一井伊織が、和歌山大学の命運を握っている。
これまで新人戦での登板経験はあったものの、リーグ戦初登板は3年生の秋季。それもわずか2試合、3回1/3を投げただけだった。しかし、そこからわずか1年で状況は大きく変わった。
4年生となった春季リーグ戦では7試合に登板。主に試合終盤を任されるクローザーとして18回2/3を投げ、防御率0.00を記録した。エース・片山将希投手(4年・日高高)を支える重要な戦力として急浮上し、惜しくも準優勝に終わったチームを支えた。
そして迎えた大学生活最後の秋。
9月14日現在、第2節1回戦までを終えた時点で和歌山大学は2勝2敗。優勝戦線に踏みとどまるためには、残る試合を一つも落とせない状況が続いている。
その中で一井投手は4試合中3試合に先発登板。阪南大学との1回戦では自身初のリーグ戦完投勝利を挙げるなど、今やチームの主戦投手として大きな期待を背負っている。3年秋に彗星のごとく現れた右腕は、最終学年の秋に和歌山大学の優勝を託される存在へと成長した。

ピンチを凌ぎベンチに戻る一井-Journal-ONE撮影
一井伊織が和歌山大学優勝のラストピースとなる理由
春季リーグ戦開幕前のことだった。
「今シーズンは面白い選手が出て来ましたよ。」
和歌山大学・大原弘監督に話を聞いた際、そう紹介されたのが一井伊織投手だった。聞けば、前年夏の強化期間で急成長を遂げていたという。
実際、春季リーグ戦で見た一井投手のボールはインパクト十分だった。ストレートには威力があり、打者を押し込む力を持っていた。一方で、制球面にはまだ課題も残り、四死球や球筋のばらつきが目立つ場面もあった。
それでも、大原監督はそのポテンシャルを高く評価していた。
そして、その期待は現実となる。
春季リーグ戦ではクローザーとして活躍し、秋季リーグ戦では先発投手へ転身。和歌山大学が優勝を目指すうえで欠かせない戦力となった。
エースの片山投手だけでは長いリーグ戦を戦い抜くことはできない。
だからこそ、一井投手の存在はチームにとって「最後のピース」と言えるのだ。

和歌山大学を率いる大原監督-Journal-ONE撮影
「面白い選手が出てきた」大原弘監督が見抜いた才能
一井伊織投手自身もブレイクのきっかけについて振り返る。
「身体の使い方をイチから見直したんです。」
この言葉の裏には、徹底したフォーム改造があった。
「人はそれぞれ身体の使い方に特徴があります。一井の場合、これまで上手から投げていたのですが、どうも骨盤にためた力が上手くボールに伝わっていませんでした。これを本人とも話し合いながら確認し、フォーム修正に踏み切ったのです。」
大原監督はそう説明する。
選手任せではなく、本人と対話を重ねながらフォームを見直した。その過程こそが一井投手の覚醒につながった。

フォーム改造で覚醒した一井-Journal-ONE撮影
一井伊織を覚醒させたフォーム改造と146キロへの進化
「フォーム改造の最初の感覚がとても良かったんです。ただ、細かい部分でしっくりくるよう、修正は重ね続けています。この夏もさらに微調整を繰り返して秋季リーグ戦に臨みました。」
一井伊織投手はそう語る。
その結果、130km/h台だったストレートは一気に140km/h台へ到達した。さらにリーグ戦では146km/hを計測するまでに成長した。
しかし、一井投手の進化は球速だけではない。
今秋、ジャーナルワンが取材した際に感じた最大の変化は制球力だった。春に見たときと比べ、ストレートの質だけでなくコースへの投げ分けも向上している。
さらに変化球のキレも増し、空振りを奪える球種が増えた。加えて、球速差を活かして相手打者のバットを折る投球術も身に付けていた。
「キャッチャーと相談しながら、配球も工夫しています。」と一井投手。
堀裕斗捕手(2年・鹿児島玉龍高)との万全なコミュニケーションにより、先発投手として試合全体を組み立てる能力も大きく向上したのである。

一井とハイタッチする堀-Journal-ONE撮影

和歌山大学|自然と知が融合する国立大学の魅力と特色
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住所和歌山県和歌山市栄谷930
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TEL073-457-7007
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アクセス東海道新幹線 新大阪駅 ー 大阪メトロ御堂筋線(17分)- なんば駅/南海難波駅 ー 南海特急サザン(53分)- 和歌山大学前駅 - 和歌山バス(5分)- 和歌山大学停留所
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その他
- 取材・文:
- 編集部-矢澤( 日本 )

大原 弘(和歌山大学硬式野球部 監督)
和歌山県和歌山市出身/1965年生まれ。本職は学習塾「GES」を運営する株式会社エスビジョングループ 提携事業本部長。
京都産業大学を卒業後、学習塾業界で30年以上にわたり小中高生の教育に携わる。並行して、母校・和歌山県立桐蔭高校野球部のコーチを務め、2008年、低迷していた和歌山大学硬式野球部の監督に就任。
就任当初、チームは近畿学生野球連盟3部に所属していたが、独自の指導哲学と組織づくりによりチーム力を急速に引き上げ、1部昇格。2017年春に初のリーグ優勝、同年の全日本大学野球選手権でベスト8進出という快挙を達成した。
指導理念は、「勝つことより、選手の人間形成」という明確な価値観を持つ。特に、選手が自ら考え、判断し、行動する力を養うために、和歌山大学硬式野球部は“ノーサイン野球”と呼ばれる独自の戦術を採用している。
また、学習塾で培った心理学・組織論・リーダー学を活かし、「動機づけ」「自律型人材の育成」を重視した教育的アプローチを導入。選手が“なぜその行動を取るのか”という視座を高めることを徹底している。
国公立大学として全国大会で勝利を重ねた指導は高く評価され、和歌山大学を「国立大の星」と称される存在へ押し上げた。
主な実績
2017年:第66回全日本大学野球選手権大会 初出場・ベスト8
2021年:第70回大会 ベスト16
近畿学生野球連盟 1部リーグ優勝(複数回)












