
この時期にもなると日が暮れだすのが早くなってくる。午後2時15分に開始した準決勝2試合目は、イニングが進んでくると太陽は徐々に地平線のほうへ傾いていき、やや夕刻の様相を呈し始める。1試合目の最中に感じられた陽の眩しさも、和らぎ始めていた。終盤になると陽の光はさらに弱まり、点灯するジャイアンツタウンスタジアムの照明は少しずつ増えていった。
試合は、こちらも緊張感のある展開となる中で、過去2年連続でリーグ制覇をしているトヨタ レッドテリアーズが5回裏の島仲湊愛による3点本塁打で均衡を破り、また投球のたびに「フッ」という気合の声が客席にまで聞こえてくる右腕、メーガン・ファライモが完投で相手を零封。3-0で豊田自動織機 シャイニングベガを破ったトヨタが、3季節連続で優勝決定戦に進出した。
トヨタ応援団の存在感と心理的圧力
1本の本塁打で勝負を決めたわけだが、しかしどこかトヨタの盤石さを感じないわけでもなかった。それは、スタンドに陣取った彼らのファンを見ていて感覚的に思ったことである。世界的企業のトヨタはプロ、実業団、また個人競技と多くのスポーツチーム、アスリートを支援する会社だ。中にはグループ内の複数のチームやアスリートを応援する関係者、ファンも少なくないのではないかと想像する。いずれにせよ長年、トヨタがスポーツを支援するなかで応援の手法なども洗練されてきたのではないだろうか。
このことを文章に落とし込むのは容易ではないがこの日、三塁側の客席を赤く染めたトヨタの応援団がグラウンドで戦うに送る「念」はより強く、より彼女たちの背中を押していたように感じられたからだ。トヨタの捕手・切石結女はジャイアンツタウンスタジアムは「客席がギュッとなているのでホーム感が強い」という実感を述べていた。
それはつまりは、相手に対してかける重圧の大きさにもなる。試合後、豊田織機の先発、山下千世は被弾した場面について「勝負を急いでしまった」と述べている。相手の大きな声援が山下ら豊田織機の選手たちへ無意識の圧迫感をもたらしていたのではないかとも思われた。

トヨタレッドテリアーズの熱烈なファンの応援‐永瀬和志撮影
JDリーグの「非日常性」|スタンドも含む体験の全体像
そのようにして、グラウンド上で繰り広げられる戦いだけでなく、スタンドや球場の他の場所の様子にも意識を向けながらこの日を過ごした。そして改めて、ダイヤモンドシリーズがジャイアンツタウン スタジアムという場所で開催されたことの意義を思う。
プロスポーツとそれ以外のスポーツの境界線を考える時、実業団という世界的には特殊な形態を持つ日本においてその境目はやや曖昧だ。
JDリーグを含めた実業団スポーツリーグは、純然たるプロとは呼べないかもしれない。ただプレーをする選手たちの多くは競技だけで生計を立て、その中でトップの選手たちは日本代表としてオリンピックや世界選手権といった舞台にも立つ。となれば彼ら、彼女たちを「アマチュア」に定義することはできない。どちらかといえば「セミプロ」に分類するのが落ち着きがいい。
また、今回のダイヤモンドシリーズのように、たとえ来場者の大半が企業の関係者や縁故者であったとしても、観戦券が優良が販売される興行の体をなしているのであれば、それはやはり定義としてプロに近いものとなる。
そして、ジャイアンツタウン スタジアムで試合を眺めていると、このようなこともまたプロとアマチュアの境目にあるのではないかと思う。それは「非日常性」だ。ジャイアンツタウン スタジアムという「プロ野球仕様」の球場でのダイヤモンドシリーズは、グラウンドに立つ選手たちにも来場した観客にも非日常的な高揚を覚えさせる、非日常空間だった。

壁面には長嶋茂雄氏の巨大パネルも‐永瀬和志撮影
JDリーグの記憶に残る工夫|特別感ある舞台の必要性
競技の日本一を争う舞台。そうではなくてはいけない。
JDリーグ初年度の2022年にはダイヤモンドシリーズを千葉ロッテマリーンズの本拠地であるZOZOマリンスタジアムで行っている。こうした特別感をもたらす場所を舞台にすることはリーグや同シリーズに泊をつけるという点で肝要だ。訪れた観客の印象も、より永きにわたって脳裏に焼きつく。

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