75年ぶりに帰って来た名門校
第98回選抜高校野球大会。長崎西は21世紀枠で選ばれ、1951年以来75年ぶりに春の甲子園へ戻ってきた。夏も含めた甲子園出場としては1981年以来45年ぶり。その隔たりは、単なる年数ではない。敗戦の記憶、応援の記憶、語られずに積み重なってきた時間の総和だった。

試合前に笑顔を見せる宗田監督と選手たち-Journal-ONE撮影
進学校として積み重ねてきた時間と評価
長崎西は、全国的にも知られる県内屈指の進学校である。昨年度は東京大学に4名、京都大学に6名が合格し、国公立大には200名を超える進学実績を残した。日々の授業、模試、進路指導が生活の中心にあり、部活動は常に「限られた時間」の中に置かれる。
野球部の練習時間は平日およそ90分。グラウンドに立つ前から、時間はカウントダウンされている。推薦で有望選手を集めることもなく、部員の多くは一般入試で入学してきた生徒たちだ。それでも彼らは、ノートを取り、対話を重ね、考え抜くことで野球を組み立ててきた。
長崎西において、「考える野球」という言葉は、スローガンではない。授業と同じように、問いを立て、仮説を立て、検証する。その延長線上に、練習も試合もある。だからこそ彼らは、相手の名前や実績ではなく、「今、何が起きているか」に集中する。
長崎西はその姿勢が評価された。今春の21世紀枠としてセンバツの切符を75年ぶりに手にした。ただし、その評価の真価は、選考会の場ではなく、聖地での一球一打によって示される。
試合当日、三塁側アルプススタンドは文字通り埋め尽くされた。長崎県内からはもちろん、全国各地で活躍するOB、かつてこの学校で学んだ人々、そして「西高」という名に思いを重ねる人々が集った。75年という時間は、学校単体の歴史ではない。地域が積み重ねてきた沈黙と期待の時間でもあった。

75年ぶりにセンバツの打席に長崎西のユニフォームが-Journal-ONE撮影
初回から始まった「真っ向勝負」
迎えた初戦の相手は滋賀学園。
21世紀枠と一般枠。その言葉だけを並べれば、実力差を想像する声が出るのも無理はない。しかし、この日はその前提を初回から否定した。
滋賀学園の先発・土田は、130キロ前半の直球と100キロを切る変化球を織り交ぜる技巧派左腕。甲子園でも物怖じしない投球を見せていた。
だが長崎西は、初球から振らなかった。ストライクかボールかではなく、「どんな軌道か」「どこから来たか」を確認する。ベンチと打者が、同じ情報を共有する時間だった。
1死から2番・藤野が四球で出塁する。ここで無理はしない。3番・芦塚はフルカウントまで粘り、ファウルで球数を増やしながら、中前へ運ぶ。4番・細波も左前打で続き、いきなり満塁。
ここで、続く5番・岡崎が、3ボールから高めの直球を見極めた。押し出し四球で先制点を挙げたのは長崎西だった。
まだ試合は始まったばかりで、スコアも1―0だ。しかし、この1点は数字以上に重かった。打ち崩したのではない。見極め、我慢し、選び取った1点だった。初回、土田に投げさせた球数33が、攻撃の質を物語っていた。

先発・坂田が強打の滋賀学園に挑んだ-Journal-ONE撮影
初回の1点が呼び起こした、18年前の記憶
「あのときは工藤にノーヒットノーランで敗れたので、初回から点を取る今年の展開は凄い」。
1981年、名古屋電気(現、愛工大名電)の工藤公康にノーヒットノーランを喫したあの夏。その時も、甲子園で長崎西を応援していたOBだった。ヒットが一本も出ず、ただ相手の完成度を思い知らされた試合。
その記憶を知る者にとって、初回からヒットを重ね、四球を選び、堂々と点を奪う後輩たちの姿は、時間が更新された瞬間でもあった。
すぐに返されても、揺るがない戦い方
だが、甲子園は感慨だけで流れを与えない。
その裏、滋賀学園は1番・藤川の中前打から反撃に出る。犠打で進塁し、3番・吉森を四球で歩かせ一、二塁とピンチが広がる。
すると、続く4番・中野が変化球を上手くすくい上げてレフトオーバー。これが逆転適時二塁打となり、滋賀学園が2点を取って逆転に成功した。

甲子園歴史館
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- 取材・文:
- 編集部-矢澤( 日本 )


















