髙田真希はこの試合、8本のフリースローを放ち、そのすべてを決めた。もっといえば、ファイナルでの4試合で放った計23本のフリースローはすべてリングをくぐった。富士通レッドウェーブとのセミファイナルを含めても、1本しか外していない。
そのことが優勝をもたらしたと断言めいたことなど言えるはずもない。しかし、髙田の落ち着き払った、頭脳的なプレーぶりは若い選手の多いデンソーに安心感と心強さ、勇気をもたらしていたように感じられた。

ファールを誘発する髙田の頭脳プレー‐永塚和志撮影
主柱不在でも揺るがなかったチーム力
髙田真希のことばかりを書いたが、無論、髙田以外の選手の貢献がなければ、勝利はなかった。とりわけ印象的だったのが、第4戦で髙田がベンチに下がっている間のチームのプレーぶりだった。
第3クォーターの序盤、髙田が3つ目のファールをしてしまい交代となる。この時点で試合はトヨタ自動車が41-38とわずかにリード。髙田がいない間に点差を開く好機だったトヨタ自動車。それに対し、デンソーはシラ ソハナ ファトージャのブロックショットや長めの2Pシュートを放つ。さらに、薮未奈海のドライブからのレイアップなどで、それを許さなかった。
ソハナや藪の躍動を引き合いに出しつつ髙田は、「1人、1人が役割をしっかり果たしたことが結果につながった」と強調した。

髙田真希不在の時間を支えたソハナ‐永塚和志撮影
涙の準優勝──トヨタ自動車が直面した現実
対して、トヨタ自動車は、4年ぶりのリーグ制覇を逃した。大会終了後、同チームの大神雄子ヘッドコーチや多くの選手が目を赤くした。
レギュラーシーズンではレギュラーシーズンをわずか5敗(23勝)。2位のデンソー(18勝10敗)以下に差をつける形で終えたが、ファイナルの最後の2試合を連敗。こうして、1年を終えた。

準優勝に終わったトヨタ自動車アンテロープス‐永塚和志撮影
レギュラーシーズン最強ディフェンスの誤算
トヨタ自動車がレギュラーシーズンで安定した強さを誇ってきた。その大きな理由の1つは、平均失点53点(結果が「0-20」となる没収試合が2試合あったこともある)のディフェンスだった。
しかしファイナルでは、第2戦でこそ41失点に封じるも、その他の試合ではデンソーのオフェンスを完全に押さえ込むことができなかった。(4試合での平均失点は63.8)
大神HCが自身の選手時代から長年ともに歩み、「心中する」と絶大な信頼でチームを任せてきたエースの山本麻衣。その彼女の爆発を、デンソーに許してもらえなかった。それもまた、トヨタ自動車にとって厳しい戦いを強いられた原因となった。
ファイナルの最初の2試合での平均得点が19.5だった山本。しかし、最後の2試合でのそれは4.5だった。そもそもデンソーの守備の前にシュートを打たせてもらえなかった。フィールドゴール試投数は最初の2試合における平均16.5本から最後の2試合では10.5本に制限された。
山本麻衣が語った大神HCへの思い
「シンさん(大神HC)がプレーヤーの時からの付き合い。自分が試合に出られない時もアシスタントコーチだったシンさんがずっと見てくれた。それがあっての2回優勝した時(2020-21、2021-22)には自分がPGをやらせてもらい、シンさんのサポートがあってPGとしての成長がありました。そこからシンさんがHCになられて、キャプテンを任せてもらった。本当にシンさんを信じていたからこそ、今回の準優勝は自分が情けない。チームを勝たせられずに本当に申し訳ないなという思いでいっぱいです」。
大神HCとの関係性について問われた山本は、こう語った。ファイナル終了から時間は数十分経っていたが、背番号「23番」の目は変わらず赤かった。相手の守りがどれだけ厳しくても、エースと呼ばれる山本。ゆえに、それでも攻めきらねばならなかったという思いがあったに違いない。
ちなみに山本は、バスケットボールで世界各地を転戦する新設大会「プロジェクトB」に参戦する。そのため、トヨタ自動車を退団する可能性がある。

試合後に涙をぬぐわれる山本-永塚和志撮影
大舞台が若いチームに突きつけた課題
もちろん、山本の出来だけがファイナルの敗因だったわけではない。トヨタ自動車は若い選手が多い。

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