
NPB女子チームに進んだ偉大な先輩方のユニフォーム‐Journal-ONE撮影
名将・石原康司監督 ― 創部から全国制覇を重ねる指導者
2014年の創部以来、神戸弘陵女子硬式野球部を率いる石原康司監督。これまでチームを春5回、夏4回、さらにはユース大会5回、全日本選手権大会1回の全国制覇へ導いた名将だ。2022年秋のユース大会から翌23年春・夏の全国大会を制して、女子高校硬式野球史上初となる「年間三冠」を達成した。今春のセンバツでは、史上初の4連覇に挑む。
現在、同部は新3年生・新2年生だけで68名の大所帯。春に新入生が加われば、部員数は100名近くに達する見込みだ。
それほど多くの選手を抱えながらも、石原監督は一人ひとりとのコミュニケーションを欠かさない。練習前に挨拶をすると、バックネット裏に積み上げられたノートに何かを書き込んでいる姿がある。
「選手に伝えたいことがあれば、ここに書くようにしています。あとは、練習中にもできるだけ多くの部員に声をかけています。」
指導理念について尋ねると、その答えは驚くほどシンプルだった。— “凡事徹底”。
「例えば全力疾走は常にするように指導しています。守備のカバーリング、声出し、全力疾走など、試合で勝つために必要な“基本的なこと”を練習から徹底しているんです。打てる、打てないという結果は二の次です。」
さらに石原監督は、成長の本質をこう語る。「より上手くなるために、基本動作は徹底的に繰り返します。あの試合でのあの失敗を、次の成功につなげるために、常に意識して取り組んでいます。」

名将・石原監督は凡事徹底こそが強豪であり続ける秘訣と話す‐Journal-ONE撮影
名将を支える精鋭コーチ陣 ― 教え子たちが支える勝利の循環
甲子園を知る教え子が再び神戸弘陵へ
石原康司監督は、史上初めて甲子園で男女の高校チームを指揮した指導者だ。その背中を見て育った教え子たちが、再びグラウンドに戻り、監督とともにチームを支えている。この“循環”こそが、神戸弘陵女子硬式野球部が勝ち続ける大きな理由のひとつだ。
石原監督の教え子である前田勝宏コーチは、神戸弘陵を初の甲子園に導いた右腕だ。高校卒業後はNPB・西武ライオンズからドラフト2位指名を受けプロ入り。非公式ながら日本人で初めて100マイル(約161km/h)を投げた投手として知られる。
その後はMLB・ニューヨーク・ヤンキースと契約して海外でもプレーした。現在もマスターズ甲子園を目指してマウンドに立ち続ける前田コーチ。野球への情熱は衰えることを知らない。
一方で、同じく教え子の七條智雄コーチは、中学生の硬式野球クラブを指導。その傍ら、恩師を支えるため神戸弘陵のコーチを務めている。こちらも日本スポーツマスターズの軟式野球・兵庫県代表として出場。今なお“現役感”溢れるレベルで野球に向き合い続けている。

石原監督の教え子、OBの前田(右)、七條(左)両コーチ‐Journal-ONE撮影
“対話で伸ばす指導”が生む強さ
そんな二人が語る選手たちの印象は、共通して“熱量の高さ”だった。
七條コーチ:「僕らが高校生だった頃より、根性がありますね。」
前田コーチ:「上手くなりたいという気持ちがとにかく強い。質問やアドバイスを積極的に求めてくるなど、本当に貪欲です。」
この言葉からも、選手とコーチの間にある信頼関係。加えて、学びを求め続ける部員たちの意識が伝わってくる。
興味深いのは、ふたりのコーチが声を張り上げて指導するタイプではないことだ。
グラウンド全体が見渡せる位置に立ち、選手の動きを静かに観察し続ける。プレーが止まった瞬間や、選手がふと質問を投げかけたとき。そういった“必要なタイミング”が訪れたときだけ、短い言葉で的確なアドバイスを送る。そのやり取りは一方通行ではなく、指導する側とされる側が対等だ。選手が自ら考え、声を返し、やり取りの中から次のステップを見つけていく。
その光景は、NPBやMLBの練習でも見かけるような“プロ的対話型スタイル”に近い。日本の伝統的な“部活動”のイメージとは大きく異なり、取材陣にとっても非常に新鮮に映った。
石原監督のもとに再び集った教え子たち。その存在が、神戸弘陵女子硬式野球部の“強さの根っこ”を静かに支え続けている。

選手と対話する前田コーチ‐Journal-ONE撮影





















