試合さながらの緊張感が走るシート打撃
シート打撃が始まると、グラウンドの空気が一変する。選手たちの表情は一段と引き締まり、まるで本番の試合が始まるかのような緊張感が漂う。
豊富な投手陣を擁する神戸弘陵女子野球部。1イニング想定の状況ごとに左右の違い、本格派や技巧派とタイプの異なる投手が次々とマウンドへ上がる。打者は練習前に指名されたメンバーがユニットを組み、順番に打席に向かっていく。
石原監督は「今の段階では、ベンチ入りプラスαの選手が打撃練習に参加しています。ですから、背番号争いに負けじと選手たちのギアが一段と上がるのです。」と語る。そして、バックネット裏からグランドに目をやると、その視線は一気に鋭さを帯びていた。
イニングや得点差、アウトカウントは捕手が状況に応じて設定する。これは和歌山大学硬式野球部の“和大メソッド”を神戸弘陵流にアレンジした実戦型の練習だ。

背番号を掛け真剣勝負のシート打撃-Journal-ONE撮影
“凡事徹底”で磨かれる実戦力と判断力
このシート打撃でも、もちろん石原監督の代名詞である“凡事徹底”が貫かれる。選手たちは全力疾走し、カバーリングや声掛けも試合そのもの。集中した姿に感心していると、ハンドマイクを持った石原監督の声が飛ぶ。
「ベンチ!声出しているだけなら応援だぞ!空いてる時間を活用しろ!」
その瞬間、およそ20人の待機選手たちが一斉に動き出した。ウェイトトレーニングを始める者、素振りをしながら戦況を見つめ攻守へ指示を送る者。誰ひとり“何もせずに待つ”ことはない。
けん制や中継プレーでは、アウトにできそうにない場面でも全力投球。送球が逸れることもあるが、それでも積極的にプレーする姿勢が際立つ。
「練習では、間に合わないタイミングでも積極的にプレーさせます。」と石原監督。こうした積み重ねが、試合中の“ふとした瞬間”で相手の隙を突く判断力につながるという。基本動作ができていて初めて成立する実戦練習。それでも石原監督は「選手も多く、時間も限られる。その中で、幾重にも身になる練習が出来るよう工夫しています」と微笑んだ。

守備でも積極果敢なプレーを見せる‐Journal-ONE撮影
日が暮れても続く“最後の勝負”― ベース一周タイムトライアル
日が暮れ始めるころ、この日の練習はクライマックスを迎える。本塁と二塁に分かれた選手たちが、ベース一周のタイムを競うタイムトライアルだ。石原監督と七條コーチがストップウォッチを手にする。すると、テンポよく選手たちがダイヤモンドを駆け抜けていく。
周回タイムが伝えられるたび、達成感に笑顔を見せる選手もいれば、悔しさを噛みしめる選手もいる。
「このタイムなら、試合任せられるぞ!」「よし!前より速くなってきた!」と、監督やコーチの声が飛ぶたび、選手たちの表情がいっそう引き締まる。
日没間際のグラウンド。最後の一秒まで響き渡る元気な掛け声と、スパイクが土を軽やかに削る音が響く。練習終盤とは思えない熱気がそのまま漂っていた。

石原監督はストップウォッチ片手に選手に声を掛ける‐Journal-ONE撮影
4連覇への期待と、始まる春の戦い ― いざ全国の舞台へ
チームに漂う“挑戦者の精神”
春の気配が色濃くなり始める3月。神戸弘陵女子野球部はいよいよ、史上初となる“選抜4連覇”へ向けた大舞台に立つ。第27回全国高等学校女子硬式野球選抜大会は、2026年3月20日に開幕。神戸弘陵高校の初戦は翌 3月21日(土)、相手は同じく強豪の成美学園 だ。
3連覇中の王者として迎えるこの春。注目と期待は過去最高の高まりを見せる。全国の女子野球ファンからも「4連覇なるか」が大きな話題となっている。
練習直後、石原監督にその“重圧”について尋ねると、穏やかな笑みを浮かべながらこう答えた。
「“連覇しなくてはいけない”ではなく、“4連覇を狙えるのはうちのチームしかない”。そう考えればワクワクしてきます。」
この言葉に象徴されるように、神戸弘陵が積み重ねてきたのは、勝利への義務感ではない。挑戦することを楽しむ“強いマインド”だ。日々の練習で磨かれる基本動作、徹底された凡事、そして、どんな状況でも前向きに思考し、判断するためのメンタルトレーニング。それらすべてが、選手の実力と自信につながり、チームの底力となっている。





















