「うーん、どこなんですかね……。やりすぎなんですかね、4年。言葉が響いていないのかなと思いますし、そこのコーチングへの葛藤はめちゃくちゃあります」。
数週間前まで13連勝をしていたチームがその後、崩れてしまったのはなぜなのかといった趣旨の質問をされた。その際、大野HCはこのように返した。
自身が指揮官としてやってきた期間を「やりすぎ」だと自嘲気味に述べた。しかし、これはもちろん、本気ではなかったはずだ。それは彼の顔にうっすらとした苦笑が浮かんでいたことが示していた。

昨季の中地区優勝で笑顔の大野HC‐永塚和志撮影
勝敗を超えて大野篤史HCが追い求めるもの
指揮官が抱える葛藤と求め続ける基準
ただ「葛藤」があるという部分は、大野HCの真情だったに違いない。
同氏が選手たちに求めるのは勝ち負けと同様に、応援してくれる人たちに向けて戦う姿勢を見せる。加えて、それはただがむしゃらにやるだけでなく常に最善のプレーぶりを追い求めることだ。
三遠ネオフェニックスの選手たちが示してきた献身
13連勝もしている。三遠ネオフェニックスの選手たちが、こうした大野HCの求めることを遂行できないで来たわけでは到底、ない。
2020-21に千葉ジェッツをリーグ優勝に導いた大野HC。ようやく昨シーズン、リーグ制覇を狙う位置にまでたどり着いた。「今年のチームほどチームのための献身性を持って、1シーズンを戦った選手たちを見たことがない。」と最大限の賛辞を呈した。
今シーズン中も、戦う姿や選手同士で助け合う姿勢を見せた試合で大野HCは選手たちを素直に褒めている。選手たちのプレーぶりについて辛辣に語った三河との初戦から明けて翌日も三遠は敗れた。
しかし、73-76と前日と比べて惜敗の内容に同氏は「良い試合」で「選手たちはできる限りのことをやってくれたと思います。お互いを助け合い、励まし合い、アクシデントがあった中でも40分間チームのために戦ってくれたことが素晴らしかった。」と評価した。

内外問わずハードワークで献身した吉井‐永塚和志撮影
三遠ネオフェニックスに求め続けられる高み
厳しさの先にある問いと覚悟
しかし選手たちも人間だから、気持ちや体の調子において浮き沈みがある。それに、厳しいと言われる大野HCが彼らに求めるものが非常に高いところにあるということもあるだろう。
強さだけを求めるなら、あるいはファンからの獲得だけを求めるなら、ハードルは下がるかもしれない。
だが「カルチャー」を作るために三遠に来たと大野氏は言葉を強める。そのカルチャーとは、強くあり、人々に訴えかけるプレーをする。その結果、チームを地域に根づくものにするというものだ。
昨シーズン終盤、すでにプレーオフ行きを決めていた三遠は、調子を落としていた。この時も大野氏は、勝ち負けよりも優勝を心から欲しているかどうか、選手たちに気持ちの熱さについて問うた。
そこから数週間後に行われたCSのセミファイナル。三遠は、あるいはBリーグのポストシーズン史において語り継がれる激戦となった。三遠にとってはファイナル進出の切符には指がかかっていた。が、最後にそれを手にしたのは相手の琉球ゴールデンキングスだった。

昨季、中地区優勝を果たした三遠ネオフェニックス‐永塚和志撮影
三遠ネオフェニックスがたどり着いた「カルチャー」の確信
だが、敗退後の大野HCには悔しさとどこか充足したような表情があった。選手たちが気迫を取り戻し、魂のこもったプレーを披露したからだった。
大野HCの目には彼の選手たちが「自分たちのために」優勝を目指しているようには見えなかった。見えたのは「たくさん来てくれたブースターの皆さんや自分たちを支えてくれている人たちのため。彼らに喜んでもらうため、タイトルを欲しているという姿。」だった。
そして同氏は「それが本当に自分が作りたかったカルチャー。」だと付け加えた。選手たちについて度々、厳しい言葉も辞さなかった指揮官はこのシリーズ中、彼らを「勝たせてあげたかった。」と複数回、語った。
就任から3年目のシーズンだった大野HC。これが「カルチャー」の醸成の「第一段階」だとした。文化とはかくも根を張るのに時間を要するものなのだ。

FIRE GIRLSもブースターと共に試合を盛り上げた‐Journal-ONE撮影

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