センバツ開会式──高校生たちが紡ぐ“100年の甲子園”の物語
センバツ開会式が、今年も阪神甲子園球場に春を告げた。第98回センバツ高校野球大会は、例年通りに3月19日に開幕。しかし、今年の開会式は例年以上に「高校生たちが作り上げた開会式」であることが際立った。
100年を超える甲子園の歴史を繋ぐのは、野球部だけでない。様々な分野で青春をかける全国の高校生たちが受け継ぎ、未来へとつないでいく。
その姿は、スポーツイベントの枠を超え、社会に向けた大きなメッセージとなっていた。

先頭は前年優勝の横浜高校-Journal-ONE撮影
行進曲が象徴する“高校生文化”の広がり
毎年話題になるセンバツ開会式の行進曲。今年は5人組ダンスボーカルグループ”M!LK”の「イイじゃん」が選ばれ、吹奏楽編曲によって球場に明るいリズムが響いた。
この行進曲は、後にアルプススタンドの応援でも使われることが多い。そのため、人気曲は地方大会でも長く愛され続けている。音楽を通じて高校生たちの文化が甲子園に息づく瞬間だ。
行進曲は単なるBGMではない。吹奏楽部の生徒たちが、全国の球児たちの背中を押す“音のエール”を届ける場でもある。彼らの演奏が、選手たちの緊張をほぐし、球場全体に一体感を生み出す。高校生同士が互いを支え合う構図が、開会式の根底に流れている。
“手書きプラカード”が映し出す、高校生の技と誇り
今年のセンバツ開会式で最も注目を集めたのが、校名プラカードだ。
選手たちを先導するプラカードを掲げるのも高校生。そして、そのプラカードに記された校名は、すべて高校生による手書きである。
この取り組みは2008年の第80回記念大会から始まった。その後、コロナ禍など一部大会を除き受け継がれてきた。
しかし今年は、その“手書き”の意味が例年以上に深く、重く、そして美しく感じられた。
書の全国トップが揮毫──“書の甲子園”との連携
揮毫を担当したのは、「書の甲子園」と呼ばれる国際高校生選抜書展で地区優勝した全国9校。
団体の部で全国優勝を果たした大分南は、九州国際大付(福岡)、長崎日大、熊本工、神村学園(鹿児島)を担当。
同準優勝に輝いた大東文化大一(東京)は、専大松戸(千葉)、帝京(東京)、高知農に揮毫で思いを伝えた。
さらには、明誠学院(岡山)、高田(三重)、浜松学芸(静岡)、静内(北海道)なども参加。全国の書道エリートたちが一文字一文字に魂を込めた。

大東文化大一の生徒が手書きした専大松戸のプラカード-Journal-ONE撮影
字体が違うからこそ“物語”が生まれる
学校ごとに字体が異なるプラカードは、まるで“書の全国大会”のようだ。
力強いもの、流麗なもの、いずれも個性がにじむ独特の筆致。その違いが、選手たちの個性と重なり、行進に豊かな表情を与える。
観客席からは「この字体はどこの学校だろう。」「この書き手はどんな思いで書いたのか。」といった声も聞こえた。
プラカードが単なる案内板ではなく、書道部の生徒たちが選手に託した“応援の形”として受け止められている証拠だ。
書道部の生徒たちにとっての“甲子園”
書道部の生徒たちにとって、甲子園は本来縁のない場所だ。しかし、彼らは筆一本で甲子園の歴史に名を刻む。
「自分の書いた文字が全国の注目を浴びる」という経験。これも当然、野球部の選手たちが味わう緊張と誇りに通じるものがある。
書道部の顧問はこう語るという。「野球部だけが甲子園に行くわけじゃない。書道部にも、吹奏楽部にも、放送部にも、それぞれの甲子園があるんです。」
この言葉が象徴するように、プラカードは“高校生文化の総合舞台としての甲子園”を体現している。

開会式に臨んだ代表32校の選手たちを彩ったプラカード-Journl-ONE撮影
司会も高校生──言葉で大会の幕を開く
センバツ開会式の司会を務めたのは、NHK杯全国高校放送コンテストで優秀な成績を収めた只安遥都さん(長崎北陽台)と榎本杷留さん(八戸聖ウルスラ学院)。
落ち着いた声と確かな言葉選びで、甲子園の空気を引き締める。高校生が大会の“語り部”を担うことで、開会式はより若い世代の息吹を帯びていく。

司会を務めた只安遥都さん(長崎北陽台)-Journal-ONE撮影




















