篠山に言わせれば、「明確に速いバスケットを目指していた」ギンズブルグ氏。彼がHCだった時と比べると、勝久氏が後任となったチームは速い展開を目指す形というよりも「正しい選択をしながらアドバンテージをちょっとずつ広げていく」スタイルへと変わった。
そのように行うゲームが変わってきた中で、篠山は自身にしかできない役割を真っ当することに注力した。ギンズブルグ氏時代の速いゲームでは、あえて「無理をせずにセットプレーをコールしたり、得点やアシストにつながりやすいプレーを何個かの選択肢の中から選んで、1回落ち着け」るといったようにだ。

”自身しかできないプレー”でアジャストする-永塚和志撮影
重たい時間帯を軽くするために
千葉J戦での速い展開が効いた時間帯があったと記した。しかし、篠山の目に今の川崎のオフェンスは「どちらかというと重たい時間帯のほうが多い」と映る。となれば、今度は自身ができるのはそれを軽くすることだ。
「自分が出た時はもっと軽くじゃないけど、とにかくボールを前にどんどん出す。セットプレーをコールするどうこうというよりは、オフェンスの流れの中でボールと人が動くようにというのを意識していやっています」。
説得力はプレーで示す――37歳の強度
言うからには、やる
立場上、篠山竜青は米須ら若手に対して助言を提供している。話しぶりからして、時には厳し目の口調で言葉を投げかけることもある様子だ。ディフェンスの強度については、頻繁に教示を与えるらしい。言うからには、自身で身をもってして実践してみせるようにする。
「シーズンの中盤くらいまでは自分の中では強度よりも賢くやるとか、シュートのない選手に対しては思い切り下がって打たせるとか、駆け引きとか、そういう経験を生かしてやる楽しさの中でやっていた部分はありました」。
「ですが、今の若い子たちに『お前らには強度が足りない』と言っているからには、自分が強度を出さなきゃいけないじゃないですか。そこは今、変えています」。
「だから結構、短い時間(の出場)でもヘトヘトになるんですけど。でも、若い選手たちに対して説得力を保つためには、自分がより質の高いプレーをしなきゃいけないなというプレッシャーはあります。そこはいい意味で捉えています」。

強度の高いプレーで若手に手本を示す-永塚和志撮影
背中で見せるディフェンス
千葉Jとの試合で篠山は、瀬川琉久とマッチアップする時間帯があった。昨シーズン、プロ入りしたばかりの19歳のに対した篠山。言葉通りに激しく守ることで自由にプレーをさせなかった。瀬川は奇しくも米須と同じ、京都府の東山高校の出身だ。だからというわけではないが、篠山の激しいディフェンスは、彼の背中を見て成長を続ける米須に対してのものだったところもあった。
「プレッシャーをかけるのを米須に見せなきゃいけない。『お前、こうやってディフェンスやんだよ』ってやらなきゃいけない。っていう意識で今はやっていますね」。

米須も篠山の背中を見て成長し続ける-永塚和志撮影
「この試合しか見られない」ファンのために
若手育成の先にある、現在進行形の責務
若手にはリスクを取ってでも思い切ったプレーをしてほしい。そして彼らの成長のために自分が手本となれるのであれば嬉しい――。篠山竜青の思いはこのようなものだろう。
もっとも、昭和生まれの篠山にしても1人のプロである。人間である。若手を積極的に起用するという未来への投資が必要なことだ。その前提は承知しつつ、自分にもまだまだやれるのだという手応えがある。
それに、川崎が置かれる苦しい状況にもかかわらず、応援に駆けつけてくれるファンがいる。彼ら、彼女たちに現在進行系で川崎のバスケットボールとは何かを伝える責務があるとも、考える。
「もう一度来たい」と思わせるために
この2年ほど、自身の体組成の数値が上がったと話したのは1度ではない。またシュートフォームを改良し、3Pの技量も良くなった。Bリーグで段々と少なくなってきた昭和生まれ。しかし、衰えるどころか存在感が戻ってきた感もある。
事実、篠山は「今年は改めて自分がこのリーグでまだプレーができるなという自信を得るきっかけになったシーズンだった。」と語った。言葉は続いた。
「未来への投資っていうのもわかります。一方で、この試合だけしか見に来られないお客さんがいるかもしれません。応援してくれる人たちが来季もいるかどうかはわからない。この試合をきっかけに『もういいや』って思うかもしれないし、『また来たい』って思うかもしれない。と考えると、投資だけが正しいのかって思いながら、くよくよしてしまう瞬間も多々、あります」。

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