初完投勝利で見えた新たな課題
阪南大学との1回戦。一井伊織投手は、リーグ戦で初完投勝利を記録した。
しかし、内容は決して楽なものではなかった。7回までは被安打3の完封ペース。テンポ良く打者を打ち取り、まさにエース級の投球を見せていた。
一方で、終盤になると阪南大打線の反撃を受け、試合は接戦となった。それでも最後まで投げ切った経験は大きい。
ただし本人は決して満足していない。
「先発して長いイニングを投げる力はまだまだです。100球を超えてもパフォーマンスが維持できるよう、日々努力を続けていきます。」
「先発完投を目指すうえで、まだまだ課題はあります。常に持ち味の球速が維持できるよう、スタミナも付けていかないと。」と前を向く。
大学最後の秋。さらに高みを目指す姿勢は変わらない。

夏の強化期間で制球力も増した-Journal-ONE撮影
野球エリートではなかった右腕の歩み
一井伊織投手が野球を始めたのは小学1年生だった。
しかし、その野球人生は決してエリート街道ではない。
中学校は軟式野球部。高校も強豪私学ではなく、自宅から近くグラウンドが広い神戸鈴蘭台高校を選んだ。
「和歌山大学に進み、野球部に所属している高校の先輩からお話を聞きました。国公立大学でもレベルの高い野球ができるのかと思い進学を決めました。」
さらに、学費面で両親へ負担をかけたくないという思いも進学理由にあったという。
高校時代から注目された投手ではなかった。大学入学時に脚光を浴びる存在でもなかった。
それでも野球を続けたいという思いを貫き、和歌山大学野球部の門を叩いた。
そして大学3年時のフォーム改造をきっかけに、一気にリーグ屈指の速球派右腕へと成長したのである。
まさに遅咲きの桜と言えるだろう。

遅咲きの桜が和大上昇のカギを握る-Journal-ONE撮影
一井伊織が目指す「チーム優勝のために」
和歌山大学野球部は「誰かの為に」と記された横断幕を掲げ、リーグ戦に臨んでいる。
勝利だけではなく、人間的な成長も大切にするチームだ。
また、大原監督のもとでは選手が自ら考え判断する「ノーサイン野球」が浸透している。
その中心で腕を振るのが一井投手である。
「チーム優勝のために。」
その言葉に迷いはない。
だからこそ、和歌山大学が悲願の優勝を果たすためには、一井投手のさらなる成長が欠かせない。

”誰かの為に”と記された和歌山大学の横断幕-Journal-ONE撮影
リーグ戦初登板からわずか1年。3年秋に現れた右腕は、大学ラストシーズンにチームの主戦投手へと成長した。
野球エリートではなかった一人の青年が、自ら考え、自ら変わり、チームを支える存在になった。
その挑戦の先に、和歌山大学初の明治神宮大会出場はあるのか。捲土重来を期す和歌山大学と、一井伊織投手のラストシーズンから目が離せない。














