
勝利の瞬間に喜びを爆発させたヴグサノヴィッチHCと髙田-Journal-ONE撮影
富士通レッドウェーブ|届かなかった一歩と、消えなかった矜持
試合後、富士通の選手たちはしばらくコートを離れられずにいた。1点差。あと一歩。しかしその現実を、簡単には飲み込めなかった。
日下光ヘッドコーチは、静かに試合を振り返った。「前半はシュート率が上がらず、苦しい展開だった。リズムが掴めなかった。その中で町田と宮澤が流れを掴みかけてくれたが……僅差の敗戦はHCの責任です。正直、悔しい。」
言葉は多くない。しかし、その一言一言に重みがあった。勝敗の分かれ目を、自分の判断として引き受ける。その姿勢は、富士通というチームの在り方そのものだった。

常に動き常に選手を鼓舞した日下HC-Journal-ONE撮影
宮澤夕貴が語った「我慢」と迷い
宮澤夕貴は、インタビュの途中で一度だけ天井を見上げた。涙をこぼさぬように、呼吸を整えるように。そして、目を戻してから、ゆっくりと口を開く姿が印象的だった。
「デンソーが、この3試合、本当に素晴らしかったと思います。私たちも苦しいシーンで我慢したけれど……デンソーの方が、我慢し続けたのかなという印象です」。
Wリーグ セミファイナル第3戦の追い上げ。そして、逆転まで持ち込んだ第3クォーター。その中心にいたのは間違いなく宮澤だった。だが、本人は個人の出来よりも、シリーズ全体を見つめていた。
「点差が離れても諦めずに戦えたのは良かった。でも、ショットの精度が悪かった。そこは日ごろの練習だと思います」。
さらに、Wリーグの今シーズンを通して抱えてきた葛藤にも触れた。
「正直、迷っていました。私が迷ったことで、チームにもそれが伝染してしまった。ディフェンスが私たちのチームのベースなのに、そこが揺らぐと勝てない。セミファイナルでは少し良くなったけれど、最後まで雲の中にいるような感覚だった」。
それでも最後には、前を向く言葉を絞り出した。
「打ち切るシューターが一番怖い、という言葉をSNSで見て、少し吹っ切れた。でも、負けたら意味がない。勝たせるシューターになりたいと、改めて思いました」。

最多29得点の宮澤は涙を堪えて気丈にコメント-Journal-ONE撮影
PG町田瑠唯が背負った責任と矜持
町田瑠唯もまた、ポイントガードとしての責任を背負いながら語った。
「リバウンドとルーズボールは相手が上回っていました。オープンシュートを決め切れなかったのも課題です」
新体制で迎えたWリーグ 2025₋26シーズン。
「迷いながらやっていた一年だった。みんなが心から楽しい顔でバスケットができなかった。PGとして申し訳ない気持ちが強いです」。
それでも、富士通が示したものは確かだった。最後までテンポを失わず、自分たちの思想を手放さなかったこと。敗れはしたが、その矜持が揺らぐことはなかった。

32分を超えてプレーした町田瑠唯-Journal-ONE撮影
デンソーアイリス|「我慢」を貫いた先にあったファイナル
感情を最初に爆発させたのは、デンソーのヴラディミール・ヴクサノヴィッチHCだった。試合終了のブザーと同時に、ベンチで見せた表情は、安堵と喜びが入り混じったものだった。
「デンソーにとって、運の悪いシーズンでした。本当に長く感じた。梅木や赤穂の怪我もあった。その中で、選手とスタッフの強い思いがこの勝利につながったことが、とても嬉しい」。
試合後の会見、落ち着いて言葉を重ねたヴクサノヴィッチHCの姿。つまりこの一勝が、単なる“ファイナル進出”以上の意味を持っていたことが伝わってきた。
エース、髙田真希は普段と変わらぬ落ち着いた口調で語った。「勝てて良かった。その一言です」。
第2戦、第3戦と、終盤で求められたのは「一転」の差だった。「修正ポイントはあるけれど、僅差のゲームは一つでも多く勝つことが大事。最後まで、チームとしてやるべきことをやり切りました。」と続ける。
そして、視線はすでに先を向いている。「ファイナルに上がるのは本当に大変ですし、進めるのは嬉しい。勝ち負けよりも、自分たちのバスケットにフォーカスしたい。ファイナルで2回負けている経験も、今では自信になっています」。






















