「全てに日本一基準で取り組もう。そう全員で決めて日々活動しています。」そう石原監督は語る。しかし、春の選抜大会では準決勝で敗れた。その悔しさを受けて、選手たちは自ら“日本一基準の再確認”に動いたという。
「選手たちが自分たちで“もう一度、日本一基準を見直そう”と言い出したんです。その姿勢が嬉しいし、成長を感じます。」と話した石原監督。そして、グランドに再び目を向けると、選手たちの状態を見てはアドバイスを送り続けていた。

敗戦を糧に成長した選手たちを見守る石原康司監督-Journal-ONE撮影
人間形成こそが常勝軍団の礎
だが、石原監督の視線はスキルだけに向いているわけではない。
「チームが勝つためには、スキルだけ磨いてもダメです。」その言葉には、名将としての哲学が詰まっている。
神戸弘陵学園が定める日本一基準は、技術の高さだけではない。練習前後の取り組み姿勢、校内での振る舞い、寮生活での規律。野球以外の時間も含めて“人間形成”を育むことこそ、日本一を目指すチームの土台だと監督は考える。
その価値観は、11期生である3年生たちを中心に、当たり前のように実践されていた。選手権大会は3年生にとって最後の大会。全国の強豪校がこの夏にすべてをかけてくる。
女子高校野球の参加校は年々増え、今大会はついに70校となった。女子硬式野球の発展は嬉しいことだが、短期間での連戦が増えることになる。

ベンチに掲げられた心技体に亘る決意書-Journal-ONE撮影
神戸弘陵学園の選手層と夏への準備
その厳しい夏を勝ち抜くために最も必要なこと。それは「最後は3年生の底力が決める。」と断言した石原監督。その期待通り、最後の夏にかける3年生が順調な仕上がりを見せていた。
チームを纏めるキャプテンの山戸優菜。センバツではケガの影響で登板機会が限られたが、夏に向けて確かな復調を見せている。同じく主軸である3年生の島本そな。練習試合で結果を出し続け、打線の軸として存在感を増している。
加えて、連戦を勝ち抜くためには“新たな力”も不可欠だ。「1年生の活躍もあり得ますし、コンバートを含めたチーム内競争を高めています。」と石原監督。夏に向け、チーム全体の底上げを進めていると話す。
2023年、2024年の連覇を含む、夏の優勝4回。女子高校野球界を牽引してきた名将が、この夏どんなチームを完成させるのか。その答えは、7月のグラウンドで確かに形になりつつあった。

軽快にフィールディング練習をする山戸主将-Journal-ONE撮影
宿敵・佐久長聖との再戦へ——“最弱の世代”と呼ばれた3年生と、下級生の挑戦が重なる夏
神戸弘陵学園と佐久長聖——敗北の記憶と3年生の覚悟
昨夏のユース大会。先発した山戸優菜は7回を無失点に抑える力投を見せた。しかし、打線が援護できず、試合は延長タイブレークへ。最後はわずかな差で涙を呑んだ。
続く今春のセンバツ準決勝。序盤から追いつ追われつのシーソーゲーム。6回に勝ち越し点を奪い、流れを引き寄せたかに見えた神戸弘陵学園。しかし、4投手の継投も佐久長聖の追い上げに屈し、終盤に逆転を許した。
いずれも、1点差を巡る攻防で勝ち切れなかった。その悔しさを背負いながら、山戸主将は試合後にこう語った。
「私たちは“最弱の世代”と言われています。これまで一度も優勝していない。だからこそ、最後の大会では絶対に優勝したい。」
この言葉は、3年生全員の胸に深く刻まれた。ユースでもセンバツでも勝ち切れなかった終盤の1点差。その記憶こそが、彼女たちの“ここ一番の集中力”を研ぎ澄ます研磨紙となった。

最後の夏にかける3年生たち‐Journal-ONE撮影
下級生の挑戦と夏への進化——濱島葵の台頭とチームの底力
そして、その背中を追いかける下級生たちがいる。春のセンバツで大車輪の活躍を見せた2年生エース・濱島葵だ。
「センバツでは力を出し切ってくれた。」と、石原監督は濱島の働きを称える。しかし濱島自身は満足していない。
球質、制球、スタミナ——。すべてを夏仕様へと進化させるべく挑戦を続けている。3年生たちの覚悟と、2年生たちの挑戦。その両方が、チームの底力を押し上げている。














