渡嘉敷来夢 が新たな挑戦の場としてアンテロープスを選んだ。その背景には、「まだ成長できる」という強い意志があった。6月1日、トヨタ自動車葵体育館で行われた入団会見。そこで語った、決断の裏側と見据える未来を余すことなく描き出す。
同時に、このコラムは、バスケットボールを楽しむ子どもたちや、これから競技に触れる若い世代に向けた“メッセージ”でもある。
渡嘉敷が歩んできた道のりは、挑戦することの価値、続けることの意味、そして“好き”という気持ちが人生を動かす力を持つことを教えてくれる。
加えて、アンテロープスの地元・愛知県では、この秋にアジア大会が開催される。渡嘉敷自身は出場しないものの、地元で国際大会が行われることに胸を躍らせ、女子バスケットボールの魅力がさらに広がることを願っている。
この秋、愛知の地で躍動する日本代表、そして新たな章を迎える渡嘉敷来夢。その姿を追いながら、バスケットボールが持つ“広がり”と“未来”を感じてほしい。

新加入の渡嘉敷来夢-トヨタ自動車アンテロープス提供
渡嘉敷来夢のキャリアと現在地
桜花学園での飛躍とENEOSでの覚醒、そしてWNBA挑戦
渡嘉敷来夢は、桜花学園高校で全国屈指の名門チームの中心として活躍。高校バスケットボール界にその名を刻んだ。圧倒的な身体能力と走力、そしてゴール下での強烈な存在感は、当時からすでに“別格”と評されていた。
高校卒業後に進んだENEOSサンフラワーズでは、その才能が一気に開花する。インサイドでの支配力に、アウトサイドからの得点。それに加えて、速攻の先頭を走る走力、献身的なディフェンス。どれを取ってもリーグトップクラスだった。
こうしてENEOSの黄金期を支え、数々の優勝に貢献した渡嘉敷。勝つことが当たり前とされる環境で、常に高い基準を求められ続けた経験は、メンタリティをより強靭なものへと変えていった。
2015年にはWNBAに挑戦。シアトル・ストームでは、ルーキーイヤーから30試合に出場し、平均8.2得点、3.3リバウンドを記録。世界最高峰の舞台で堂々と戦い、日本人ビッグの可能性を世界に示した。WNBAでの経験は、フィジカル、スピード、判断力──すべての面で彼女を進化させた。

”自分らしく”と抱負を色紙に書いた-Journal-ONE撮影
アイシンでの成熟、日本代表での復帰、そして現在地
直近の国内ではアイシンウイングスで活躍。2025-26シーズンは28試合に出場し、平均14.1得点、5.0リバウンド、3.6アシストをマーク。得点ランキング4位に入るなど、34歳となった今もなおリーグを代表するオールラウンダーとして存在感を放ち続けている。
日本代表としてのキャリアも輝かしい。アジアカップやオリンピックでの活躍はもちろん、昨年のW杯予選トーナメントではチームを牽引するパフォーマンスを披露した。
フィジカルの強い相手に対してもインサイドで主導権を握り、速攻では先頭を走り、ディフェンスでは要所でブロックやローテーションを決めるなど、攻守両面で日本を支えた。代表復帰後とは思えないキレと判断力を見せ、再び世界の舞台で戦う準備が整っていることを証明した大会でもあった。
高校時代から積み重ねてきた経験、ENEOSでの勝者のメンタリティ、WNBAで得た世界基準の強度、そしてアイシンで磨いたマルチなプレー。そこに日本代表としての国際経験が加わり、渡嘉敷来夢は今、キャリアの中でも最も成熟したフェーズにいる。
その彼女がアンテロープスという新たな舞台を選んだことは、必然と言っていい。
渡嘉敷来夢 を動かした言葉──大神雄子HCのメッセージ
アジア大会に出場する日本代表を率いる大神雄子ヘッドコーチ。渡嘉敷来夢のアンテロープス入団という晴れの日だったが、第3次強化合宿中で同席することは叶わなかった。しかし、ビデオメッセージで渡嘉敷選手についてこう語った。
「日本代表でも活躍していて、何よりも優勝経験を含めてたくさんの経験をしている。悔しい経験も含め今のアンテロープスにとって、必要な選手だ。」
「プレーもインサイドだけでなく、マルチに活躍できるところ。そして走れるところが素晴らしい。」
現役時代に共に戦った仲間として、大神HCは渡嘉敷のアンテロープス加入を心から喜んだ。
「まだ成長できるよ。」
そんな大神HCから渡嘉敷が受けたその一言。これが、長いキャリアを歩んできた渡嘉敷にとって、何よりも響く言葉だった。
「まだ上手くなりたい。進化したい。」














